令和6年4月に公的年金の支給額が改定され、前年度から2.7パーセントの引き上げ(増額)が実施されたことが大きなニュースとなりました。しかし、昨今の物価上昇や社会保険料の負担増の波はそれ以上に厳しく、年金だけでゆとりある生活を送れるのか不安に感じる方は決して少なくありません。
人生100年時代と言われる今、定年後も働き続けるという選択肢はごく一般的なものになりつつあります。今回は、最新の公的データをもとに、シニア世代の就労実態や年金の受給額のリアルに迫りつつ、私たちが今からできる具体的な備えについて詳しく解説していきます。
1. 【60歳以降も働く】約8割が希望!企業が期待する「活躍年齢」は平均67.9歳
まずは、働く世代が老後の就労についてどのように考えているのかを見ていきましょう。法人会員向けに与信管理クラウドサービスを提供するリスクモンスター株式会社は「何歳まで働くと思う?現役世代の老後就労予測」調査を発表しました。40〜59歳のビジネスパーソンを対象にしたこの調査では、「60歳以降も働くと思う」と答えた人が全体の約8割にのぼりました。
その理由としては「生活費・老後資金の確保」が最多となっており、「61〜65歳」「66〜70歳」を合わせると、およそ3人に2人が70歳までの就労を見込んでいます。現在のご家庭の資産状況や描いているライフプランによって、働き方の希望が多様化している様子がうかがえます。
こうした個人の前向きな意識に対し、企業側はどう見ているのでしょうか。帝国データバンクの調査によると、企業が従業員に活躍してほしいと考える年齢は平均67.9歳でした。
特に小規模な企業ほどこの年齢が高くなる傾向があり、人手不足を背景に、長年培ってきたスキルや経験豊富な人材への強い期待がうかがえます。実際に現在の従業員の最高齢が平均68.3歳であり、個別企業では91歳の方が現役でいきいきと活躍されているという素晴らしい例もありました。
内閣府の「高齢社会白書」を見ても、こうした社会全体の流れははっきりと裏付けられます。令和7年の65〜69歳の就業率は54.5パーセント、70〜74歳は36.2パーセントと上昇傾向が続いており、65歳以上の就業者数は22年連続で前年を上回っています。
ただし、70歳までの就業確保措置(定年引き上げや再雇用制度などのルール)を実施済みの企業は34.8パーセントにとどまっており、誰もが希望通りに働き続けられるための社会的な制度整備は、まだ道半ばの段階と言えるでしょう。
2. 【65歳以上】働きながら年金を受給する人は「344万4000人」1年間で21万5000人増加
長く働き続ける人が増えていることに伴い、年金を受け取りながら働く人も年々増加しています。厚生労働省の資料をもとに、令和6年度末の「在職者に係る老齢給付(働きながら老齢年金を受け取っている人)」の受給状況を見てみましょう。
- 老齢給付の受給者数:415万9000人(前年度比11万9000人増)
- うち65歳以上の老齢厚生年金受給者:344万4000人(前年度比21万5000人増、6.7パーセント増)
ここ数年の65歳以上の老齢厚生年金受給者数の推移をたどると、令和2年度は276万人でしたが、令和3年度は285万3000人、令和4年度は306万8000人、令和5年度は322万9000人となり、令和6年度には344万4000人まで増えています。わずか4年間で68万4000人も増加していることになります。
なお、この資料でいう「在職者」には、厚生年金保険の被保険者として会社で働く方のほか、適用事業所(厚生年金に加入している会社)で働く70歳以上の人なども含まれています。
ここで一つ注意したいのが、「在職老齢年金」という制度です。これは、働きながら受け取るお給料(ボーナスを含む月額換算額)と年金の月額の合計が一定の基準(令和6年度は月額50万円)を超えると、年金の一部または全部が支給停止になる(受け取れなくなる)仕組みです。先ほどの344万4000人という数字には、この制度によって年金が減らされていない人も含まれています。「働けば働くほど手取りがそのまま増える」とは限らないケースがあるため、ご自身の将来の働き方がこの制度の対象になるかどうか、事前に確認しておくことが大切です。
