たとえば、自宅が火災に遭うケースを考えてみます。

平成30年の住宅火災数は11,019件(平成30年 [1~12月] における火災の状況 [確定値]、総務省消防庁)、同年の総住宅数は6,240.7万戸(平成30年住宅・土地統計調査、総務省統計局)なので、5,664戸あたり1件、率にして約0.02%となります。

これは、たとえるなら「空き巣に入られる確率」よりも10倍以上起こりにくいとされますが、保険の営業員に「自宅が火事になったらローンだけが残る」などと言われると、火事が起きたときの負担を想像し、実際に火事が起きる確率よりもリスクを高く見積もって保険に加入してしまいがちです。

また、保険とは話が逸れますが、「飛行機は墜落の危険性があるから乗らない」という場合にも同じようなことがいえます。

実は、「飛行機が墜落する確率」は「スズメバチに刺されて死ぬ確率」や「車で交通事故に遭う確率」よりも低いとされており、車は運転するのに飛行機は乗らないというのは、確率の観点から見ると矛盾しているともいえるでしょう。

つまり、飛行機の墜落事故はテレビやニュースで大きく報じられ、頭に焼き付いているので、墜落してしまう危険性を高く見積もってしまうというわけです。

本当に必要な保険を見極める

ここまで、「『簡単に想像できること』が起きる確率を高く見積もってしまう」という人間の特性を紹介してきました。ちなみに、このことを心理学では「利用可能性ヒューリスティック」と呼んでいます。