親の口座は、役所への死亡届ではなく、銀行への連絡で止まります。止まっても、葬儀代は1つの金融機関から「150万円」まで出せます。

1人あたりいくら出せるかは、預金の額と相続人の数で決まります。記事後半では、止まったあとの公共料金やカード、税金の引き落としと、引き出す前に確かめたいことを取り上げます。

1. 親の口座はいつ止まる?役所の死亡届ではなく、銀行への連絡がきっかけ

全国銀行協会は、口座名義人が亡くなったら取引のある金融機関に連絡するよう案内しています。

そのうえで、相続の連絡と同時に、亡くなった人の口座での入出金などの取引は原則として制限されると説明しています。

役所に出す死亡届と、金融機関への連絡は別の手続きです。口座が止まるのは、家族などが金融機関に相続を伝えたときになります。

年金のほうは扱いが違います。日本年金機構は、マイナンバーが収録されている人については、年金受給権者の死亡届は原則不要としています。

口座が止まると、残高が残っていても引き出しや口座振替はできなくなります。葬儀代を親の預金から出したいときに使えるのが、次の払戻し制度です。

2. 葬儀代は1人いくら出せる?「150万円」に届く預金額の早見表

2019年7月1日から、遺産分割が終わる前でも、相続人が単独で預貯金の一部を払い戻せるようになりました。民法第909条の2にもとづく仕組みで、預貯金の仮払い制度と呼ばれます。

払い戻せる額は、次の式で計算します。1つの金融機関から受けられるのは、法務省令で定める150万円が上限です。

  • 払い戻せる額 = 相続開始時の預貯金の額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分

預金の額と相続人の組み合わせごとに、1人あたりの額を計算すると次のとおりです。

1つの金融機関で「150万円」に届くのは、法定相続分2分の1の人なら預金900万円から1/3

預金額300万円・600万円・900万円・1200万円・1800万円・3000万円ごとに、配偶者、子1人だけの相続の子、配偶者と子2人のときの子、子3人のときの子が払い戻せる額の早見表。上限は1金融機関150万円

出所:e-Gov法令検索「民法」「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令」をもとにLIMO編集部作成(編集部試算)

たとえば1つの銀行に1200万円があり、相続人が子2人だけの場合、計算上は1人200万円ですが、受け取れるのは150万円までです。

配偶者と子2人が相続人なら、子の法定相続分は4分の1です。子1人が150万円に届くのは、同じ銀行に1800万円以上あるときになります。

全国銀行協会は、通夜・告別式・火葬までの葬儀一式の費用を、一般には100万~200万円としています。150万円の上限は、この幅のなかに入ります。

払い戻した分は、その相続人が遺産の一部を分割で取得したものとみなされます。上限を超える額が必要な場合は、家庭裁判所の保全処分を使う方法もあり、このときは裁判所が必要性を判断して額を決めます。

3. 10月15日の年金はどうなる?亡くなった日で変わる「未支給年金」

年金は偶数月の15日に、前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれます。10月15日に振り込まれるのは、8月分と9月分です。

年金は、受給していた人が亡くなった月の分まで支払われます。亡くなった時点でまだ受け取っていない分は未支給年金になり、生計を同じくしていた遺族が請求します。

そのため、未支給年金になる月数は、亡くなった日によって変わります。10月前後を例にすると次のとおりです。

10月15日の前に亡くなると、原則として8月分から10月分までの「3か月分」が未支給年金になる2/3

亡くなった日が9月20日、10月5日、10月20日の場合に、受け取り済みの年金と未支給年金になる月の例(原則)。9月20日と10月5日は7月分まで受け取り済みで、未支給年金は9月20日が8・9月分、10月5日が8・9・10月分。10月20日は9月分まで受け取り済みで、10月分が未支給年金

出所:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。」「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」をもとにLIMO編集部作成

日本年金機構は、届出が遅れ、亡くなった日の翌日以後に年金を受け取ったときは、その分を後日返すことになると注意を促しています。

一方で同機構の請求書の案内では、亡くなった日より後に振り込まれた年金のうち、亡くなった月分までは未支給年金に含まれるとしています。後日返すことになるのは、原則として亡くなった月の翌月以降の分です。

10月15日の振込(8月分・9月分)が止まるのか、振り込まれたあとにどう扱われるのかは、個別の事情によって変わる可能性があります。気になるときは、年金事務所に問い合わせると確実です。

もう一つ気をつけたいのが受取口座です。日本年金機構は、未支給年金を請求しても、亡くなった人の口座を解約していないと、そこへ入金される場合があると注記しています。受取口座をどうするかは、請求のときに年金事務所で確認してください。

未支給年金のほかに家族が受け取れるお金は、LIMOの記事「年金受給者が亡くなったとき「家族が受け取れる5つのお金」死亡一時金の請求期限は2年、未支給年金は5年」にまとめています。

ここからは、口座が止まったあとの引き落としと、払戻しの前に確かめたいことを取り上げます。