5. 年金で暮らせるようになり生活保護が終わったら、国民健康保険・後期高齢者医療に戻る手続きが必要
年金額の改定や世帯の状況の変化で、収入が最低生活費を上回るようになると、保護が終わることがあります。
保護を受けている間は、国民健康保険と後期高齢者医療の被保険者から外れています。保護が終わったときにどの医療保険に戻るのかを、条文に沿って見ていきましょう。
元自治体職員として国保・後期高齢者医療の保険料を計算していた頃は、保護の廃止にあわせて資格を取得し直し、保険料を計算し直す手続きをしてきました。保護の手続きと医療保険の手続きは窓口が分かれているため、両方に目を配る必要があります。
5.1 保護が終わった日から、国民健康保険・後期高齢者医療の資格を取得する
国民健康保険法第6条第9号は、生活保護を受けている世帯に属する人を国民健康保険の被保険者としないと定めています。後期高齢者医療も、高齢者の医療の確保に関する法律第51条第1号で同じ扱いです。
保護が終わると、この適用除外にあたらなくなります。国民健康保険は国民健康保険法第7条で、後期高齢者医療は高齢者の医療の確保に関する法律第52条で、保護を受けなくなった日から資格を取得すると定められています。
原則として、75歳以上なら後期高齢者医療に、75歳未満で会社の健康保険などに入らない人なら国民健康保険に加入する形です。
5.2 国民健康保険の加入は14日以内に届け出る
国民健康保険法施行規則第3条は、保護が終わって国民健康保険の資格を取得した人がいるとき、世帯主が14日以内に市区町村へ届け出ることを定めています。
保護が始まったときの資格喪失の届出については、市区町村が公簿などで確認できれば省略させることができると、施行規則第13条第2項に定められています。終わるときの加入は14日以内の届出が定められているので、自分から手続きをしておくと確実です。
5.3 届出が遅れても、保険料は資格を取得した日までさかのぼる
国民健康保険の資格は、届け出た日ではなく保護が終わった日から始まります。千葉市は、届出が遅れた場合も、保険料は生活保護を受けなくなったときまでさかのぼって(最高2年間)支払う必要があると案内しています。
届出を遅らせても、保険料が軽くなるわけではありません。数か月分をまとめて納めることになりかねないので、早めに手続きしておきたいところです。
6. 【確認したいこと】年金の額が変わったら、福祉事務所への届出と保険料の窓口を確かめる
年金と生活保護を一緒に受け取っている人は、年金の額が変わったときの手続きも押さえておきたいところです。最後に、確認先を窓口ごとにまとめてみました。
6.1 年金の額が変わったら、福祉事務所に届け出る
生活保護法第61条は、収入や支出など生計の状況に変動があったとき、すみやかに保護の実施機関または福祉事務所長に届け出ることを被保護者に求めています。
年金の額が改定されたときや、新たに年金を受け取れるようになったときは、年金の通知書を持って担当のケースワーカーに伝えておくと安心です。
6.2 保険料や加入の手続きは、市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療の窓口で
保護が終わると、医療費は医療扶助ではなく、国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者として医療機関の窓口で一部を負担する形に変わります。
保険料の額や納め方、年金からの天引きが始まる時期などは、お住まいの市区町村の担当窓口で確かめられます。保険料の支払いが難しいときも、一人で抱え込まずに早めに相談してください。
7. まとめ
老齢基礎年金の満額は令和8年度で月7万608円ですが、厚生年金のない「基礎のみ」の人の約3割は月5万円未満です(令和6年度末)。年金が最低生活費に届かなければ、年金を受け取りながら差額を生活保護で受けられる場合があります。
10月15日に振り込まれる年金は8月分と9月分ですが、生活保護では受け取った10月と11月に分けて収入として数えます。介護保険料が天引きされていれば、差し引かれたあとの額が収入になります。
75歳以上・単身・1級地-1で老齢基礎年金の満額だけを受け取る人なら、生活扶助費は月7万1900円です。家賃4万円を仮定すると、保護費は月4万1492円という計算になります。
保護が終わったら、国民健康保険や後期高齢者医療に戻る手続きが必要です。年金の額が変わったときは福祉事務所へ、保険料の相談は市区町村の窓口へ、早めに確かめておきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度)」
- 厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日社発第246号)」
- 厚生労働省「生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法」
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律」
- e-Gov法令検索「生活保護法」
- 千葉市「生活保護を受けなくなりました。国民健康保険の手続について教えてほしいのですが。」
太田 彩子