4. 名義悪用を防ぐ「本人申告」、知っておきたい注意点が3つあります

流出した免許証画像を使って「勝手にクレジットカードを作られたり、借金をされたりするのではないか」という不安への備えとして挙げられるのが、信用情報機関への「本人申告」です。ただし、この制度には知っておきたい注意点が3つあります。

4.1 注意点1:銀行の預金口座開設時には照会されない

1つ目は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の本人申告は、銀行の預金口座を開設するときには照会されないという点です。

全国銀行協会が設置・運営するKSCのウェブページ「本人申告」によると、本人申告とは、運転免許証などの本人確認書類の紛失・盗難・漏えいなどで名義を不正に使われるおそれがある場合に、本人の申告に基づいて「本人申告情報」を登録し、会員金融機関からの照会に回答する仕組みを指します。

そのうえで、センターへの照会は会員の与信取引上の判断(ローンやクレジットカードの審査など)に限られるため、預金口座の開設時には行われないと明記されているのです。

つまり、本人申告をしても、流出情報を使った預金口座の不正開設そのものを止めることはできません。本人申告は借入やカード契約の審査時に慎重な判断を促す仕組みであり、口座開設の不正防止策ではない点を理解しておく必要があります。

4.2 注意点2:悪用を防ぐ効果は保証されていない

2つ目は、本人申告をしても、なりすましによる悪用を完全に防げるとは限らないという点です。

KSCの案内では、本人申告情報は会員の与信判断を拘束するものではなく、センターが悪用の防止効果を保証するというものではないとされています。金融機関が申告内容を参考に通常より慎重な本人確認を行うことは期待できますが、融資やカード発行の可否を最終的に判断するのは各金融機関です。

本人申告は悪用のハードルを上げるための備えであり、不正な契約を自動的に遮断するものではないと考えておきましょう。

4.3 注意点3:郵送は2403円。対象は本人確認書類に限られる

3つ目として、手続きに費用がかかり、申告できる対象も限られている点が挙げられます。

KSCへ郵送で本人申告をする場合は、コンビニエンスストアで「本人開示・申告手続利用券」(2403円)を購入して同封する仕組みです。マイナンバーカードを使ったインターネットでの申告もできます。

申告の対象は運転免許証などの本人確認書類で、キャッシュカードやクレジットカード、民間の会員証などの紛失・盗難・漏えいは登録の対象外です。なお、KSCの「よくあるご質問」では、本人確認書類の情報(画像データを含む)が漏えいした可能性がある場合も本人申告ができると案内されています。

信用情報機関はKSCだけではありません。主にクレジットカード会社などが加盟する株式会社シー・アイ・シー(CIC)、主に消費者金融などが加盟する株式会社日本信用情報機構(JICC)もあり、幅広く備えるには各機関へ個別に申告する必要があります。

手続きの方法や費用の有無は機関ごとに異なるため、事前に各機関の案内を確認しておきましょう。また、信用情報機関に問い合わせても、自分の情報がどこから漏れたのかを調べてもらえるわけではありません。

全国銀行個人信用情報センター(KSC)「本人申告」の3つの注意点3/4

全国銀行個人信用情報センター(KSC)「本人申告」の3つの注意点

出所:全国銀行個人信用情報センター「本人申告」、同「郵送による申告手続」をもとにLIMO編集部作成

5. 2027年4月から「免許証の画像」での本人確認は原則廃止へ

今回の流出で将来の悪用に不安を感じている方にとって、本人確認の制度がどう変わるのかを知っておくことは判断材料の一つになるでしょう。オンラインでの本人確認は、いま大きな転換期を迎えています。

5.1 犯収法施行規則の改正。画像送信からICチップ読み取りへ

2025年6月24日に公布された改正犯罪収益移転防止法施行規則には、なりすましなどのリスクが高い本人確認方法の廃止が盛り込まれました。改正規則は2027年4月1日に施行される予定です。

非対面の本人確認で広く使われてきた、運転免許証などの画像と本人の顔の画像をスマートフォンで撮影して送信する方法(いわゆるホ方式)や、本人確認書類の写しを郵送する方法は、原則として廃止されます。今後は、マイナンバーカードや運転免許証などのICチップの情報を読み取る方法や、公的個人認証サービス(JPKI)を使う方法が中心となる見込みです。

券面の画像を送るだけの方法は、2027年4月以降、非対面の本人確認手段として原則認められなくなります。

非対面の本人確認、2027年4月から何が変わる?4/4

非対面の本人確認、2027年4月から何が変わる?

