3. ヨドバシカメラは「駅前の大型店」で何を狙うのか

名古屋店と池袋店の立地には、もう一つ共通点があります。いずれも、ターミナル駅に直結する大型商業施設の一部を活用していることです。

名古屋店は名鉄名古屋駅と名鉄バスセンターに直結し、池袋店も池袋駅東口に直結しています。店舗を目的地として訪れる客だけでなく、駅を利用する人が立ち寄りやすい立地です。

特に名古屋店は、旧名鉄百貨店本店が入っていた名鉄ビルへの出店です。池袋でも、ヨドバシカメラを核とする「Yodobashi-Ikebukuro」が、旧西武池袋本店の建物を活用して開業しました。

両都市で百貨店跡地に大型店を展開している点は、ヨドバシの都市型出店を考えるうえで重要です。新たに建物を一から用意するのではなく、すでに駅前に存在する大規模な商業施設と、その立地条件を生かして店舗を展開できます。

さらに、名古屋では9月5日に「ヨドバシカメラ サンシャインサカエ店」もリニューアルしています。

名鉄名古屋店の開業後は名古屋エリアで2店舗体制となり、サンシャインサカエ店はスマートフォンや関連アクセサリー、カプセルトイ、カードゲーム機など、日常的に利用しやすい売場へ再編されました。

一方、従来の他カテゴリー商品は名鉄名古屋店へ引き継ぐとしています。

この動きからは、都市部で大型店を増やすだけでなく、既存店と新店舗で売場の役割を分ける考え方もうかがえます。

ヨドバシにとって駅前の大型店は、家電の販売面積を確保するだけの場所ではなく、専門性の高い商品や体験型売場を集める拠点になっていると考えられます。

4. 家電量販店業界でも「リアル店舗」の役割が変化

経済産業省によると、2025年の家電大型専門店の販売額は前年比4.1%増となり、2年連続で増加しました。2025年の小売業販売額全体も前年比1.4%増で、家電大型専門店は増加した業態の一つとなっています。

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出所:経済産業省

出所:経済産業省

ヨドバシカメラの動きは、こうした競争環境のなかで、リアル店舗の役割を広げる取り組みと見ることができます。

ECで価格やスペックを比較できる一方、実物の確認や専門スタッフへの相談が必要な商品もあります。名古屋店と池袋店では、その部分を売場の強みにするとともに、家電以外の専門カテゴリーを組み込んでいます。

5. トレンドウォッチャーのひとこと

大蔵 大輔

家電量販店業界では、ECとの価格競争だけでなく、リアル店舗をどう使うかが重要になっています。

その点でヨドバシカメラの動きは興味深いところがあります。名古屋店と池袋店はいずれも駅前の大型物件を活用していますが、単に家電を大量に並べるのではなく、AI機器、ゴルフ、アウトドア、酒類など、実物を見たり専門的な説明を受けたりする意味のあるカテゴリーを組み込んでいます。

一方、家電大型専門店の販売額は2025年に前年比4.1%増となっており、リアル店舗そのものの需要が失われたわけではありません。

今後は、店舗の立地や規模だけでなく、ECでは得にくい体験や専門性をどう売場に組み込むかが、各社の差別化につながりそうです。ヨドバシカメラが名古屋と池袋で進める大型店は、ECとリアル店舗の役割を分けながら、店舗側の体験価値を高める動きといえそうです。

参考資料

大蔵 大輔