生活保護を受けている世帯で育った子どもが大学などへ進むとき、入学のタイミングでまとまったお金が要ります。

生活保護法には、そのための進学準備給付金という仕組みがあります。厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による進学準備給付金の支給について」が支給の要件と額を定めています。

この記事では、来年3月の高校卒業を控えた世帯に向けて、進学準備給付金の額と対象になる人、申請から支給までの流れを確認していきます。

1. 生活保護世帯163万世帯のうち、子どものいる世帯はごく一部

進学準備給付金は子どものいる世帯が使う制度です。まず生活保護を受けている世帯の構成を見ておきましょう。

1.1 世帯類型別の総数は163万4108世帯

厚生労働省が令和8年9月2日に公表した「被保護者調査(令和8年6月分概数)」によると、令和8年6月の世帯類型別の世帯数は次のとおりでした。

  • 高齢者世帯:90万3532世帯(55.3%)
  • うち単身世帯:84万4730世帯(51.7%)
  • うち2人以上の世帯:5万8802世帯(3.6%)
  • 高齢者世帯を除く世帯:73万576世帯(44.7%)
  • うち母子世帯:5万4953世帯(3.4%)
  • うち障害者・傷病者世帯計:41万6933世帯(25.5%)
  • うちその他の世帯:25万8690世帯(15.8%)

1.2 子どものいる世帯は多数派ではない

母子世帯は5万4953世帯で、総数の3.4%です。前年同月と比べると3761世帯の減少で、率にすると6.4%の減少でした。

子どものいる世帯が少数である分、進学にまつわる制度は届きにくくなりがちです。

2. 生活保護の進学準備給付金は保護費とは別に支給される

進学準備給付金は、生活保護の8種類の扶助とは位置づけが違います。まずその性格から確認します。

2.1 新生活の立ち上げ費用として創設された

通知は、生活保護世帯の子どもの大学等進学率が全世帯の進学率と比べて低い状況にあることを挙げています。

そのうえで、貧困の連鎖を断ち切り自立を助長するために、進学の際の新生活立ち上げの費用として支給する制度として創設されたと説明しています。

2.2 保護金品とは異なるものとされている

通知は、進学準備給付金について生活保護法第6条第3項の保護金品とは異なるものであるとしています。

あわせて、租税その他の公課を課せられないこと、すでに支給された給付金や給付金を受ける権利は差し押さえられないことも定められています。

3. 生活保護の進学準備給付金は転居する人が「30万円」

額は2つに分かれています。進学にあたって転居するかどうかが分かれ目です。

進学準備給付金は転居の有無で額が変わり、支給は1回限りになる1/2

生活保護の進学準備給付金の区分別の支給額を示した表

出所:厚生労働省「生活保護法による進学準備給付金の支給について」を参考にLIMO編集部作成

3.1 転居する人は30万円、その他の人は10万円

支給額は次のとおりです。

  • 特定教育訓練施設への入学に伴い転居する人:30万円
  • その他の人:10万円

通知の文言は「自宅外」「自宅」ではなく「転居する者」「その他の者」です。実際に住まいを移すかどうかで判断されます。

3.2 再支給はなく、受け取る権利は2年で時効になる

進学準備給付金の支給を受けた方には、再支給はされません。

また、支給を受ける権利は2年を経過したときに時効によって消滅すると定められています。

4. 生活保護の進学準備給付金の対象になるのは2つの場合

対象になるのは被保護者で、通知は2つに分けて定めています。

4.1 高校在学中に進学する場合が基本になる

1つ目は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある方です。高校3年生で年度内に進学する場合が、ここに当てはまります。

2つ目は、その3月31日を経過した方のうち、高等学校等就学者であって当該高等学校等を卒業または修了した後、直ちに特定教育訓練施設に入学しようとする方です。

4.2 やむを得ない事由があれば卒業から1年以内でもよい

2つ目にはもう一つの場合が含まれています。災害その他やむを得ない事由により卒業後に直ちに入学できなかった方が、卒業または修了した後1年を経過するまでの間に入学しようとする場合です。

通知は、このやむを得ない事由について、災害のほか本人の傷病や親の看護や介護等、真にやむを得ないと認められる場合をいうとしています。

熊谷 良子

通知には「転居する者」「その他の者」と書かれています。言葉のとおりに読むと、自分がどちらに当てはまるかを判断しやすくなります。