出所:警察庁 犯罪収益移転防止対策室(JAFIC)「法令改正・意見募集」をもとにLIMO編集部作成

5.2 金融庁が前倒しを要請。悪用の余地が狭まる時間軸

金融業界では、2027年4月を待たずに画像による本人確認をやめるよう求められています。

報道によると、金融庁は2025年7月16日付の文書で、銀行業界に対し、運転免許証の画像による非対面の本人確認を「可及的速やか」に廃止するよう求めました。

さらに2026年10月9日には、不正アクセスによる情報漏えいが相次いでいることを受け、銀行や証券会社、保険会社、暗号資産交換業者などに注意喚起を行っています。

施行日を待たずにICチップ読み取りへ移行することや、移行までの間は画像に不自然な点がないか確認を徹底することを求めた内容です。

タイムズカーの「ご質問と回答」でも、画像を使った非対面の本人確認では、本人の容貌画像との照合など追加の確認手続きが用いられると説明されています。ただし同社は、なりすましなどの不正行為の可能性を完全に否定するものではないとも記載しており、注意は欠かせません。

こうした流れを踏まえると、画像データだけで新たな口座やカードを作られてしまうリスクは、今後狭まっていく見通しです。とはいえ、移行期にある現在は油断せず、自分でできる備えを続けることが大切でしょう。

6. まとめにかえて|慌てず4つの手順で確認。補償を装う詐欺に警戒

運転免許証の画像流出という予期せぬ事態に直面したとき、取るべき現実的な手順を整理しておきましょう。

  1. 公式の個別案内を確認する:タイムズカーからのメールや公式サイトの続報を確認し、自分のどの情報が漏えいの対象になったかを把握する。退会済みで案内が届かない場合は、同社の専用フォームから問い合わせる。
  2. 再交付の可否は住所地の窓口へ確認する:再交付を希望する場合は、特例対応の有無や受付時間、必要書類、手数料を、住所地の運転免許センター等へ事前に問い合わせる。
  3. 不安があれば信用情報機関の手続きを活用する:不正なローンやカード契約が心配な場合は、信用情報機関(KSC、CIC、JICC)への本人申告や、自分の信用情報の開示請求を検討する。
  4. 補償や返金を装う不審な連絡に応じない:企業や警察、弁護士などを名乗り、「流出の補償金を振り込む」「再交付手数料を返金する」などと持ちかける連絡には十分に警戒する。

情報流出のニュースに触れると強い焦りを感じがちですが、根拠のない情報に惑わされて余計な出費や二次被害を招いては本末転倒です。まずは公的機関の案内と企業の公式発表に沿って、一つひとつ落ち着いて確認を進めてみてください。

監修者
熊谷 良子

一度流出してしまったデジタル画像を完全に回収することは、残念ながら難しいのが現実です。

だからこそ、「画像を取り戻すこと」にとらわれて焦るのではなく、「第三者がその画像を使ってできることの入口を狭めること」へ意識を切り替えてみてはいかがでしょうか。

2027年4月の改正規則の施行や金融庁の前倒し要請に見られるように、画像送信による本人確認からICチップの読み取りへ移る流れは着実に進んでいます。

過度に悲観して、不安につけ込む有料サービスなどに飛びつく必要はありません。公式の案内を確かめ、必要に応じて信用情報を点検し、不審な連絡には応じない。今日から自分でできる備えを一つずつ積み重ねていきましょう。

参考資料

池上 翠