生活保護を受けながら出産を迎えるとき、かかる費用をどうするかは小さくない心配ごとです。
生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)は令和8年6月11日に改正され、令和8年10月1日から適用されます。出産にかかる費用は、8種類ある扶助のうち出産扶助から支給されます。
この記事では、保護の基準が定める出産扶助の額と、生活扶助に上乗せされる妊産婦加算の額を確認していきます。
1. 生活保護を受けている世帯は164万世帯を超え、半数以上が高齢者世帯
出産扶助の話に入る前に、生活保護を受けている世帯がどのような構成になっているかを見ておきましょう。
1.1 被保護実世帯数は164万2778世帯だった
厚生労働省が令和8年9月2日に公表した「被保護者調査(令和8年6月分概数)」によると、令和8年6月の被保護実世帯数は164万2778世帯でした。
前年同月と比べると2424世帯の減少で、率にすると0.1%の減少です。
1.2 世帯類型別では高齢者世帯が55.3%を占めた
世帯類型別の世帯数は、保護停止中を含まない163万4108世帯が総数です。その内訳は次のとおりでした。
- 高齢者世帯:90万3532世帯(55.3%)
- うち単身世帯:84万4730世帯(51.7%)
- うち2人以上の世帯:5万8802世帯(3.6%)
- 高齢者世帯を除く世帯:73万576世帯(44.7%)
- うち母子世帯:5万4953世帯(3.4%)
- うち障害者・傷病者世帯計:41万6933世帯(25.5%)
- うちその他の世帯:25万8690世帯(15.8%)
高齢者世帯が半数を超える一方で、子育て期にあたる母子世帯は3.4%です。出産を迎える世帯は多数派ではありませんが、そのぶん制度が知られにくい面もあります。
2. 生活保護の保護費は最低生活費と収入の差額で、扶助は8種類ある
出産扶助は単独の制度ではなく、生活保護の扶助のひとつです。まず保護費の決まり方から確認します。
2.1 保護費は最低生活費から収入を差し引いた差額が支給される
生活保護では、国が定める基準にもとづいて世帯ごとの最低生活費を計算します。
そのうえで、年金や就労による収入がある場合は、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
2.2 扶助は生活扶助から葬祭扶助までの8種類に分かれる
保護の基準は、扶助の種類ごとに別表を設けています。別表第1から別表第8までが、それぞれ次の扶助に対応します。
- 生活扶助(別表第1)
- 教育扶助(別表第2)
- 住宅扶助(別表第3)
- 医療扶助(別表第4)
- 介護扶助(別表第5)
- 出産扶助(別表第6)
- 生業扶助(別表第7)
- 葬祭扶助(別表第8)
このうち出産にかかる費用を受け持つのが、別表第6の出産扶助です。
3. 生活保護の出産扶助の基準額は「33万6000円以内」
ここからが本題です。出産扶助として支給される額と、基準額に加算されるものを見ていきましょう。
3.1 基準額は出産に要する費用として33万6000円以内
別表第6が定める出産扶助の基準額は、出産に要する費用として33万6000円以内です。
「以内」とあるとおり、実際にかかった費用がこの額を下回れば、支給されるのはかかった額になります。
3.2 施設で分べんする場合と衛生材料費には別枠がある
基準額とは別に、次の2つが加算されます。
- 病院、助産所等施設において分べんする場合:入院(8日以内の実入院日数)に要する必要最少限度の額を基準額に加算
- 衛生材料費を必要とする場合:6300円の範囲内の額を基準額に加算
入院の加算は日数に上限があり、8日以内の実入院日数が対象です。
4. 妊産婦加算は妊婦と産婦で額が変わる
出産扶助が出産そのものの費用を受け持つのに対して、妊娠中と産後の暮らしを支えるのが生活扶助の妊産婦加算です。
4.1 1級地および2級地では妊娠6か月以上で月1万4120円になる
妊産婦加算の月額は次のとおりです。
【1級地および2級地】
- 妊婦(妊娠6か月未満):9350円
- 妊婦(妊娠6か月以上):1万4120円
- 産婦:8690円
【3級地】
- 妊婦(妊娠6か月未満):7950円
- 妊婦(妊娠6か月以上):1万2010円
- 産婦:7390円
4.2 加算が始まる月は妊婦と産婦で違う
妊婦についての加算は、妊娠の事実を確認した日の属する月の翌月から行われます。
産婦についての加算は、出産の日の属する月から行われ、期間は6箇月を限度として別に定められています。
出産扶助も妊産婦加算も、額は国の告示で決まっています。基準額と加算を分けて読むと、どこまでが定額でどこからが実費なのかが見えてきます。
