3. 生活保護の開始月の保護費は手持ち金の分だけ少なくなる

最低生活費の5割を超えた手持ち金は、開始月の収入として認定されます。ここでは、その分が最初の月の保護費にどう反映されるのかを、厚生労働省の資料の計算式で確かめます。

3.1 開始月の保護費

厚生労働省が2004年に審議会へ出した資料では、開始月の扶助額について、最低生活費から「手持ち金の全額から最低生活費の5割に相当する額を引いた分」を差し引いて計算する例を示しています。

  • 最低生活費-(手持ち金-最低生活費の5割)

5割という目安は、消費支出に占める家計上の繰越金の割合がおおむね5割程度だったことによるものです。

65歳の単身・1級地-1で、家賃が住宅扶助の上限以上の人が、手持ち金10万円で保護を受け始めたとします。10万円から5割の6万5290円を引いた3万4710円が収入として認定され、開始月の保護費は13万580円から3万4710円を引いた9万5870円になります。

手持ち金10万円で生活保護が始まった場合の開始月の保護費(65歳の単身・1級地-1)2/2

最低生活費13万580円、手持ち金10万円のうち5割の6万5290円を超える3万4710円が収入として認定され、開始月の保護費が9万5870円になる計算の流れ

出所:厚生労働省「保護開始時の手持金及び保険の取扱い」を参考にLIMO編集部作成

3.2 月の途中で保護が始まる場合は

課長通知は、月の途中で保護が始まる場合の開始月の決め方を、別の項目で定めています。上の試算は、月の初めから保護が始まった場合の考え方です。

実際の保護費は、世帯の人数・年齢・家賃・加算などで変わります。申請するときに持っている現金と通帳を正確に伝え、開始月の保護費がいくらになるかを福祉事務所で確かめてください。

4. 保護費をやりくりして貯めたお金は目的によって持ち続けられる

では、保護が始まったあと、毎月の保護費を節約して貯めたお金はどう扱われるのでしょうか。厚生労働省の通知と最高裁判所の判決に考え方が示されています。

4.1 使い道が生活保護の趣旨に反しなければ保有が認められる

課長通知は、保護費のやりくりで生じた預貯金について、保護を始めるときに持っていたものではないこと、収入の未申告など不正な手段で蓄えたものではないことをまず確かめるとしています。

そのうえで、使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合は、保有を認めて差しつかえないとしています。

反対に、保有が認められない物品を買うためなど、目的が趣旨に反すると認められる場合は、活用すべき資産とみなされます。その場合は、状況に応じて収入として認定されたり、保護が停止・廃止されたりすることがあります。

4.2 保護費を一定期間内に使い切ることまでは求めていない

最高裁判所は平成16年3月16日の判決で、生活保護法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護費などを原資として行った貯蓄は、活用すべき資産に当たらないと判断しました。

事案は、子の高校の修学費用に充てる目的で加入した、保険料が月3000円で満期保険金が50万円の学資保険でした。

判決は「同法も,保護金品等を一定の期間内に使い切ることまでは要求していない」と述べ、満期保険金を収入として認定して保護費を減らした処分を違法としています。

5. 生活保護の申請時に預貯金を伝えないと、あとで返還や徴収を求められる

申請のときに持っている預貯金を正しく伝えなかった場合、あとから保護費を返すことになります。生活保護法は、返還と徴収の2つの仕組みを定めています。

5.1 資力があったのに保護を受けた場合

生活保護法63条は、資力があるにもかかわらず保護を受けたときは、福祉事務所が定める額を返還しなければならないとしています。厚生労働省の課長通知は、資力があることを確認した場合は、資力が生じた時期にさかのぼって返還を求めるとしています。

5.2 不正な手段で保護を受けた場合

生活保護法78条は、不実の申請など不正な手段で保護を受けた人から、その費用の全部または一部を徴収するほか、徴収する額に100分の40を掛けた額以下の金額を徴収できると定めています。

杉並区が申請のときに世帯全員分の通帳と現金の合計額を求めているように、手持ちのお金は申請の段階で正確に伝えることが前提です。判断に迷う預貯金や保険があるときは、申請前の相談で福祉事務所に尋ねておくと安心です。

6. まとめにかえて

生活保護では預貯金を生活費に充てるのが原則で、保護が必要かどうかの判定では手持ち金は全額が収入として扱われます。

そのうえで、保護が始まる月は最低生活費の5割までの手持ち金が収入として認定されず、65歳の単身・1級地-1なら6万5290円が目安です。

受給中に保護費をやりくりして貯めたお金は、目的が生活保護の趣旨に反しなければ持ち続けられます。生活保護の取り扱いは世帯の事情で変わるため、申請を考えたら、住んでいる地域の福祉事務所の相談窓口で確かめてから手続きを進めてください。

参考資料

太田 彩子