自筆証書遺言に関する見直し

これまで、自筆証書遺言は全文自筆で作成しなければならないため、財産を多く所有する場合、ちょっとした書き間違いにより無効になる遺言書も少なくありませんでした。また、家庭裁判所の検認が必要であることや、自宅で保管していると、そもそも相続時に発見されなかったり、改ざんされるなどのリスクがありました。

改正後は、財産目録の作成においてパソコンの使用が認められ、登記事項証明書や通帳の写しを添付することもできるようになります。また、2020年7月より法務局で保管できるようになり、その場合の自筆証書遺言は、法務局が定める様式に従って作成されたものである必要があるため、不備によって無効になるリスクが軽減されます。

さらに、法務局に保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所による検認も必要なくなるため、今後自筆証書遺言の活用も増えてくるかもしれません。

夫婦間で行った居住用不動産の贈与等の保護

婚姻期間が20年以上ある配偶者への居住用不動産の遺贈または贈与した場合については、特別受益を受けたものとして取り扱う必要がなくなりました。

以前までは、贈与等を行ったとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等がなかった場合と同じになり、被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されないものでした。

このような場合における遺贈や贈与は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、老後の生活保障の趣旨で行われる場合が多く、今回の改正は遺贈や贈与の趣旨を尊重した内容となっています。

これによって、配偶者は、生前贈与を受けた自宅を遺産分割の対象にされることがなく、住宅を確保することができるようになりました。