もうはまだなり、まだはもうなり

これは株の売買の好機・タイミングを表す代表的な諺です。その名の通り、「もう底(天井)だと思えるようなときは、まだ下値(上値)があるのではないかと一応考えてみなさい。反対に、まだ下がる(上がる)のではないかと思うときは、もうこの辺りが底(天井)かもしれないと考えてみてはどうか」という内容です。

“なるほど”と感心させられる格言です。ただ、この諺に従うと、絶好の買い場・売り場を逃すことになり兼ねません。真の意味は、売買する前にもう一度よく考えてみた方がいいということなのです。

買いにくい相場は高く、買いやすい相場は安い

これは、「買いづらい相場に限って(その後)高くなり、買いやすい相場に限って(その後)安くなる」という意味です。“買いづらい相場”とは、たとえば、株価指標などに割高感がある、株価が天井圏にある、相場が弱気一色になっているなどの状況と言えます。

こういう時、投資家はなかなか手を出し難いものですが、そういう時に限って、その後に株価が上昇するという皮肉めいたことが多々起こります。また、“買いやすい相場”とは、この逆の場合で、その後に株価が下落することが多いということになります。

二度に買うべし 二度に売るべし

利益確定売りをしようか悩んでいる人、これから新たに買い向かおうとしている人には、ぜひ心してほしい格言です。この意味を一言で表すなら「買い急ぐな、売り急ぐな」ということです。一気に売買して、その後に株価がさらに上昇・下落となったとき“あー、早まった”と後悔しないためです。

また、仮に売買に失敗したとしても、二度に分けていれば、被害は半分で済むという意味も含まれます。投資家に必要なことは、周囲に流されずに冷静に行動するということではないでしょうか。

万人が万人ながら強気なら、たわけになりて米を売るべし

全ての人が何らかの理由をつけて強気になった時、そこが天井を形成することが多いため、人に何を言われようが利食い売りをするべきだという意味です。

冷静になって周囲の声に耳を傾けてみましょう。2カ月間で+15%上昇した現在の株式相場、皆が皆、強気になっていませんか? 逆に、皆が皆、(株価がピークだと)慎重になっていませんか? なお、これと同義の格言として、「野も山もみな一面に弱気なら、阿呆になりて米を買うべし」があります。

相場は明日もある

株式相場はこれからも続きます。今日1日で終わるわけではありません。相場は生き物ですから、買いにしても売りにしても上手くいかないことは珍しくありません。

そのような時はいったん立ち止まって、相場の大局を見極めることが必要です。言い換えれば、ズルズルとやり続けても上手くいかないことが多いという意味です。同じような格言で「休むも相場」があります。いずれにせよ、大切な投資資金をなくさないためには、ムキにならず、ムリをしないことが重要でしょう。

おわりに

いずれの格言にも当てはまることは、“急がずに冷静に”ということです。株式投資である以上、損失を出すことはよくあることです。ただし、それが日常生活を脅かしたりするようなことがあってはいけません。現在のような上昇相場だからこそ、今一度、相場の動きと自らの懐を見つめ直すことが求められます。

葛西 裕一