筆者が知る限りですが、“人手不足か、人員余剰か”という二者択一の疑問に対し、ズバリ明確な答えを出した専門家(エコノミスト等)を見聞きしたことがありません。恐らく、それほど簡単な問題ではないのでしょう。
技術革新が想定以上の人員余剰を生み出す
筆者が考えるには、1)労働者の若年層では人手不足、中高年層では余剰、2)中小企業では人手不足、大企業では余剰、3)直接部門では人手不足、間接部門では余剰、という3つのパターンが複合化しているのでしょう。
そして、これらの背景にあるのは、「少子化」と「AI化」の2つで説明でき、この2つは今後もさらに進展するでしょう。特に、AI化のスピードはより一層加速すると見られ、必要以上に余剰感が強かった間接部門だけでなく、パターン化された直接部門にもその波が押し寄せると考えられます。
その典型例が、金融機関であり、既に全てのメガバンクが事実上の中長期リストラ計画を発表しています。銀行は最早、凄まじい人員余剰であることは間違いありません。
少子高齢化による人手不足を解消するための技術革新が、やがて想定以上の人員余剰時代をもたらすのではないでしょうか。いや、もう既にその時代がスタートしています。“深刻な人手不足”という言葉が懐かしく感じる日はそう遠くないと言えるでしょう。
葛西 裕一