ただし、イランが支援するヒズボラが拠点を置くレバノンは、アメリカとイランの対立激化の影響を受ける地域の1つです。

また米・イラン問題とは別に、レバノン国内でゴーン氏が過去に敵対国のイスラエルを訪問したとして刑事告訴されたとの報道もあります※。つまり、ゴーン被告はレバノンでも裁判を抱えることになりました

※現地の法律ではイスラエル訪問が禁止されており、有罪の場合は最長15年の禁固刑の可能性もあると報じられている。

中東情勢が緊迫化する中、レバノンの国内情勢や国民感情が悪化した場合、ゴーン氏は自らの身を守るためにレバノンを離れざるを得ない事態が到来する可能性も否定できないでしょう。

ゴーン劇場は今後も続く?

ゴーン被告は少なくとも日本にいれば国を転々とするリスクはありませんでした。しかし政情不安なレバノンに逃亡したことで、今後の見通しはかえって不透明になったと言わざるを得ません。ちなみに9日、レバノン検察は当分の間、ゴーン被告の国外渡航を禁止したと報じられています。

中東情勢の悪化はゴーン被告も予期していなかった事態でしょう。レバノンもゴーン氏にとって安住の地となりえない可能性があります。

2018年11月の逮捕以来、まるで映画のような展開が続くゴーン劇場ですが、レバノンでエンドロールが流れることになるのでしょうか。日本脱出後のレバノンでのエピソード2に続くエピソード3があるのか、今後の展開が注目されます。

参考資料:
『現代アラブを知るための56章』(松本弘、明石書店)
『シリア・レバノンを知るための64章』(黒木 英充、明石書店)
レバノン共和国(Lebanese Republic)基礎データ(外務省)
区町村別人口と世帯(最新)ウェブサイト(千葉県)

石井 僚一