親や配偶者を在宅で介護する際、毎日の紙おむつや尿取りパッドにかかる費用は家計にとって大きな負担となります。「毎月おむつ代を支払っているけれど、医療費控除の対象になるのだろうか」「領収書を取っておけば税金が安くなるのだろうか」と疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、一定の条件を満たせばおむつ代は確定申告において医療費控除の対象です。ただし、「おむつを使っている」という事実だけでは自動的に控除を受けられるわけではなく、対象となる条件や必要書類の確認が欠かせません。本記事では、国税庁の公的資料をもとに、おむつ代が医療費控除となる条件や1年目と2年目以降の手続きの違いについて分かりやすく整理していきます。
1. おむつ代が医療費控除の対象になるのは、どんなとき?
まず、どのような場合におむつ代が医療費控除として認められるのか、基本となる条件を確認しておきましょう。
国税庁「寝たきりの者のおむつ代」によると、医療費控除の対象となるのは、傷病によりおおむね6か月以上にわたって寝たきりで、医師の治療を受けている方のおむつ代です。購入時の領収書やレシートは、商品名と金額が分かる形で保管しておきましょう。
2. 1年目に必要な書類は?「おむつ使用証明書」と主治医意見書の違い
おむつ代の医療費控除を初めて受ける年(1年目)には、医療機関での証明手続きが欠かせません。
原則として、現に治療を行っている医師や医療機関に「おむつ使用証明書」を発行してもらう形をとります。この証明書は、治療上おむつの使用が必要である旨を医師が証明する書類です。
確定申告の際には、作成された「おむつ使用証明書」の証明年月日、証明書の名称、証明者の名称を医療費控除の明細書の欄外余白などに記載することで、証明書自体の添付や提示を省略することが可能です。ただし、明細書に記載した場合であっても、税務署からの求めに応じて確認できるよう、自宅で5年間保存しておく必要があります。
なお、令和6年10月の取扱い改正(厚生労働省通知および国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(情報)」)により、令和7年1月1日以降に提出する確定申告においては、1年目であっても要介護認定時の主治医意見書の写し等を活用できる取り扱いが整備されました。連続する複数の認定期間を合算して6か月以上となる場合などに適用できる可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。
3. 2年目以降は、主治医意見書の写しで手続きできる?
おむつ代について医療費控除を受けるのが2年目以降である場合、手続きが簡素になる場合があります。
国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)」によると、2年目以降は医療機関でおむつ使用証明書を再発行してもらう代わりに、市区町村が保管する「主治医意見書」の内容を確認した書類(確認書)または主治医意見書の写しで手続きを行う選択肢もあります。
【図版1】おむつ代の医療費控除における1年目と2年目以降の手続きの違い1/3
出所:国税庁「寝たきりの者のおむつ代」、国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(情報)」、国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)」、横浜市「おむつ代に係る医療費控除のための確認書の交付について」をもとにLIMO編集部作成
主治医意見書を証明書類として代用するためには、以下の2つの記載要件を満たしていることが必須です。
- 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の記載が「B1、B2、C1、またはC2」(寝たきり状態)に該当していること
- 「失禁への対応」として「カテーテル」または「尿失禁」の項目にチェックが入っていること
令和6年10月10日付の改正通知では、要介護認定の有効期間が最長48か月まで延長されたことに伴い、おむつを使用した当該年に主治医意見書が新しく作成されていない場合であっても、有効期間が13か月以上の要介護認定に係る主治医意見書であれば代用できる運用へと改められました。
4. 領収書の保管と、明細書の書き方で気をつけることは?
実際におむつ代の医療費控除を申告するにあたって、日常の管理で押さえておきたい実務上の注意点を整理しておきましょう。
国税庁「医療費控除を受けられる方へ」によると、確定申告の際には「医療費控除の明細書」を作成して申告書に添付して提出する必要があります。以前のように領収書そのものを提出する必要はありませんが、明細書の記入内容を確認するため、確定申告期限等から5年間は自宅で領収書を保管しておく必要があります。
また、医療費控除の対象となるのは、年間で支払った医療費の合計額(保険金などで補填される金額を除く)が10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の方は所得の5%)を超えた場合であり、控除額は合計額から10万円(または所得の5%)を差し引いた金額となります。おむつ代単独では10万円に達しない場合であっても、診療費や薬代、通院のための公共交通機関の運賃などと合算して計算できるため、日頃から医療費全般の領収書をまとめて保管しておくことが重要です。
在宅介護を続けていると、日々の雑務に追われて、おむつ代の領収書を毎月そのまま捨ててしまうという方も少なくないのではないでしょうか。おむつ代が医療費控除の対象になるには「6か月以上の寝たきり」や「医師の証明・主治医意見書」といった一定の要件がありますが、制度を正しく理解しておくことで家計の負担を軽減できる可能性があります。「おむつを使っているから自動的に控除される」というわけではありませんが、今年の領収書をしっかり手元に残し、まずは市区町村の介護保険課や主治医の先生に相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
