令和8年8月1日、雇用保険の基本手当日額が改定されました。あわせて、再就職手当の計算に使う基本手当日額の上限も、60歳未満は6745円、60歳以上65歳未満は5454円に引き上げられました。

失業手当(基本手当)を受け取りながら仕事を探していると、「給付を最後まで受け取ってから働き始めたほうが得なのでは」と迷う場面もあるかもしれません。

一方で、雇用保険には早めに再就職した人に向けた「就職促進給付」も用意されています。この記事では、就職促進給付の種類と、再就職手当の支給要件・計算方法を、令和8年8月からの上限額をふまえて整理します。

1. 「就職促進給付」とは?早めの再就職を後押しする4種類の給付がある

就職促進給付は、雇用保険の基本手当の受給資格がある人が、早めに再就職したり、就職に向けて移転や求職活動をしたりする際に支給される給付の総称です。

ハローワークの案内では、主に次の4つに分けて紹介されています。

就職促進給付の主な種類と対象になる人1/2

就職促進給付の主な種類と対象になる人

出所:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」を参考にLIMO編集部作成

図を見ると、同じ「就職促進給付」でも、対象になる人や支給額の決まり方がそれぞれ異なることが分かります。

なお、安定した職業以外の職業に就いた人を対象としていた「就業手当」は、令和7年4月1日施行の制度改正で廃止されました。

1.1 再就職手当は支給残日数が3分の1以上ある人向け

再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、支給残日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合などに支給されます。

就職促進給付のなかで対象になる人が多く、この記事で中心に取り上げる給付です。

1.2 就業促進定着手当は再就職後に賃金が下がった人向け

就業促進定着手当は、再就職手当を受けた人が同じ再就職先に6か月以上雇用され、その6か月間の賃金の1日分の額が離職前の賃金日額より低い場合に支給されます。

1.3 常用就職支度手当は就職が困難な人向け

常用就職支度手当は、支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の受給資格者や、高年齢受給資格者などのうち、障害のある人など就職が困難な人が安定した職業に就いた場合に支給されます。

1.4 移転費・求職活動支援費は移転や遠方での求職活動を支える給付

移転費は、ハローワークの紹介した職業に就くためなどに住居を移転する必要がある場合に支給されます。

求職活動支援費には、遠方の求人に応募する際の交通費・宿泊費を支給する「広域求職活動費」、教育訓練経費の2割(上限10万円)を支給する「短期訓練受講費」、面接や訓練の際の保育サービス等の費用の一部を支給する「求職活動関係役務利用費」があります。

2. 再就職手当を受け取るための支給要件

再就職手当は、就職すれば誰でも受け取れるわけではありません。ハローワークの案内では、次の要件をすべて満たす必要があるとされています。

2.1 支給残日数と雇用の見込みに関する要件

まず確認したいのが、支給残日数と、就職先での雇用期間の見込みです。

  • 就職日の前日までの失業の認定を受けたうえで、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • 1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる職業に就いたこと

支給残日数とは、所定給付日数のうち、まだ基本手当を受け取っていない日数のことです。

2.2 就職のしかたや過去の受給歴に関する要件

あわせて、どのように就職したか、過去に同じ手当を受け取っていないかも確認されます。

  • 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
  • 7日間の待期期間が経過した後に就職したこと
  • 給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介により就職したこと
  • 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと

このほか、受給資格の決定前から採用が内定していた場合は対象にならないなど、細かな要件もあります。ご自身が当てはまるか迷う場合は、受給手続きをしたハローワークで確認しておくと安心です。

3. 再就職手当は「いくら」もらえる?令和8年8月からの上限額で試算

ここからは、再就職手当の支給額の決まり方を、令和8年8月1日からの上限額をもとに確認していきます。

3.1 計算式は「支給残日数×給付率×基本手当日額」

再就職手当の支給額は、支給残日数に給付率と基本手当日額を掛けて計算します。給付率は、支給残日数がどれだけ残っているかで2段階に分かれます。

支給残日数と再就職手当の給付率(所定給付日数90日・基本手当日額5000円の場合)2/2

支給残日数と再就職手当の給付率(所定給付日数90日・基本手当日額5000円の場合)

出所:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」を参考にLIMO編集部作成

図のとおり、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら給付率は70%、3分の1以上なら60%です。同じ人でも、就職のタイミングによって受け取れる額が大きく変わることが分かります。

3.2 計算に使う基本手当日額の上限は6745円(60歳以上65歳未満は5454円)

再就職手当の計算に使う基本手当日額には上限があります。令和8年8月1日からの上限額は次のとおりです。

  • 離職時の年齢が60歳未満:6745円
  • 離職時の年齢が60歳以上65歳未満:5454円

令和7年8月1日からの上限額は60歳未満が6570円、60歳以上65歳未満が5310円だったため、それぞれ175円、144円の引き上げとなりました。

基本手当日額そのものは、離職時の年齢が45歳以上60歳未満の場合で最大9110円です。離職前の賃金が高く、基本手当日額が上限を超える人は、再就職手当の計算では上限額に置き換えて計算されます。

3.3 支給残日数別に試算する

具体的な数字で、いくつかのケースを試算してみます(いずれも離職時の年齢は60歳未満とします)。

  • 所定給付日数120日・基本手当日額6000円で、残り80日で就職:80日×70%×6000円=33万6000円
  • 所定給付日数120日・基本手当日額6000円で、残り40日で就職:40日×60%×6000円=14万4000円
  • 所定給付日数150日・基本手当日額8000円で、残り100日で就職:上限6745円で計算し、100日×70%×6745円=47万2150円

3つ目のケースのように、基本手当日額が上限を超えている人は、実際の日額ではなく上限額で計算される点を押さえておきましょう。

和田 直子

再就職手当は、支給残日数と給付率、基本手当日額の3つが分かれば、ご自身でもおおよその額を計算できます。まずは雇用保険受給資格者証で所定給付日数と基本手当日額を確かめ、今就職した場合に支給残日数がどれくらい残るのかを数字で把握しておきたいです。