「教育費が負担で資産形成できない」というのは本当か?

子どもは負担か

子どもの教育には多くの資金がいることはよく指摘されています。実際に資産形成のためのライフプランニングでは、子どもの教育費が大きな負担になって30代、40代などではなかなか資産形成に資金が回せないという指摘もよく聞きます。

一方で、子どもがいると「将来自分の老後の世話をさせたくないから、できるだけ自分のことは自分でできるように資金を用意する」といったコメントも聞きます。これは退職後のための資産形成の動機づけになっているともいえると思います。

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本当に教育費の負担は資産形成の力を削ぐのでしょうか。

教育には資金が必要:年収と子どもの数との関係

そこで2019年4月に行ったサラリーマン1万人アンケートから、子どもの数と年収、資産、投資の有無の関係を分析してみました。

まず世帯年収と子ども数をクロス分析すると、年収が多いほど子どもを持つ世帯が増える傾向が見受けられます。

世帯年収300万円未満の家計では現在子どもがいない(将来予定していると予定していないの合計)比率は79.3%に上りました。それが300-500万円層では65.8%に、500-700万円層では47.1%、そして1,500-2,000万円層では39.7%へと大きく減っています。

もちろん若い世代は独身でまだ年収も低いために300万円未満では子供のいない世帯の比率が高くなるのは当然ですが、年収の増加が子どもの数に影響していることがうかがえます。

子どものいる世帯が資産形成をしていないわけではない

しかし、一方で家計の保有資産の分布や投資をしているか否かの比率は子どもの数にあまり影響を受けていないようにもうかがえます。

下の表でみると、世帯保有の金融資産500万円未満の層では若干子どもが少ない傾向があるものの、全体ではそれほど大きな変化はありません。また投資をしているか否かを聞いた設問とクロス分析をしても子どもの数による分布の変化もほとんどありません。

すなわち子どもがいるかいないか、また子どもの数が多いか少ないかといった家族構成は、支出が多くなることから資産形成に資金を回す余裕がなくなる懸念はあるものの、実際には子どもの数が投資をするかどうかの意思決定に影響を与えている懸念は少なく、また資産形成の結果、作り上げられている保有金融資産額も子どもの数にそれほど影響を受けていないことが見て取れる結果となりました。

この結果だけで結論は出せないものの、子どもの教育費が負担で資産形成ができないと決めつけることはできないように思われます。

子どもの数と保有資産、投資の有無 (単位:人、%)

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出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート2019

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フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ・インスティテュート 退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照