住宅ローンを抱えていると投資はできない? 調査にみる「意外な結果」

以前の記事、『「教育費が負担で資産形成できない」というのは本当か?』で、子どもの教育費負担は必ずしも資産形成への意欲をそぐことはない点をご紹介しました。今回はもう一つの大きな課題である「住宅ローン」を取り上げてみたいと思います。

投資をしている人の特徴に対する思い込み

2019年に実施したサラリーマン1万人アンケートの結果から、「投資をしている」人と「投資をしていない」人の特徴をいくつかの項目とのクロス分析でまとめてみたのが、下の表です。

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この表には、年収や資産規模とのクロス分析は入れていませんが、「年収の高い人ほど、また資産規模が大きい人ほど投資をしている人の比率が高くなっている」ことは確認しています。この点は一般的に言われていることでもあります。

そのほかにも一般的に言われていることとしては、「都市圏の人の方が投資をしている」とか、「女性の方が投資をしている人が少ない」とか、「住宅ローンを抱えていると投資ができない」といったところがあります。しかし、意外に思い込みかもしれません。

居住地や性別の結果は、背後に年収の影響がありそう

居住地別の分析では、3大都市圏(表の注記を参照)の投資をしている人の比率が平均よりも高くなっていることがわかります。ただ、3大都市圏の方の年収が高いためにこうした結果が出ていることも考えられます。

その点を考慮すると、5%ポイント程度の差はそれほど有意とは言えないかもしれません。少なくとも3大都市圏以外でも3分の1の人が投資をしていることは心強い点でしょう。

女性の投資をしている人の比率が、男性に比べて低くなっていることもわかります。ただ、これも年収の差が影響している可能性があります。

たとえば、このアンケートにおける平均年収は、男性が555万円、女性は340万円で、年収帯別の投資をしている人の比率をみると、男性の平均値が入る500-700万円層では47.3%、女性の平均値が入る300-500万円層は37.0%です。

性差が投資への姿勢に影響をもたらしているというより、年収の差の影響の方が大きいといえそうです。

住宅ローンは投資を妨げない

一方で少し驚いたのが住居の違いがあまり影響していないことです。持ち家(ローンなし)と持ち家(ローンあり)、そして賃貸を比べてみると、ほとんど変わらない数値となりました。

一般的には、「資産形成したくても住宅ローンの返済が重くてできない」といった声を聴くことがありますが、アンケート結果からはそうした様子は窺えません。

教育費の負担とも同様に住宅ローンの負担も、上手にさばいて投資を行っている人が多くいらっしゃることがわかる、勇気づけられる結果です。

投資をしている人の特徴  (単位:人、%、万円)

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注:首都圏は東京、千葉、埼玉、神奈川、中部圏は愛知、三重、岐阜、関西は大阪、兵庫、京都。
出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート、2019年

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史

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執筆者
野尻 哲史

合同会社フィンウェル研究所代表。国内外証券会社、大手外資系運用会社を経て、2019年5月に現職。資産の取り崩し、地方都市移住、雇用継続などの退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会、日本FP学会などの会員などの他、2018年9月から金融審議会市場ワーキング・グループ委員。著書に『IFAとは何者か』(一般社団法人金融財政事情研究会)『老後の資産形成をゼッタイ始める!と思える本』(扶桑社)『定年後のお金』(講談社+α新書)『脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ』(日本経済新聞出版社)など多数。