「富裕層」と聞くと、預貯金や株式などの資産をたくさん持っている人を思い浮かべる方が多いかもしれません。一方で、1年間の所得が1億円を超える人がどれくらいいるのかは、あまり知られていません。

国税庁が2026年2月に公表した「令和6年分 申告所得税標本調査」では、合計所得金額が1億円を超える申告納税者は3万2244人でした。その所得の半分以上を、株式等の譲渡所得等が占めています。

この記事では、資産で見た富裕層の定義と世帯数を確認したうえで、所得で見た1億円超の人の人数と、所得の中身を見ていきます。

なお、富裕層の定義や世帯数に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

1. 富裕層は純金融資産1億円以上の世帯。2023年は富裕層・超富裕層で合計165.3万世帯

富裕層の線引きとしてよく使われるのが、野村総合研究所の推計です。2025年2月13日に公表された推計では、世帯が持つ純金融資産の額で富裕層と超富裕層を分けています。

1.1 純金融資産1億円以上5億円未満が富裕層、5億円以上が超富裕層

純金融資産保有額は、世帯が持つ金融資産の合計から負債を差し引いた額です。この額が1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」としています。

富裕層・超富裕層の世帯数と純金融資産の総額(2023年)1/2

野村総合研究所の推計による2023年の富裕層と超富裕層の世帯数と純金融資産の総額を、純金融資産の額で分けた2段の図で示したもの。合計は165.3万世帯・469兆円

出所:野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」を参考にLIMO編集部作成

【2023年の世帯数と純金融資産の総額】

  • 富裕層(1億円以上5億円未満):153万5000世帯・334兆円
  • 超富裕層(5億円以上):11万8000世帯・135兆円
  • 合計:165万3000世帯・469兆円

1.2 富裕層・超富裕層の世帯数は2021年から11.3%増えた

富裕層・超富裕層の合計は、2021年の148万5000世帯から11.3%増えました。純金融資産の総額も364兆円から469兆円へ、28.8%増えています。

野村総合研究所は、増えた要因として株式などの資産価格の上昇や、準富裕層から富裕層への移行、相続などを挙げています。2023年はとくに株価の上昇と円安が寄与したとしています。

富裕層の割合については、LIMOの記事「資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】」から要点を引用して確認しておきましょう。

富裕層・超富裕層の世帯が全体に占める割合は、以下の通りです。富裕層:約2.75% 超富裕層:約0.21% また、2023年調査の結果、富裕層・超富裕層の世帯数が2005年以降最多を更新しました。

出所:資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】

2. 申告所得税標本調査でみる、合計所得金額1億円超の申告納税者は3万2244人

資産ではなく1年間の所得で見ると、別の数字が出てきます。国税庁の申告所得税標本調査は、確定申告で所得税を納めた人の所得の種類や所得階級ごとの分布をまとめた統計で、昭和26年分から毎年続いています。

2.1 申告納税者は確定申告で納める所得税がある人。還付申告の人は含まれない

この調査の対象は、令和6年分の所得税について令和7年3月31日までに申告などをした人のうち、令和7年6月30日の時点で申告納税額がある人です。これを「申告納税者」と呼んでいます。

所得があっても申告納税額のない人、たとえば還付申告書を提出した人は対象から外れています。令和6年分の申告納税者は516万人で、所得金額は51兆2284億円、税額は7兆8539億円でした。

2.2 所得1億円超の申告納税者は全体の0.6%で、所得金額の22.5%を占める

合計所得金額が1億円を超える申告納税者は、人数では申告納税者全体の0.6%です。ところが所得金額では11兆5179億円で全体の22.5%、税額では2兆4319億円で全体の31.0%を占めています。

前年の令和5年分と比べると、人数は13.5%、所得金額は22.6%増えました。所得階級ごとの人数は次のとおりです(第2表の人員を合計所得階級ごとに集計)。

【合計所得金額1億円超の申告納税者の人数(令和6年分)】

  • 1億円超2億円以下:2万513人
  • 2億円超5億円以下:8252人
  • 5億円超10億円以下:2056人
  • 10億円超20億円以下:798人
  • 20億円超50億円以下:446人
  • 50億円超100億円以下:113人
  • 100億円超:66人
  • 合計:3万2244人

ここでいう合計所得金額は、給与所得や事業所得などのほか、分離課税の土地・建物の譲渡所得や株式等の譲渡所得等も足し合わせ、繰越損失額を差し引いた金額です。給与の額面である年収とは別の数字です。

2.3 所得1億円超の人の所得は、半分以上が株式等の譲渡所得等

所得1億円超の申告納税者について、所得の種類ごとの金額を見ると、いちばん大きいのは株式等の譲渡所得等でした。

合計所得金額1億円超の申告納税者の所得の内訳(令和6年分)2/2

令和6年分の申告所得税標本調査で、合計所得金額1億円超の申告納税者3万2244人の所得を種類別に並べた横棒グラフ。株式等の譲渡所得等が51.3%で最も大きい

出所:国税庁「令和6年分 申告所得税標本調査」第2表をもとにLIMO編集部作成

【合計所得金額1億円超の申告納税者の主な所得(令和6年分)】

  • 株式等の譲渡所得等:5兆9122億円(51.3%)
  • 分離長期譲渡所得:2兆4101億円(20.9%)
  • 給与所得:1兆6263億円(14.1%)
  • 配当所得等:6102億円(5.3%)

割合は、合計所得金額11兆5179億円に占める割合をLIMO編集部で計算したものです。分離長期譲渡所得は、所有期間が5年を超える土地や建物などを売ったときの所得です。

申告納税者全体(516万人)では、所得金額のうち給与所得が39.3%を占め、株式等の譲渡所得等は14.1%です。所得が1億円を超える層では、給与よりも株式や土地・建物を売って得た所得が中心になっています。

資産で数えた富裕層・超富裕層は165.3万世帯、所得で数えた1億円超の申告納税者は3万2244人で、所得の中心は給与ではなく株式等や土地・建物の譲渡でした。

統計の「所得」は、収入から経費や給与所得控除などを差し引いたあとの金額です。自分と比べるときは、年収ではなく、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」や確定申告書の所得の欄の金額で比べます。

ここからは、元銀行員として資産のご相談を受けてきた立場から、所得税の負担割合と、所得がきわめて高い人に加わった課税のしくみを見ていきます。

中本 智恵

統計でいう所得は、給与なら給与所得控除を、事業なら経費を差し引いたあとの金額です。資産と所得のどちらで見た「1億円」なのかを分けて考えると、こうした数字をご自身の家計に当てはめやすくなります。