5. 高齢夫婦の家計は毎月4万円超の赤字。おむつ代の控除は、どれだけ負担を軽くする?
ここからは、在宅介護を支える高齢夫婦世帯の家計実態と、医療費控除の「10万円」のハードルをどう捉えるべきかについて見ていきましょう。
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」(表2)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における1か月あたりの実収入は25万4395円(うち社会保障給付22万8614円)であるのに対し、消費支出は26万3979円、非消費支出は3万2850円です。毎月の可処分所得は22万1544円で、消費支出がこれを上回り、不足分は月平均4万2434円とされています。
この消費支出の中には、診察代や医薬品などの「保健医療費」として月平均1万7941円(年間約21万5292円)が含まれています。実際の在宅介護においては、月4万円超の生活赤字に加え、おむつ代や介護費用が上乗せされる場合もあります。
ここで気になるのが、医療費控除の10万円のボーダーラインとの関係です。
例えば、1か月のおむつ代が8000円の場合、年間のおむつ代合計は9万6000円となる計算です。おむつ代単独では10万円のラインに届かないように見えますが、医療費控除は「生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費」を合算して計算します。
診療費、処方薬の薬代、歯科治療費、通院のための公共交通機関の運賃などを合わせることで、年間の対象費用が10万円を超え、控除の対象となる場合があります。
仮に年間の対象医療費合計(おむつ代含む)が25万円で、保険金などの補填がなく総所得金額等が200万円以上であった場合、10万円を差し引いた「15万円」が医療費控除額となります。
実際の節税額(所得税・住民税の軽減額)は個人の所得や適用される税率によって異なりますが、毎月蓄積する介護負担を抑える上で貴重な制度です。
6. 市区町村の「確認書」はどう取る? 横浜市と中央区の公式ページで比べると
おむつ代の医療費控除で2年目以降(または条件を満たす1年目)に重要となるのが、市区町村が発行する「主治医意見書の記載内容確認書(確認書)」の取得です。実際の自治体における手続きについて、横浜市と東京都中央区の例を比較してみましょう。
横浜市「おむつ代に係る医療費控除のための確認書の交付について」の案内によると、確認書の申請対象となるには、横浜市内で要介護認定を受けていることに加え、該当する年に受けていた要介護認定に係る主治医意見書(複数認定の合算6か月以上、または13か月以上の有効期間)において「寝たきり度B1以上」および「カテーテルまたは尿失禁あり」が記載されていることが要件に掲げられています。申請先は「要介護認定を受けた区の福祉保健センター高齢・障害支援課」です。
一方、東京都中央区「おむつ代の医療費控除の証明に係る必要事項確認書の発行」の案内(2025年1月10日掲載)では、区役所介護保険課の窓口または郵送で申請手続きができます。中央区では、申請者と対象者との関係に応じて必要な書類が具体的に整理されています。
- 対象者本人または同世帯の家族:申請者の本人確認書類(顔写真付き1点または写真なし2点)
- 成年後見人:本人確認書類+登記事項証明書
- 別世帯の親族(別居の息子・娘など):本人確認書類+委任状(委任状が難しい場合は本人の介護保険被保険者証の写しで代用可)
- 相続人(対象者が死亡している場合):本人確認書類+相続人であることを証明する書類(戸籍全部事項証明書等)
このように、自治体によって申請窓口の名称や代理申請時の必要書類の扱い(委任状の代用要件等)、申告対象者が亡くなっている場合の対応などが細かく規定されています。発行までの日数や手数料の有無なども含め、あらかじめ「要介護認定を受けている市区町村の介護保険担当課」へ問い合わせて確認しておくことがスムーズな手続きのポイントです。
7. まとめにかえて|領収書を捨てずに手元に残すことから始めよう
在宅介護におけるおむつ代の医療費控除について、重要なポイントを改めて整理しておきましょう。
- おむつ代は傷病により「おおむね6か月以上寝たきり」であり、「医師の治療を受けていること」を条件に医療費控除の対象と認められます。
- 1年目は原則として医師の「おむつ使用証明書」が必要ですが、2年目以降は市区町村の「確認書」や主治医意見書の写しで簡易に手続きを行うことが可能です。取扱い改正により、条件を満たせば1年目でも活用できます。
- おむつ代単独で10万円に達しなくても、診察代や薬代と合算できるため、日頃から領収書を保管しておくことが求められます。
次の確定申告に向けて、まずは手元にある今月のおむつ代の領収書を専用の封筒やファイルに保管する作業から始めてみてはいかがでしょうか。事前の準備を進めておくことで、年末年始や確定申告期に慌てることなく手続きを進めることができます。
介護と仕事や家事を両立していると、日々の忙しさから制度の手続きはどうしても後回しになりがちです。しかし、医療費控除は事前に仕組みを知り、領収書を1枚ずつ集めておくだけで確実に実行できる家計の防衛策になります。
「自分たちのケースは対象になるのだろうか」と判断に迷ったときは、無理に自己判断せず、お世話になっているケアマネジャーさんや地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口に気軽に相談してみてください。
自治体によっては、紙おむつの支給や助成などの制度が設けられている場合もあるため、あわせて確認しておくと安心です。
小さな準備を積み重ねておくことが、長期間続く在宅介護を無理なく乗り切るための大きな安心につながります。
