3. 薬局で買える薬が対象に?セルフメディケーション税制の仕組み

病院の受診費用は少なくても、ドラッグストアで市販薬をよく買うご家庭に知っていただきたいのが「セルフメディケーション税制」という仕組みです。

3.1 セルフメディケーション税制の仕組み

セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算方法

セルフメディケーション税制に係る医療費控除額の計算方法

出所:国税庁「パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)医療費を支払ったとき」

セルフメディケーション税制とは、「軽度な身体の不調は自分で手当てする」という自発的な健康管理を、国が税制面から支援する制度です。健康診断や予防接種などをきちんと受けている方が、対象となる市販薬を年間で1万2000円を超えて購入した場合、その超えた金額分を所得から差し引くことができます。これにより、申告した年の所得税の還付を受けられたり、翌年の住民税が安くなったりする可能性があります。

控除額の計算式は次の通りです(上限8万8000円)

  • 控除額 = 特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金等で補てんされた部分を除く)- 1万2000円

対象となる条件は、次の通りです。

  • 適用を受けようとする年に、本人が「健康の保持増進および疾病の予防への取組」を行っていること(人間ドック、市区町村の健康診査、インフルエンザ等の予防接種、勤務先の定期健康診断、特定健康診査・特定保健指導、がん検診のいずれか)
  • 家族分の医薬品費を合算する場合でも、取組を行う必要があるのは申告者本人のみ(配偶者や親族が取組を行っている必要はありません)
  • 対象医薬品(スイッチOTC医薬品等)の購入費が年間1万2000円を超えていること

なお、通常の「医療費控除(年間10万円超え)」とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか選択できません(併用不可)。しかも、一度確定申告で選択すると、修正申告や更正の請求で選択を変更することはできない点にも注意が必要です。

3.2 対象となる「スイッチOTC医薬品」

この税制の対象となる薬の中心が「スイッチOTC医薬品」です。これは、もともと医師の処方箋が必要だった薬のうち、安全性が確認され、ドラッグストアなどで購入できるようになった薬のことをいいます。例えば、次のような日常的なトラブルに使う薬が対象に含まれることがあります。

  • 解熱鎮痛薬(頭痛、肩こりなど)
  • 抗アレルギー薬(花粉症、鼻炎など)
  • 便秘薬
  • 去痰薬(風邪の症状など)
  • 胃腸薬

対象となる成分や品目は更新されるため、厚生労働省のホームページなどで最新情報を確認できますが、店頭でも簡単に見分けるヒントがあります。

対象医薬品の範囲

対象医薬品の範囲

出所:国税庁「令和7年分確定申告特集セルフメディケーション税制とは」

対象となる薬の箱には「セルフメディケーション税控除対象」という共通の識別マークが印字されていることがあり、購入した際のレシートにも「★」などの印とともに対象商品である旨が記載されます。このレシートは確定申告の際に必要となるため、大切に保管しておくことをおすすめします。

4. どっちがお得?医療費控除とセルフメディケーション税制の選び方3ステップ

ここで最も注意すべき点は、通常の「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」は、どちらか一方しか選択できない(併用不可)というルールです。

どちらを選ぶべきか迷った際は、以下の3つのステップを目安に考えてみてください。

4.1 ステップ1:家族全体の医療費が10万円を超えているか確認する

1年間の医療費(通院費、治療費、処方薬代、市販薬代などすべて)が家族合計で10万円(※総所得金額等が200万円未満の方はその5%)を超えている場合は、基本的に通常の「医療費控除」を選んだほうが有利になりやすい傾向があります。

4.2 ステップ2:対象の市販薬が1万2000円を超えているか確認する

医療費の合計が10万円に満たない場合、今度はレシートを見返し、印のついた対象市販薬の購入費だけで1万2000円を超えているかを確認します。超えていれば、セルフメディケーション税制を利用できる可能性が高まります。

4.3 ステップ3:申告者本人が健康診断などを受けているか確認する

ステップ2を満たしたうえで、申告するご本人がその年に健康診断や予防接種を受けている証明(領収書や結果通知表)があれば、セルフメディケーション税制を適用して確定申告を行いましょう。

5. まとめにかえて

今回は、医療費控除の基本的な仕組みと計算方法、対象になる費用の具体例、そして市販薬の購入で税金が安くなるセルフメディケーション税制について解説しました。

制度の仕組みを知らないために、本来受けられるはずの税制優遇を見逃してしまうのはとてももったいないことです。まずは、通院の領収書や薬局のレシートを捨てずに、ひとつの箱にまとめて保管する習慣をつけることから始めてみてください。それが、大切なご家族の家計を守るための第一歩になります。

参考資料

村岸 理美