5. アパートと戸建て賃貸の収益から空室・管理・修繕を引くと?仮の前提で実質利回りは約6.1%と約2.5%

表面利回りは満室の家賃だけで計算した値です。空室と、管理・修繕の費用を仮に置いて差し引くと、次のようになります。

  • 【アパート8戸】家賃年約465.8万円−管理約23.3万円−修繕約62.6万円=年約379.9万円、実質利回り約6.1%
  • 【戸建て賃貸3棟】家賃年約225.1万円−管理約11.3万円−修繕約61.5万円=年約152.4万円、実質利回り約2.5%

※試算の前提:入居率9割、管理の委託費は受け取った家賃の5%、修繕費は工事費の年1%と仮に置いています。固定資産税・都市計画税、保険料、借入の返済は含みません。

修繕費を工事費の割合で置くと、工事費が近い2つはかかる額も近くなり、家賃の少ない戸建て賃貸のほうが手元に残る割合が小さくなります。逆算すると、戸建て賃貸がアパートと同じ表面利回りになるには、家賃が1棟あたり月約14.1万円必要です。

相続税評価では、空室の扱いにも気をつけたいところです。継続して貸してきた部屋が一時的に空いているだけなら、賃貸されているものとして扱える場合があります(国税庁は、退去後すぐに募集していること、空室の期間が1か月程度など一時的であることなどを判断の例に挙げています)。そうでない空室があると賃貸割合が下がり、評価の下がり方も小さくなります。

6. 【元証券会社員の視点】検証:アパートと戸建て賃貸の収益は、1戸の空室で家賃が12.5%減るか約33.3%減るか(8戸と3棟の場合)も違う

資産運用では、利回りの高さとあわせて、収入がいくつに分かれているかを見ます。銘柄を分けておけば、1つが不調でも全体への響きは小さくなるからです。

試算のアパート8戸なら、1戸が空くと満室の家賃収入は12.5%減ります。戸建て賃貸3棟なら、1棟が空くと約33.3%減ります。収入の分かれ方で見ると、アパートのほうが1戸の空室の響きは小さくなります。

一方で、アパートは1つの建物に収入がまとまっています。外壁や屋根などの大きな修繕は建物単位でかかるため、その時期には8戸分の家賃からまとめて費用を出すことになります。

また、ここでの利回りは全国平均の家賃と満室を前提にした数字です。借り手が単身か家族かなど、その土地の周りで求められる広さによって、空室の出方も家賃も変わります。

建て方の提案を受けたときは、複数の見積もり・収支計画を並べ、家賃の前提が周りの相場と合っているかを見ておくと安心です。

7. まとめ

アパートと戸建て賃貸は、木造なら1㎡あたりの工事費は約22万円と約23万円で大きくは変わらず、収益の差は主に家賃の差から生まれます。全国平均で試算すると、表面利回りはアパートが約8.3%、戸建て賃貸が約4.1%でした。貸家建付地の評価の式は、どちらの建て方でも同じです。

ただし、家賃は地域や築年数で大きく変わり、空室・修繕・税も収益を左右します。土地の相続税評価は税務署や税理士に、建築費と家賃の見通しは複数の見積もり・収支計画で確かめておくと安心です。

※本記事の試算は一定の前提に基づく概算です。実際の建築費・家賃は、土地の条件や地域、建物の仕様で変わります。詳しくは、各資料や専門家に確かめておくと安心です。

参考資料

安達 さやか