会社を辞めたあと、失業保険は「いくら」「いつから」「何日分」もらえるのか。検索すると、条件や計算、手続きの解説は数多く見つかります。ただ、同じ月給・同じ勤続年数でも、離職理由が「自己都合」か「倒産・解雇など」かで受け取れる日数と総額が大きく変わる点は、数字で並べた解説が多くありません。
この記事では、失業保険の正式名称である雇用保険の「基本手当」について、受給条件・日額の計算式・日額の上限・給付日数・待期と給付制限・手続きの流れを、ハローワークや厚生労働省の公表資料で確認します。基本手当日額の上限は令和8年8月1日から引き上げられており、この記事では2026年10月6日時点で確認できた最新の数字を使います。
そのうえで、月給30万円・40万円・60万円の3モデルについて、離職理由ごとの総額を編集部で試算しました。退職届を出す前に、自分の離職理由がどちらに当たりそうかを確かめる材料にしてください。なお、受給資格や離職理由の最終的な判断はハローワークが行います。個別の事情は、必ず管轄のハローワークで確認してください。
1. 失業保険とは?正式名称は雇用保険の「基本手当」
失業保険は通称で、制度上の名前は雇用保険の「基本手当」です。「失業給付」「失業手当」と呼ばれることもありますが、同じものを指します。雇用保険の被保険者だった人が離職し、失業中の生活を心配せずに再就職活動ができるよう支給されます。
ハローワークの説明では、受け取れる日数は離職時の年齢・被保険者であった期間・離職の理由などによって決まり、90日から360日の間で設定されます。「何日分もらえるか」は、人によって大きく異なります。
もうひとつ押さえたいのは、自動的に振り込まれる制度ではない点です。住所を管轄するハローワークで求職の申込みを行い、離職票を提出して、受給資格の決定を受けることが出発点になります。
基本手当の日額上限や給付日数を短くまとめて確認したい場合は、【雇用保険の基本手当】離職前6か月の賃金の5〜8割が90日から360日分。自己都合の給付制限は2025年4月から1か月に短縮されたもあわせて参考になります。
2. 失業保険の対象になる「失業」とは?働けない状態は対象外
基本手当は、仕事を失えば誰でも受け取れるわけではありません。ハローワークは「失業の状態」を、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就けない状態と説明しています。
そのため、次のような状態にあるときは、基本手当を受けられません。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
「少し休んでから探す」つもりの期間は、制度上は失業の状態にあたりません。ただし、病気やけがなどで引き続き30日以上働けなくなった場合には、受給できる期間を延長する手続きがあります。この点は、後の章で説明します。
3. もらえる条件:離職前2年間に12か月以上。「1か月」の数え方に注意
基本手当の受給資格には、雇用保険の被保険者であった期間が必要です。原則は、離職の日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あることです。
倒産・解雇などで離職した「特定受給資格者」と、一部の「特定理由離職者」は、離職の日以前の1年間に6か月以上あれば受給資格を得られます。自己都合の場合より、必要な加入期間が短く設定されています。
ここでいう「1か月」は、暦の月とは違います。離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある期間を、1か月として数えます。
雇用保険の被保険者になる現行の要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上であることと、31日以上の雇用見込みがあることです。パートやアルバイトでも、この条件を満たせば被保険者になります。要件は令和10年10月に変わる予定で、詳しくは最後の章で説明します。
4. 離職理由は3つに分かれる:自己都合・特定受給資格者・特定理由離職者
基本手当の日数や、受け取り始めるまでの待ち時間は、離職理由によって変わります。ハローワークは離職理由を、大きく3つに整理しています。
1つ目は、自己都合などで離職した「一般の離職者」です。2つ目は、倒産や解雇などで再就職の準備をする時間的余裕なく離職した「特定受給資格者」。3つ目は、期間の定めのある契約が更新されなかった人などの「特定理由離職者」です。
