ニュースや新聞で「大手企業で不正アクセスが発生し、顧客の個人情報が流出した可能性がある」といった報道を目にする機会が増えています。

インターネット通販やキャッシュレス決済がシニア世代にも浸透する中、「もしかしたら自分の預貯金口座やクレジットカードが悪用されてしまうのではないか」と不安を覚える60歳以上の方は多いのではないでしょうか。

個人情報の漏えいでは、流出した情報の種類によっては、長年かけて築いてきた預貯金や退職金、老後資金といった「金融資産の喪失」につながるおそれがあります。

また、焦って行動を起こすと、情報漏えいに便乗した偽の連絡に騙されて資産をだまし取られるなど、かえって重大な二次被害を招く危険性が高まります。

大切な資産を守るためには、どのような順番で事実を確かめ、どの情報から優先して守るべきかという「正しい資産保全の初動手順」を知っておくことが欠かせません。

本記事では、個人情報保護委員会や国民生活センターなどの公的機関が公表している指針や統計データをもとに、情報漏えいの連絡を受けたり報道で知ったりした際にシニアが大切な資産を守るために最初に取るべき行動を分かりやすく整理していきます。

1. 企業から「漏えいの可能性」の連絡が来たら、最初に何をすればよいですか?

ある日突然、利用しているショッピングサイトや金融サービス会社から「お客様の個人情報が流出した恐れがあります」というメールやSMSが届いたら、どのように対応すべきでしょうか。最初の一歩でつまずかないための基本的な行動原則を確認しておきましょう。

1.1 届いたメールやSMSのリンクは開かない。まずは正規ルートから確認する

最も重要な最初の行動は、「届いたメッセージに記載されているURL(リンク)を決してタップしない」ことです。

情報漏えいの公表や報道の後には、不安につけ込んで企業を名乗り、偽の画面へ誘導しようとする不審なメールやメッセージが送信される手口が確認されています。

本物の企業からの大切なお知らせに見えても、実は個人情報や金融資産のパスワードをさらに盗み取ろうとする巧妙な罠であるケースが珍しくありません。

国民生活センターでも、不審な案内に対しては、メールやメッセージに記載されたリンクからアクセスするのではなく、事前にブックマーク(お気に入り登録)している正規のウェブサイトや、公式スマートフォンアプリからアクセスして事実関係を確認するよう助言しています。

もし心当たりのあるサービスから重大な連絡が届いた場合は、メッセージ内のリンクから進むことを避け、普段から利用している公式アプリを開くか、検索サイトなどで自ら公式サイトを検索し、企業のお知らせ一覧ページなどで本当に情報漏えい事案が発生しているのかを照合する手順が安全です。

1.2 企業からの通知にはどんな内容が含まれる?法律上の決まりを知る

企業が顧客に対して情報漏えいに関する個別の連絡を行う背景には、法律上の明確な義務が存在します。

個人情報保護法が改正され、2022年(令和4年)4月1日からは、個人データの漏えい等が発生して個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じた場合、事業者は個人情報保護委員会への報告とともに、本人へその旨を通知することが法的に義務付けられました。

個人情報保護委員会の公表資料によると、本人への通知が義務化されているのは主に以下の4つの事態です。

  • 1) 要配慮個人情報(病歴や信条など)が含まれる個人データの漏えい等が発生した場合
  • 2) 不正利用により財産的被害が生じるおそれがある個人データ(クレジットカード番号等)が漏えいした事態
  • 3) 不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等(サイバー攻撃や内部不正等)が発生したケース
  • 4) 個人データに係る本人の数が1000人を超える漏えい等が生じたとき

これらの事態に該当する場合、企業は本人に対して、事態の概要、漏えい等が発生した個人データの項目、原因、二次被害防止のための参考事項などを通知しなければなりません。

特に、クレジットカード番号のように不正に利用されると金銭的な損害が生じるおそれのある情報が漏れた事態は、本人への通知の対象となります。なお、これらの類型に当たらない漏えいでも、企業が自主的に案内を行う場合があります。通知には事態の概要や漏れた個人データの項目などが記載されますので、文面を落ち着いて確認し、「どの種類の情報が対象となっているのか」を冷静に見極めることが、次の資産防衛の分かれ道となります。

【図版1】情報漏えいの連絡を受けたときの初動フローチャート1/5

【図版1】情報漏えいの連絡を受けたときの初動フローチャート

出所:国民生活センター「そのメール、フィッシング詐欺!」、個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人への通知の義務化について」をもとにLIMO編集部作成

熊谷 良子

情報漏えいのニュースが出ると、「自分には通知メールが届いていないから大丈夫」と安心してしまいがちですが、必ずしもそうとは言い切れません。

企業側が調査を進めている最中で通知が後から届くケースや、報道が先行して個別案内までに時間がかかる事例も多いためです。

慌てて不要な操作をする必要はありませんが、利用しているサービスの名前が報道に出ていないかアンテナを張りつつ、普段から公式サイトの案内を直接見に行く習慣をつけておくことが防犯の第一歩となります。