3. 【国民年金と厚生年金】平均受給額の差は「約9万円」の現実

では、実際に老後に受け取る年金額はどのくらいなのでしょうか。

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、令和6年度末時点の平均年金月額を確認してみましょう。

  • 厚生年金保険(第1号)の老齢年金:15万1142円
  • 国民年金の老齢年金:5万9431円

単純にこの二つを比較すると、その差は月額9万1711円となります。ただし、厚生年金の15万1142円には、ベースとなる「老齢基礎年金(すべての人が加入する国民年金部分)」の月額も含まれている点に注意が必要です。

また、資料に掲載されている国民年金の平均額(5万9431円)は、「自営業などで国民年金だけを受け取っている人」のみの平均ではありません。過去に会社員として短期間働いたことがあり、老齢基礎年金にわずかな厚生年金を上乗せして受け取っている人も計算に含まれています。そのため、この金額を「国民年金だけを納め続けた場合の平均」と捉えると、実態と少しずれてしまう可能性があります。

実際の年金受給額は、現役時代の働き方や加入期間、お給料の額によって一人ひとり全く異なります。平均額はあくまで一つの目安として捉え、ご自身の正確な見込み額は、誕生月に届く「ねんきん定期便(ご自身の年金記録が書かれたお知らせ)」や、インターネット上の「ねんきんネット」を活用してこまめにチェックする習慣をつけましょう。

4. 【都道府県別】年金月額に「4万円以上」の差が出る理由とは?

年金の平均受給額は、お住まいの地域によっても傾向が異なります。同じく厚生労働省の資料から、都道府県別の平均年金月額を見てみましょう。

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額5/5

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金保険(第1号)の平均年金月額が最も高いのは神奈川県の17万457円で、最も低いのは青森県の12万8129円となっています。一方、国民年金では、最も高いのが富山県で6万2989円、最も低いのが沖縄県で5万4217円です。

特に厚生年金においては、都道府県によって平均額に4万円以上の開きがあることがわかります。この背景には、現役時代の賃金水準の地域差や、通勤圏内にある企業規模の違いなどが大きく影響していると考えられます。一般的に大都市圏は平均受給額が高い傾向にありますが、その分、住居費などの生活コストも高くつくケースが多いです。老後の生活を思い描く際は、「もらえる年金額」だけでなく「その地域で暮らすための生活費」のバランスをセットで考える視点が求められます。

5. 【FPが解説】老後不安を和らげる「3つの実践ステップ」

ここまで様々なデータを見てきましたが、大切なのは「自分自身のケースに置き換えて、今から何ができるか」を前向きに考えることです。老後への不安を安心に変えるための3つの実践ステップをご紹介します。

5.1 ステップ1:勤め先の再雇用制度と退職金規定を確認する

働きたい人の意欲と、企業の制度整備にはまだ少しズレがあるのが現状です。まずはご自身の勤務先で、定年後にどのような再雇用制度が用意されているのかを早めに確認しましょう。再雇用後の給与水準はどう変化するのか、退職金はいつ・いくら受け取れるのかを知るだけでも、未来の資金計画がぐっと具体的に描けるようになります。

5.2 ステップ2:夫婦の「年金見込み額」を合算して生活費と比べる

「ねんきん定期便」などでご自身と配偶者の年金見込み額を確認したら、それらを合算して「世帯での月額」を算出してみましょう。その金額と、現在の月の生活費を比較することで、老後に毎月いくら不足するのか(あるいは黒字になるのか)というリアルな数字が見えてきます。足りない分は、働く期間を延ばすか、今から貯蓄を増やすかの具体的な判断材料になります。

5.3 ステップ3:家計の「固定費」を少しずつ見直す

年金生活に入る前に、保険料、スマートフォンの通信費、利用していないサブスクリプション(定額サービス)の月額料金といった「固定費」をコンパクトにしておくことをおすすめします。現役時代から家計をスリム化するクセをつけておけば、将来的に収入が減少した際にも慌てずに、心穏やかな生活を送ることができます。

6. まとめにかえて

今回は、シニア世代の就労実態や働きながら受け取る年金の最新データ、そして都道府県別の受給額について解説しました。人生100年時代を迎え、60歳以降も働き続けることはごく自然な選択肢となっています。年金制度の仕組みやご自身の受給見込み額を正しく把握し、早めに家計の見直しを行うことが、安心できる老後への第一歩です。未来を過度に不安がる必要はありません。まずは手元にあるねんきん定期便を開いてみるなど、できることから少しずつ準備を進めていきましょう。

村岸 理美

これまで数多くの家計相談に携わってきました。お金の不安を解消するには、「毎月いくら足りないのか」を数字で明確にすることが一番の近道です。

無理に働き続けることだけを目標にするのではなく、日々の生活費を工夫して抑えることや、心身の健康を維持することも立派な老後対策になります。

参考資料

村岸 理美