特定受給資格者の範囲は広く、倒産・事業所の廃止のほか、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)、賃金が従前の85%未満に低下した場合(低下を予見できなかった場合に限る)、事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けた場合などが挙げられています。
時間外労働が原因の離職も対象です。離職の直前6か月のうち、連続する3か月で45時間、いずれか1か月で100時間、または連続する2か月以上の平均で月80時間を超える時間外労働があった場合が該当します。
ただし、従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」などに自分から応募して離職した場合は、退職勧奨を受けた場合には当たらないとされています。
特定理由離職者には、有期契約の期間が満了し、本人が更新を希望したのに合意が成立しなかった人のほか、体力の不足や疾病、家庭事情の急変、結婚に伴う住所変更による通勤困難など、正当な理由のある自己都合で離職した人が含まれます。
5. 【編集者の視点】
離職理由は、自分で選ぶものではなく、受給資格の決定のときにハローワークが判定します。そのとき手がかりになるのが、会社が作成して交付する離職票です。離職票の離職理由欄が実態と合っているかは、受け取った時点で必ず目を通してください。
ハローワークの案内では、実際は事業主からの退職勧奨だったのに自己都合退職として扱われている場合など、離職理由に異議があるときは、ハローワークに相談できるとされています。相談を受けたハローワークが、事実関係を調べたうえで離職理由を判定します。
離職票が届いたら、書類の離職理由欄の文言と、実際に退職に至った経緯を並べて確認します。食い違いを感じたら、受給資格の決定の窓口で、その経緯を具体的に伝えてください。後の章の試算が示すとおり、判定の違いは日数と総額に直結します。
6. いくらもらえる?賃金日額から基本手当日額を出す計算式
1日あたりの金額は「基本手当日額」といいます。まず、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金(賞与などを除く)の合計を180で割り、「賃金日額」を出します。
基本手当日額は、この賃金日額のおよそ50〜80%です。60歳から64歳は45〜80%で、賃金が低い人ほど高い率が適用されます。
令和8年8月1日以降の計算式は、厚生労働省が公表しています。30歳以上45歳未満の場合、賃金日額が3203円以上5480円未満なら80%、5480円以上1万3490円以下なら80%から段階的に率が下がり、1万3490円を超えると50%です。1万6540円を超えると、上限の8270円で頭打ちになります。
賃金日額の下限は3203円で、端数は1円未満を切り捨てます。45歳以上60歳未満は賃金日額1万8220円超で上限9110円、30歳未満は1万4900円超で上限7450円です。60歳以上65歳未満は計算式が異なり、上限は7830円になります。
6.1 【基本手当日額の上限(令和8年8月1日現在)】
前提条件:令和8年8月1日現在の上限額。令和7年8月1日の上限との差は編集部の引き算1/2
出所:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」、厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」などを基にLIMO編集部作成
30歳未満・30歳以上45歳未満
- 30歳未満:前年の上限7255円→現在の上限7450円(195円増)
- 30歳以上45歳未満:前年の上限8055円→現在の上限8270円(215円増)
45歳以上60歳未満・60歳以上65歳未満
- 45歳以上60歳未満:前年の上限8870円→現在の上限9110円(240円増)
- 60歳以上65歳未満:前年の上限7623円→現在の上限7830円(207円増)
7. 日額には上限がある:月給が高いほど「実質の給付率」は下がる
日額の上限があるため、賃金が高い人ほど、賃金に対する基本手当の割合は下がります。30歳以上45歳未満の人で、月給(賞与を除く)が30万円なら、賃金日額は1万円です。この場合の基本手当日額は約6307円で、賃金日額に対する割合は約63%になります。
賃金日額が1万6540円を超えると、日額は上限の8270円で頭打ちです。賃金日額1万6540円は、月給に直すと約49万6200円にあたります。この年齢区分では、月給が約49万6200円を超えても日額は増えません。
