3. 数字で見る現在地:両セグメントが力強く成長

自動車向けが主力と聞くと、「自動車産業の先行きに引きずられて成長が鈍化しているのではないか」と心配になる投資家もいるかもしれません。しかし、実際の決算数字を見ると、ルネサスの業績は非常に堅調です。

売上収益 四半期推移2/3

売上収益 四半期推移

出所:ルネサスエレクトロニクス「2026年12月期 第2四半期 プレゼンテーション資料」(2026年7月31日)P6

2026年4-6月期のセグメント別の成長率を見ると、その力強さがわかります。

  • 自動車向け事業: 売上収益1,871億円(前年同期比+15.9%、前四半期比+9.0%)
  • 産業・インフラ・IoT向け事業: 売上収益2,163億円(前年同期比+40.0%、前四半期比+10.4%)

※「産業・インフラ・IoT向け事業」は、産業向け、インフラ向け、IoT向けの3つの事業を合計した数字です。

このように、主力の自動車向けが二桁の成長を維持しているだけでなく、産業・インフラ・IoT向け事業も前年同期比で40%増という大きな伸びを示しています。泉田氏も、両事業が「ちゃんと伸びている」と評価しています。

4. 成長の制約となる「自動車業界の構造」

足元の業績は好調ですが、中長期的な視点に立つと、ルネサスには乗り越えるべき壁があります。それは、最大の顧客である自動車業界の構造的な制約です。

泉田氏の分析によれば、ルネサスの自動車向け事業の成長を決める一番大きな要素は、「自動車の生産台数」と「1台あたりの電装化比率(搭載されるマイコンの数)」の掛け算です。

電気自動車(EV)へのシフトや高度な運転支援システムの普及により、車1台あたりに搭載される半導体の数は確実に増えています。しかし問題は、掛け算のもう一つの要素である「自動車の生産台数」にあります。

自動車向け事業の成長を決める掛け算3/3

自動車向け事業の成長を決める掛け算

出所:泉田氏の解説を基にイズミダイズム作成

泉田氏は、自動車産業の現状について次のように指摘します。

「グローバルで見た時に、じゃあその台数自体がそんなに増えていくのかというと、結構1桁何パーセントみたいな形になっちゃうんですよ」

世界的な自動車メーカーの生産台数が倍々ゲームで伸びていくような計画は存在しません。さらに、カーシェアリングなどの仕組みが普及し、個人が車を所有する比率が下がっていけば、生産台数の伸びは一層厳しくなる可能性があります。

自動車の電装化が進む恩恵は受けられるものの、市場全体のパイ(台数)が劇的に拡大しない以上、自動車向け事業だけで半導体企業としての高い成長期待に応え続けるのは容易ではありません。

泉田氏は「自動車には欠かせない半導体作ってるんですよ。なのでそこはシェアも高いし、グローバルでも存在感あるんだけど、そこの領域が今後どうなっていくかというところが」と述べ、強みそのものより、その強みが向けられている市場の行方に論点を移します。

5. まとめ:会社の見え方が変わる「分岐点」

自動車向け事業の成長に構造的な上限が見え隠れする中、ルネサスがさらに企業価値を高めるためには何が必要なのでしょうか。

泉田氏は、今後のルネサスを評価する上で「産業・インフラ・IoT向け事業」の動向が極めて重要になると指摘します。

「今、既存の事業でしっかり利益が出ているうちに、次の成長の領域にシフトしていくというところが求められている会社かなというふうには思います」

決算資料において、会社側は売上を「自動車向け」と「産業・インフラ・IoT向け」という大きな2つの括りで提示しています。金額の合計で見れば、すでに産業・インフラ・IoT向け(2,163億円)が自動車向け(1,871億円)を上回っています。

しかし、産業・インフラ・IoT向けはあくまで3つの事業の合算値であり、単一の事業として見れば、依然として自動車向けが最大です。ここが投資家にとっての最大の観測点になります。

泉田氏は、今後のシナリオについて次のように結論づけています。

「(産業向け、インフラ向け、IoT向けの)うちどれかが、自動車よりも大きくなってきたら、また全然見え方が変わるとは思います」

つまり、産業向け、インフラ向け、IoT向けのいずれかの事業が単独で自動車向け事業の売上を抜き去ったとき、株式市場からのルネサスに対する見方は「自動車部品の会社」から「新たな成長領域を牽引する半導体メーカー」へと根本的に変わる可能性があるということです。泉田氏が例として挙げるのは、産業機械などの現実世界の機器にAIを組み込む「フィジカルAI」のような領域です。

投資家としては、四半期ごとの決算発表において、単に全体の利益が増えたかどうかだけでなく、「産業・インフラ・IoT向けの比率がどこまで高まっているか」を確認することが、今後の成長性を見極めるための重要なモノサシとなるでしょう。

なお、この記事で見たのは事業の構成と、その成長を決める仕組みまでです。株価がいま割安なのか割高なのか(バリュエーション)には踏み込んでいないため、実際の投資判断にあたっては、その点もあわせて確認する必要があります。

参考資料

  • ルネサスエレクトロニクス株式会社「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年7月31日)
  • ルネサスエレクトロニクス株式会社「2026年12月期 第2四半期 プレゼンテーション資料」(2026年7月31日)
  • ルネサスエレクトロニクス株式会社「決算発表説明会 要旨及び主な質疑応答」(2026年7月31日)
  • ルネサスエレクトロニクス株式会社「半期報告書(第25期中間)」(2026年7月31日)
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム」

各資料の入手先: ルネサスエレクトロニクス株式会社 IRライブラリ

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