生活保護は、受け始めたあとも収入や暮らしの変化に合わせて見直される制度です。保護が終わる場面も、その見直しの一つにあたります。
厚生労働省の「被保護者調査(令和6年度確定値)」には、保護が廃止された世帯を理由別に数えた表があります。令和6年度の1年間に廃止された世帯は、18万9295世帯でした。
この記事では、保護が終わる理由の内訳と、働いて保護を抜けた世帯に支給される就労自立給付金の額を確認していきます。
1. 生活保護の保護が廃止された理由、令和6年度は「死亡」が49.5%
まず、生活保護の保護が廃止された世帯の全体像を見ておきます。使うのは被保護者調査の月次調査のうち、年度の確定値です。
1.1 廃止された世帯は1年間で18万9295世帯
令和6年度に保護が廃止された世帯は、年度累計で18万9295世帯でした。1か月平均では1万5775世帯です。
この集計には、転出によって廃止された世帯と、一時的な性格の扶助だけを受けていた世帯は入っていません。表の注にそう明記されています。
1.2 2番目に多いのは「働きによる収入の増加・取得」の15.1%
理由別に見ると、最も多いのは死亡の9万3642世帯で、全体の49.5%を占めました。およそ2世帯に1世帯です。
図に載せた上位10の理由の世帯数は、次のとおりです。
- 死亡:9万3642世帯(49.5%)
- 働きによる収入の増加・取得:2万8598世帯(15.1%)
- その他:2万6421世帯(14.0%)
- 失そう:6916世帯(3.7%)
- 社会保障給付金の増加:5763世帯(3.0%)
- 左記以外の収入の増:5632世帯(3.0%)
- 親類・縁者等の引取り:5470世帯(2.9%)
- 施設入所:4083世帯(2.2%)
- 累積金の増加:3996世帯(2.1%)
- 逮捕・勾留等:3014世帯(1.6%)
このほか、指導指示違反が1678世帯、医療費の他法負担が1321世帯、仕送りの増加が915世帯、傷病治癒が722世帯、世帯構成の変更が678世帯、働き手の転入が446世帯でした。
収入が増えて保護が終わった世帯は、働きによる収入、社会保障給付金、仕送り、それ以外の収入を合わせると4万908世帯になります。
2. 生活保護が廃止される理由は世帯類型と世帯主の年齢で入れ替わる
同じ調査は、廃止の理由を世帯類型別と世帯主の年齢階級別にも分けています。全体の順位が、どの世帯にも当てはまるわけではありません。
2.1 高齢者世帯は71.8%が死亡による廃止
高齢者世帯で令和6年度に保護が廃止されたのは11万889世帯で、そのうち死亡が7万9659世帯でした。割合にすると71.8%です。
働きによる収入の増加・取得は3219世帯、2.9%にとどまります。
2.2 母子世帯とその他の世帯は働きによる収入が4割を超える
母子世帯では、廃止された6513世帯のうち2702世帯が働きによる収入の増加・取得でした。割合は41.5%です。
その他の世帯でも、3万7591世帯のうち1万5910世帯、42.3%が同じ理由でした。傷病者世帯は20.0%、障害者世帯は19.5%です。
2.3 世帯主が65〜69歳の世帯は社会保障給付金の増加が10.7%
世帯主の年齢で分けると、65〜69歳の世帯では廃止された1万6328世帯のうち1742世帯が社会保障給付金の増加による廃止でした。割合は10.7%で、ほかの年齢階級より高くなっています。
70歳以上の世帯では、9万8778世帯のうち7万3204世帯、74.1%が死亡による廃止です。なお、表は社会保障給付金の種類までは分けていません。
3. 働いて生活保護を抜けた世帯には就労自立給付金が支給される
働きによる収入で保護が終わる世帯には、生活保護法にもとづく就労自立給付金という仕組みがあります。支給される額を見ていきましょう。
3.1 生活保護法第55条の4に定められた給付金
生活保護法第55条の4は、安定した職業に就いたことなどにより保護を必要としなくなったと認めた人に、就労自立給付金を支給すると定めています。
厚生労働省社会・援護局長通知は、この給付金がより効果的な就労インセンティブとなるよう算定方法を見直したと説明しています。見直し後の方法は令和6年10月1日から適用されています。
3.2 支給額の上限は単身世帯10万円、複数世帯15万円
現在の算定方法は、就労収入額に10%を掛けた額と基礎額の合計です。この合計と上限額のいずれか低い額が支給額になります。
就労自立給付金は就労収入の10%と基礎額を合計し、上限と下限の範囲で決まる2/2
出所:厚生労働省「生活保護法施行規則第十八条の五の規定に基づき厚生労働大臣が定める算定方法の一部を改正する件について(通知)」を参考にLIMO編集部作成
- 単身世帯:上限額10万円、下限額2万円
- 複数世帯:上限額15万円、下限額3万円
就労収入額は、保護を必要としなくなったと認められた日が属する月から起算して前6か月間の、各月の就労収入です。保護の実施機関が認定した収入から、勤労に伴う必要経費を除いた額を使います。
基礎額は5万円(単身世帯は4万円)が出発点です。そこから、最初に就労収入があった月の翌月から廃止月までの月数に7500円を掛けた額を差し引きます。
3.3 就労収入が月10万円なら10%分は6か月で6万円
たとえば必要経費を除いた就労収入が毎月10万円で、6か月続いた場合を考えます。6か月の合計は60万円で、その10%は6万円です。
ここに基礎額が加わります。基礎額は、働き始めてから保護が終わるまでの月数が短いほど大きく残る仕組みです。そのうえで、単身世帯なら合計が10万円を超えても支給額は10万円です。
なお、保護を必要としなくなったと認められた日が属する月が令和6年9月以前の場合は、見直し前の算定方法が使われます。
被保護者調査の廃止理由は、表の注に「転出」と「一時的な扶助だけの世帯」を除くと書かれています。
数字を読むときは、表題だけでなく注まで目を通しておくと取り違えを防げます。