月給60万円の人は、賃金日額が2万円になります。日額は上限の8270円なので、賃金日額に対する割合は約41%まで下がります。賃金の8割をもらえると思っていた人が、実際には4割程度にとどまる計算です。
賃金が高い人ほど、手取りの感覚と実際の日額のずれは大きくなります。生活費の見通しは、日額に日数を掛けた金額で立てるのが確実です。
8. 何日もらえる?所定給付日数は離職理由と年齢、加入期間で決まる
基本手当を受け取れる最大日数を「所定給付日数」といいます。自己都合など一般の離職者は、被保険者であった期間が10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日です。受給資格を得るには、離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要です。年齢による違いはありません。
特定受給資格者と一部の特定理由離職者は、年齢が加わります。被保険者期間が1年未満なら全年齢で90日ですが、期間が長くなるほど日数が伸び、45歳以上60歳未満で20年以上なら330日が上限です。
就職が特に難しい人(就職困難者)には、別の日数が設けられています。被保険者期間1年以上で、45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日です(1年未満はともに150日)。
被保険者期間が10年以上20年未満の人で比べると、自己都合なら全年齢で120日です。倒産・解雇などで離職した場合は、年齢によって180日から270日になります。同じ勤続年数でも、日数に最大150日の差が出ます。
8.1 【所定給付日数(被保険者であった期間が10年以上20年未満の場合)】
30歳未満〜35歳未満
- 30歳未満:一般の離職者120日/特定受給資格者180日(差60日)
- 30歳以上35歳未満:一般の離職者120日/特定受給資格者210日(差90日)
35歳以上〜65歳未満
- 35歳以上45歳未満:一般の離職者120日/特定受給資格者240日(差120日)
- 45歳以上60歳未満:一般の離職者120日/特定受給資格者270日(差150日)
- 60歳以上65歳未満:一般の離職者120日/特定受給資格者210日(差90日)
なお、有期契約の更新合意が成立せず離職した「特定理由離職者」は、受給資格に係る離職の日が令和9年3月31日までの間にある場合に限り、特定受給資格者と同様の日数になります。2027年4月以降の離職は、この扱いが続くかどうかを別途確認する必要があります。
9. 同じ月給でも、離職理由で総額は約2倍に変わる:3モデルで試算
日額と日数が分かったところで、掛け合わせて総額を出します。ここでは、年齢・月給・被保険者期間が違う3人を想定し、自己都合で離職した場合と、倒産・解雇などの特定受給資格者として離職した場合を比べます。
前提は次のとおりです。離職前6か月の賃金(賞与を除く)は毎月同額、賃金日額は月給×6÷180で1円未満切り捨て、基本手当日額は令和8年8月1日からの計算式で1円未満切り捨てとしました。所定給付日数をすべて受け取った場合の上限額で、再就職による打ち切りなどは考えていません。
9.1 【離職理由による基本手当の総額(3モデル)】
モデルA
- 想定:38歳・月給30万円・被保険者期間8年
- 基本手当日額:6307円
- 自己都合の総額:56万7630円(90日)
- 倒産・解雇等の総額:113万5260円(180日)
モデルB
- 想定:52歳・月給40万円・被保険者期間22年
- 基本手当日額:6744円
- 自己都合の総額:101万1600円(150日)
- 倒産・解雇等の総額:222万5520円(330日)
モデルC
- 想定:42歳・月給60万円・被保険者期間15年
- 基本手当日額:8270円
- 自己都合の総額:99万2400円(120日)
- 倒産・解雇等の総額:198万4800円(240日)
3モデルとも、倒産・解雇などの総額は自己都合の約2倍になりました。差額は、モデルAで56万7630円、モデルBで121万3920円、モデルCで99万2400円です。
差を生んでいるのは日数です。モデルCは日額が上限の8270円に張り付いていて、どちらのケースでも同じ。違うのは日数だけで、120日分の差が99万2400円になります。
受け取り始めるまでの待ち時間も違います。次の章で見るとおり、特定受給資格者は待期の7日間だけですが、自己都合の場合は待期に加えて、原則1か月の給付制限が付きます。総額と時期の両方で、離職理由の判定が生活設計に影響します。
10. 【編集者の視点】
