多様化する早期退職実施の背景

“早期退職の募集”と聞くと、深刻な業績悪化に陥った時の固定費削減(早い話がリストラ)というイメージが強いかもしれません。

確かに、リストラのケースは少なくないでしょう。しかし、実際には、事業構造変化(合併、経営統合、事業売却など)に伴う人員スリム化や、いわゆる“若返り”、”世代交代”など理由は様々です。また、将来の事業環境変化を見据えて行う“攻め”の早期退職もあります。

過去最高益を更新した企業による早期退職の募集も珍しくなくなりましたし、業績と関係なく毎期経常的に実施している企業もあります(制度として定款に明記されている企業あり)。

また、政府が推進する“人生100年時代”が、こうした早期退職の増加を助長しているとも見られます。

それは、定年延長(廃止を含む)に伴う再雇用の促進により、企業が負担すべき社会保険費用(厚生年金、健康保険など)が今後も増加し、少なからず企業収益を圧迫することが確実だからです。それならば、割増分を上乗せしても早期退職を実施した方が得策と考える企業が増えても不思議ではありません。

日本の企業は人手不足? 人員余剰?

一方で、本当に猫の手も借りたいような忙しさに悩まされている企業が、いとも簡単に早期退職を募集することに違和感が残ることも事実でしょう。

日本の産業界は、人手不足で事業展開に大きな障害も出ている一方で、早期退職の実施が年々増加しているのが実情です。果たして、日本は人手不足なのか、人員余剰なのか、一体どちらが真の姿なのでしょうか。