顔の部分がハンコだといつも同じ顔で表情の変化がありませんが、ハンコを押す角度を変えたりちょっとした動きをつけたりして、喜怒哀楽を表現するようにしているとのことです。その方が実際に表情を描くよりも豊かな表現ができるという発見があった、とビキさんは仰っています。

各都道府県はそれぞれの土地の方言をしゃべります。気をつけてはいるものの、やはり現地の人ではないので、実際の言葉とはいくらか違った言葉になってしまうこともある……ということをビキさんは気にしておられるようです。

ビキさんお気に入りのうちの1作をご紹介します。芋煮ネタと並んでお好きな作品だそうです。


「ぎゃん」


「ぎゃーん行って、ぎゃん行って」……概ね擬音のみで説明される道順。熊本県ではこれで伝わってしまうのでしょうか。一緒にいる長崎がびっくりしています。道順を説明する熊本の手が指示するように動いていたり、電話が切ると「チン」と音がする黒電話なのがかわいいですね。

まとめ

ハンコの顔を持つシンプルな造形のキャラクターがゆるくやり取りする「ハンコ都道府県」シリーズは、絵柄にもストーリーにも嫌味や毒気がなく、気取ったところもないので気軽に安心して読める漫画です。

さらには、ゆるい雰囲気の中に通奏低音のようにやさしさが漂っていて、つらいときにも穏やかなときにも楽しめます。「ちょっとした隙間の時間にクスッと笑える話をゆるーく描けたら」とビキさんは今後の希望を述べておられますが、その通りの漫画と言えましょう。

また、ビキさんは全国津々浦々を旅して見聞したものをハンコで紹介したいともおっしゃっています。これからもゆるくて楽しい「ハンコ都道府県」シリーズが読めそうです。あなたの「おらが町」も登場するかも?

衛澤 創