試算を見ると、「会社都合にしてもらえないか」と考える方もいるかもしれません。ただ、離職理由は、会社と本人の合意で決められるものではありません。事実関係をもとに、ハローワークが判定します。ハローワークは事実関係を調査したうえで判定するため、実態と異なる説明は通りません。
退職前にできることは、事実を記録しておくことです。解雇や退職勧奨があった場合は、その日付ややり取りの内容をメモします。賃金の低下や長時間の時間外労働が理由なら、給与明細や勤怠記録は、事実を説明する手がかりになります。
窓口は、住所を管轄するハローワークです。離職票の交付が遅れているときも、ここに問い合わせます。「自分の場合は特定受給資格者にあたるのか」「どんな資料を持っていけばよいか」という聞き方をすると、必要な準備がはっきりします。判断は個別の事情で変わるため、断定せずに窓口で確認してください。
11. いつから受け取れる?待期7日と、自己都合の給付制限(原則1か月)
求職の申込みをして受給資格が決まっても、すぐには振り込まれません。まず、求職の申込み後に失業の状態にある7日間は、基本手当が支給されません。これを「待期」といい、離職理由にかかわらず適用されます。
さらに、正当な理由なく自己都合で退職した場合は、待期の満了後に一定期間、基本手当が支給されません。これが「給付制限」です。退職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月、令和7年3月31日以前なら原則2か月です。
ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合で退職して受給資格決定を受けている場合は、給付制限は3か月になります。自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(重責解雇)の場合も3か月です。
令和7年4月以降に、リ・スキリングのための教育訓練等を受けた(受けている)場合は、給付制限が解除され、基本手当を受給できます。厚生労働省の資料では、原則2か月を1か月に短縮する措置は、通達によるものとされています。
ハローワークの「雇用保険の具体的な手続き」のページには、2026年10月6日の確認時点で、給付制限が「2か月」(5年間に2回以上は「3か月」)のまま残っていました。令和7年4月1日以降の離職は、厚生労働省の案内どおり原則1か月です。どちらの記載を見たのか、退職日と照らして窓口で確かめてください。
12. 申請から振込まで:離職票・求職申込み・受給説明会・認定の流れ
手続きは、離職後に届く「雇用保険被保険者離職票(-1、-2)」から始まります。会社から離職票が交付されない場合や事業主が行方不明の場合は、住居地を管轄するハローワークに問い合わせます。
ハローワークでは、求職の申込みをしたうえで、離職票を提出します。持参するものは、離職票、マイナンバーカード等の個人番号確認書類、運転免許証などの身元確認書類、写真2枚、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードです。マイナンバーカードを提示すると、写真は省略できます。
受付時間は月曜日から金曜日(休祝日・年末年始を除く)の8時30分から17時15分です。求職の申込みに時間がかかるため、16時前の来所が勧められています。
受給資格が決まると、受給説明会の日時が知らされます。説明会には必ず出席する必要があり、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取り、第1回の失業認定日が告げられます。
その後は、原則として4週間に1度、失業の認定を受けます。認定日に失業認定申告書へ求職活動の状況などを書いて提出すると、認定を行った日から通常5営業日で、指定した口座に振り込まれます。休祝日や年末年始(12月29日から1月3日)を含む場合は、遅れることがあります。
13. 求職活動の実績が必要。申告漏れは不正受給になる
認定を受けるには、認定対象期間中に原則2回以上の求職活動実績が必要です。ただし、最初の認定日の認定対象期間は1回で足ります。給付制限がある場合は、制限期間とその直後の認定対象期間を合わせた期間にも、一定の実績が求められます。
実績として認められるのは、求人への応募、ハローワークの職業相談や職業紹介、各種講習やセミナーの受講などです。求人情報を眺めるだけや、知人に紹介を頼むだけでは、実績に含まれません。
短期のアルバイトや内職も、申告の対象です。就職や就労(パート、アルバイト、日雇、試用期間を含む)、自営の開始、内職や手伝いの収入を失業認定申告書に書かなかった場合は、不正受給にあたります。
