5. 年金を繰り下げると給付金はどうなる?増額で「対象外」になる境目を試算

ここからは、年金の繰下げ受給と年金生活者支援給付金の関係を見ていきます。

5.1 繰下げで年金が増えると、給付金の要件から外れる場合がある

繰下げ受給は、年金の受け取りを66歳以後75歳まで遅らせる代わりに、1か月あたり0.7%、最大で84%年金額が増える仕組みです。

日本年金機構の資料にも、繰下げによる年金額の増額で、年金生活者支援給付金の支給要件に該当しなくなる場合があると記載されています。

老齢年金生活者支援給付金は、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が所得基準額以下であることが要件のため、繰下げで年金収入が増えると、判定に使う金額が基準額を超えることがあるからです。

5.2 納付期間別に見る「基準額を超える繰下げ月数」

そこで、老齢基礎年金のみを受け取り、ほかに所得がない人を想定して、繰下げで増えた年金額が所得基準額の82万6500円を超える月数を試算しました。

老齢基礎年金額は、令和8年度の満額である月7万608円をもとに納付月数に応じて計算し、金額は今後も変わらないと仮定しています。

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繰下げで所得基準額を超える境目(試算)

LIMO編集部作成

保険料を35年(420月)納めた人は、繰下げ前の年額が74万1384円で、繰下げが17か月(66歳5か月から受給)に達すると、増額後の年額が82万9609円となり、所得基準額を超えます。

30年(360月)納めた人は年額63万5472円で、43か月(3年7か月)の繰下げで基準額を超える計算です。

25年(300月)納めた人は年額52万9560円で、81か月(6年9か月)の繰下げで超えます。

20年(240月)納めた人は、最大の84%増額(75歳まで繰下げ)でも年額77万9512円にとどまり、所得基準額を超えません。

5.3 増額分と給付金、差し引きでどちらが多い?

給付金が対象外になるからといって、繰下げが不利になるとは限りません。

例えば、35年(420月)納めた人が17か月繰り下げた場合、老齢基礎年金は年額で約8万8000円増えます。

一方で、納付済期間のみで免除がない場合の老齢年金生活者支援給付金は年額約5万9000円で、この場合は増額分のほうが上回る計算です。

ただし、日本年金機構は、繰下げによる年金額の増額で、医療保険・介護保険などの自己負担や保険料、税金が増える場合もあるとしています。損得は世帯の状況によって変わるため、一概には言えません。

5.4 繰下げ待機中の取扱いは年金事務所で確認を

繰下げを待っている間の給付金の取扱いについては、日本年金機構の公表資料では明確な記載を確認できませんでした。

実際の判定は、前年の収入や世帯の課税状況などで決まります。繰下げを検討している人は、年金事務所や日本年金機構の給付金専用ダイヤルで、個別に確認することをおすすめします。

和田直子
繰下げ受給を考えるとき、多くの人は「年金がいくら増えるか」だけに目が向きがちです。

ですが、増えた年金によって給付金が受けられなくなったり、保険料や税金が変わったりすることもあります。額面の増額だけでなく、手取りがどう変わるかまで含めて、事前に年金事務所などで確認しておくと安心です。

6. まとめ

2026年度の年金生活者支援給付金は、老齢・遺族が月5620円、障害が1級7025円・2級5620円の基準額で、前年度から3.2%引き上げられました。

老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上の老齢基礎年金の受給者で、世帯全員が住民税非課税、かつ前年の所得が82万6500円以下(昭和31年4月2日以後生まれ)であることが主な要件で、請求しないと受け取れません。

繰下げ受給で年金が増えると、この所得基準額を超えて給付金の対象外になる場合があります。繰下げを検討している人は、納付期間ごとの境目を目安に、年金事務所などで確認したうえで判断しましょう。

参考資料

和田 直子