4. 世帯合算で見落としやすい注意点は4つ

条件を満たしていても、数え方や対象外の費用を知らないと、思っていた金額にならないことがあるでしょう。

申請の前に押さえておきたい点を、4つに分けて紹介します。

4.1 1.入院と外来、医科と歯科は別々に数える

厚生労働省のリーフレット(平成29年8月から平成30年7月診療分版)によると、医科と歯科、入院と外来ではレセプトが分かれる扱いです。69歳以下の人は、窓口負担が2万1000円以上のものに限って、それらを合算して請求できます。同じ病院に通っていても、入院分と外来分がそれぞれ2万1000円未満なら、足せません。

一方、1つの医療機関等での自己負担には、院外処方代を含めて数えるとされています。

4.2 2.食費や差額ベッド代などは対象外

高額療養費の対象は、保険適用の診療に対して患者が支払った自己負担額です。入院時の食費や居住費、差額ベッド代など、保険が適用されない費用は、支給の対象になりません。

窓口で払った総額が大きくても、世帯合算に使えるのは保険診療の自己負担分だけです。

4.3 3.申請が必要で、支給まで3か月程度かかる

高額療養費を受け取るには、加入している医療保険に支給申請書を提出するか、郵送します。家族の分をまとめるときも、出発点は加入先の保険者への相談です。

平成29年8月から平成30年7月診療分版のリーフレットでは、支給までは受診した月から少なくとも3か月程度かかるとされています。協会けんぽのよくあるご質問でも、診療月から3か月以上かかると案内されています。申請できる期間は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。家族の領収書は、すぐに処分せず取っておくと安心でしょう。

窓口での支払いを抑えたい場合は、マイナ保険証などを使うと、支払いを自己負担限度額までにできる場合があります。事前の手続きが必要かどうかは、加入先に確認してください。

4.4 4.健康保険組合の付加給付で上限が低いことがある

高額療養費の上限額は各医療保険で共通ですが、健康保険組合には、組合独自の付加給付として、共通の額より低い上限額を設けているところもあります。

付加給付の有無は、加入先の保険者に問い合わせると分かります。自治体の独自の医療費助成については、お住まいの市区町村に確認してください。

5. 70歳以上は何が違う?70歳未満と同じ医療保険にいる場合の計算順

70歳以上の人は、70歳未満とは別の扱いです。平成29年8月から平成30年7月診療分版のリーフレットのQ&Aによると、70歳以上の人は窓口負担の額にかかわらず、それらを合算して高額療養費を請求できるとされています。70歳未満にある「2万1000円以上」という条件は、70歳以上にはありません。協会けんぽの案内でも、70歳以上の人は自己負担額をすべて合算できるとされています。70歳以上の人には、外来だけの上限額も別に設けられています。

75歳以上の人は、後期高齢者医療制度の加入者です。同じリーフレットでは、健康保険の被保険者(例として45歳の会社員)と後期高齢者医療制度の被保険者(例として80歳の人)が同居していても、それぞれの医療費は合算の対象外と説明されています。

同じ医療保険に69歳以下の人と70〜74歳の人がいる場合の合算の手順は、次のとおりです。

  1. 70〜74歳の人の外来の自己負担額を個人ごとに合算し、外来の上限額を当てはめて差額を支給する
  2. 70〜74歳の人の入院分と、1で残った自己負担額を合計し、70歳以上の世帯の上限額を当てはめて差額を支給する
  3. 69歳以下の人の自己負担額と、2で残った自己負担額を合計し、世帯全体の上限額を当てはめて差額を支給する

70歳以上の上限額は所得区分によって異なり、2026年8月診療分から見直されました。本記事では金額を扱っていないため、70歳以上の家族がいる場合は、加入先の保険者で最新の上限額を確認してください。

6. まとめにかえて|まずは家族の保険証の加入先を確かめる

高額療養費の世帯合算は、同じ医療保険に入っている家族の自己負担を、同じ月の分に限って足せる制度です。70歳未満は、医療機関ごとの自己負担が2万1000円以上のものが対象になります。

令和8年8月から令和9年7月までの診療分で計算した夫・妻・子の例では、同じ健康保険の3人の分を合算すると、戻る額は11万1360円でした。妻だけ別の健康保険の場合は8万2360円で、加入先によって差が出ます。令和9年8月診療分以降は上限額が変わる予定のため、最新の額は厚生労働省や加入先で確認してください。

同じ月に家族が複数受診したときは、誰がどの保険に入っているかと、窓口で払った額を確認しておきましょう。合算できるかどうかや申請の方法は、加入している保険者(協会けんぽ、健康保険組合、市区町村の国民健康保険など)に問い合わせてください。

参考資料

池上 翠