不正受給とされた場合は、それ以後の支給がすべて止まり、返還を命じられます。さらに、原則として、不正の行為で支給を受けた額の2倍以下の金額の納付も命じられます。申告は、迷ったら窓口に聞いてから出すのが安全です。
14. 受給期間は離職の翌日から1年。日数が残っていても受け取れなくなる
基本手当を受け取れる期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間です。所定給付日数が330日の人は1年と30日、360日の人は1年と60日です。この期間を過ぎると、日数が残っていても受け取れません。
先延ばしにしやすいのは、離職後に休んでから申請しようと考えるケースです。申込みが遅れた分だけ、受け取れる期間が短くなることがあります。所定給付日数が150日や330日と長い人ほど、1年という期限の余裕は小さくなります。
病気、けが、妊娠、出産、育児などで引き続き30日以上働けなくなったときは、働けなくなった日数だけ受給期間を延長できます。延長できる期間は最長3年です。働けなくなった日の翌日以降、早めの申請が原則とされ、代理人や郵送でも申請できます。
就職が決まった場合の手当は、別の仕組みがあります。【令和8年8月改定】再就職手当の計算に使う日額上限は6745円に。支給残日数別に「もらえる額」を試算で、支給残日数別の金額の目安を確認できます。
60歳以上65歳未満の方の日額や、65歳以上で離職した場合の仕組みは、【60歳代で退職を考えている方へ】失業給付「基本手当」は日額いくら?2026年8月改定で上限7830円、65歳以上は一時金という選択肢もで整理されています。
15. 【編集者の視点】
失業保険の手続きは、申請の起点が本人にあります。会社が手続きをしてくれる退職時の書類と違い、受給資格の決定以降は、すべて自分で窓口に出向く流れになります。制度の複雑さというより、「期限内に動かなければ何も始まらない」点が、読者に注意してほしいところです。
特に、離職票が届くまでの期間は、手続きが止まりやすい時期です。届いたらすぐにハローワークへ行けるよう、持参書類(個人番号確認書類、身元確認書類、写真、預金通帳)を、先にそろえておくと動きやすくなります。
退職日が近い方は、退職日、被保険者であった期間、離職理由の3点をメモして窓口に行くと、日数や待ち時間の見通しを具体的に聞けます。条件の読み方は個別の事情で変わるため、最終的な判断は管轄のハローワークで確認してください。
16. 失業保険に税金はかかる?今後の制度変更(令和9年3月・令和10年10月)
基本手当は、課税されません。国税庁の案内では、雇用保険法に基づいて支給される求職者給付は、同法第12条の規定により課税されないとされ、配偶者控除の判定で使う合計所得金額にも含める必要がありません。受け取った基本手当に、所得税はかかりません。
制度は、これから変わる部分もあります。1つ目は、有期契約の更新合意が成立せずに離職した特定理由離職者の特例です。特定受給資格者と同じ所定給付日数になるのは、離職の日が令和9年3月31日までの人に限られます。
2つ目は、令和10年10月1日の適用拡大です。雇用保険の被保険者になる要件が、週所定労働時間「20時間以上」から「10時間以上」に変わります。被保険者期間の算定基準も、賃金の支払いの基礎となった日数「11日以上」または時間数「80時間以上」から、「6日以上」または「40時間以上」に変わります。
失業の認定の場面でも、労働した日の扱いが変わります。労働時間が1日4時間未満なら失業日と認定する基準が、2時間未満に変わる予定です。
制度の変更時期は、今後の情報で更新される可能性があります。手続きの前に、最新の扱いをハローワークで聞いておくと確実です。
※本記事は、編集部がハローワークインターネットサービス・厚生労働省・国税庁が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
17. まとめ
- 失業保険の正式名称は雇用保険の基本手当で、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上あり、失業の状態にある人が対象です。
- 基本手当日額は賃金日額のおよそ50〜80%で、令和8年8月1日現在の上限は30歳未満7450円、30歳以上45歳未満8270円、45歳以上60歳未満9110円、60歳以上65歳未満7830円です。
- 所定給付日数は離職理由・年齢・被保険者期間で決まり、被保険者期間10年以上20年未満の例では、倒産・解雇などは自己都合より最大で150日多くなります。
