この調査結果では、年収が700万円を超えると幸福度の低下が見られましたが、同分野の他の研究では、このお金による幸せのラインが年収550万円であったり660万円であったりと少々ばらつきがあります。

いずれにせよ、行動経済学の研究では「年収を上げれば上げるほど幸せになれるわけではない」ということが判明していると言えそうです。

また、こうした「お金を得ても幸せになれない」という矛盾めいた事実を行動経済学では“幸福のパラドックス”と呼んでいます。

お金で幸せになれない3つの理由

ここからは行動経済学の研究から、なぜお金だけでは幸せになれないのか、その理由を見ていきましょう。

今の状況に慣れてしまう(順応仮説)

お金を稼いでも幸せには慣れない理由の一つに、順応仮説というものがあります。

順応仮説とは、「今までよりお金を稼いでも、時間がたつとその裕福さに慣れてしまう」というものです。

たとえば、社会人になって学生時代と比較して大幅に所得が増えていたとしても、しばらくすると豊かになった実感が薄れてしまったと言えば、心あたりがある人も多いのではないでしょうか。

次の目標ができる(目標水準仮説)

研究では、自分が目標としている所得水準と今の所得を比較して、その差が大きいほど幸福度が下がるということが分かっています。

人間は現状よりも高い目標を目指そうとしてしまう特性(目標水準仮説)があり、向上心があることは良いこととも言えますが、その一方でそれが幸福度を下げる原因を作っているとも言えるのです。