3. 途中で売ることはできる?金利と為替の4つのパターン
米国債は、満期まで待たずに途中で売却することもできます。ただし、途中で売る場合の受取額は、そのときの債券の価格と為替レートの両方で決まります。
3.1 金利が上がると債券の価格は下がる
債券の価格は、市場の金利と反対に動きます。金利が上がると、すでに発行されている低い利率の債券は魅力が下がるため、価格が下がります。金利が下がると、価格は上がります。
たとえば、利率5.28%の10年債を額面100で買った直後に、市場の金利が1%上がると価格は約92.7に、1%下がると約108.0になる計算です。残りの期間が長い債券ほど、金利の変化による価格の動きは大きくなります。
3.2 1年後に売却した場合の4つのパターン
1ドル157円で10年債(利率5.28%)を100万円分買い、1年後に1回分の利息(税引後)を受け取ったうえで売却した場合を試算します。金利は1%上下、為替は10円動いたものとします。
1ドル157円で10年債を100万円分購入し、1年後に売却した場合の損益(試算)2/2
出所:LIMO編集部作成
図のとおり、もっとも厳しいのは「金利上昇×円高」の組み合わせで、100万円が約91万3000円になる計算です。反対に「金利低下×円安」なら約118万7000円になります。
一般に、米国の金利が下がると円高が進みやすいといわれており、「金利低下×円高」のように価格の上昇と為替の損が打ち消し合う場面もあります。ただし、金利と為替が常に同じ方向に動くとは限りません。
4. 米国債を買う前に確認したいリスクと注意点
試算から分かるとおり、米国債は利回りだけでは損益が決まりません。購入前に次の4点を確認しておきましょう。
4.1 為替リスク:満期まで持っても円高なら元本割れする
米国債を満期まで持てば額面のドルは戻ってきますが、円に戻すときに円高が進んでいれば、円での受取額は購入時を下回ることがあります。満期が短い債券ほど、損益分岐点は購入時のレートに近くなります。
4.2 価格変動リスク:途中で売ると金利の動きで損益が変わる
急にお金が必要になって途中で売却すると、そのときの金利によっては購入時より低い価格でしか売れないことがあります。満期まで使わないお金で持つことが前提になります。
4.3 税金:利息も売却益・償還差益も20.315%
国税庁によると、外国国債を含む特定公社債の利子は、受け取る際に20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。償還や売却による利益も、上場株式等の譲渡所得等として20.315%の申告分離課税の対象です。
為替差益が雑所得として総合課税される外貨預金とは、課税の仕組みが異なります。米国での課税の有無を含めた実際の取り扱いは、購入する金融機関で確認しておきましょう。
4.4 NISAでは個別の米国債は買えない
NISAの成長投資枠で購入できるのは上場株式や投資信託などで、米国債のような個別の債券は対象外です。米国債の利息や売却益は、課税口座で受け取ることになります。
5. まとめ
2026年10月2日の米国10年債の利回りは5.28%、ドル円は157円台でした。1ドル157円で買って満期まで持った場合、損益分岐点は1年債で151.6円、10年債で110.5円という計算です。
ただし、為替手数料がかかれば損益分岐点は円安寄りになり、途中で売れば金利と為替の動き次第で損益は大きく変わります。「金利上昇×円高」が重なれば、1年後に100万円が約91万3000円になる試算もあります。
まずは、満期まで使わずに置いておけるお金がいくらあるかを確認し、そのうえで満期の長さと損益分岐点を見比べてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 米財務省「Daily Treasury Par Yield Curve Rates」
- 日本銀行「外国為替市況(2026年10月2日)」
- 国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)」
- 国税庁「No.1510 公社債の償還金と税金」
- 金融庁「NISAを知る」
和田 直子