- 編集部の3モデル試算では、倒産・解雇などの総額は自己都合の約2倍になりました。差の主因は日数です。
- 待期は7日間、自己都合の給付制限は令和7年4月1日以降の退職で原則1か月です。受給期間は離職の翌日から原則1年です。
失業保険は、金額の大きさより、離職理由・日数・期限の読み違いで受け取れる額が変わる制度です。離職理由は自分で選べませんが、実態を記録し、判定の窓口で説明することは自分でできます。
退職日が見えている方は、まず離職票の離職理由欄と退職日を確認し、管轄のハローワークで離職理由と給付制限の扱いを聞いてください。そのうえで、試算の表の日額と日数を使い、最初の数か月の生活費の見通しを立てておくと、慌てずに手続きへ進めます。
18. よくある質問
18.1 Q. 失業保険とは何ですか?
A. 雇用保険の「基本手当」の通称です。雇用保険の被保険者が離職し、働く意思と能力があるのに職に就けないとき、再就職活動の間の生活を支えるために支給されます。受給にはハローワークでの求職の申込みと受給資格の決定が必要です。
18.2 Q. 雇用保険の失業給付と失業保険は違うものですか?
A. 同じ制度を指します。制度上の名称は雇用保険の基本手当で、「失業保険」「失業給付」「失業手当」は、日常的な呼び方の違いです。
18.3 Q. 失業保険はいくらもらえますか?
A. 離職前6か月の賃金(賞与を除く)の合計を180で割った賃金日額の、およそ50〜80%が1日の額です。令和8年8月1日現在の上限は、30歳未満7450円、30歳以上45歳未満8270円、45歳以上60歳未満9110円、60歳以上65歳未満7830円です。
18.4 Q. 自己都合で辞めた場合、いつから受け取れますか?
A. 求職の申込み後の7日間の待期があり、そのあと令和7年4月1日以降の退職なら原則1か月の給付制限があります。5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合で退職している場合は3か月です。実際の時期はハローワークの指示に従ってください。
18.5 Q. パートやアルバイトでも失業保険はもらえますか?
A. 雇用保険の被保険者であれば対象です。現行の被保険者の要件は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることです。そのうえで、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上必要です。
18.6 Q. 失業保険に税金はかかりますか?
A. かかりません。国税庁の案内では、雇用保険法に基づく求職者給付は同法第12条により課税されません。配偶者控除の判定で使う合計所得金額にも含めません。
18.7 Q. 失業保険はいつまでに申請すればよいですか?
A. 受給できる期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。病気やけがなどで30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できます。
18.8 Q. 会社都合か自己都合かは、自分で選べますか?
A. 選べません。受給資格の決定のときに、ハローワークが事実関係をもとに判定します。実際は事業主からの退職勧奨なのに自己都合とされている場合などは、ハローワークに相談できます。
参考資料
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
- ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
- 厚生労働省「基本手当日額の計算式及び金額(令和8年8月1日~)」
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(令和7年7月22日公表)
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
- 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和10年10月1日施行分)について」(令和7年8月20日職業安定分科会雇用保険部会)
- 厚生労働省「雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ」
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー 雇用保険法上の求職者給付を受給している配偶者」
齊藤 慧
