3. 埋めるべき赤字はいくらなのか

では、65歳以降の家計はどれだけ足りていないのでしょうか。年齢階級で並べると、思っていた形とは違って見えます。

3.1 赤字が最も大きいのは最初の5年

LIMOの記事「「ゆとりある老後」に公的な基準はない。夫婦2人の赤字はどのくらい?年齢が上がるとどうなるかもチェック」から引用します。

可処分所得は65〜69歳が24万5710円、70〜74歳が24万8599円、75歳以上が22万1235円です。消費支出との差を取ると、赤字は65〜69歳で月5万1287円になります。

70〜74歳は月3万7245円、75歳以上は月2万7225円です。老後の赤字は最初の5年が最も大きく、そこから縮んでいきます。

出所:LIMO「「ゆとりある老後」に公的な基準はない。夫婦2人の赤字はどのくらい?年齢が上がるとどうなるかもチェック」

赤字は一定ではありません。65歳から69歳が月5万1287円で最も大きく、そこから年齢が上がるにつれて縮んでいきます。

可処分所得は70歳代前半がいちばん多く、赤字は65歳から69歳がいちばん大きくなっています2/2

65歳以上の無職世帯について、65歳から69歳・70歳から74歳・75歳以上の可処分所得と1か月あたりの赤字を並べた図

出所:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)」LIMO「「ゆとりある老後」に公的な基準はない。夫婦2人の赤字はどのくらい?年齢が上がるとどうなるかもチェック」をもとにLIMO編集部作成

3.2 だから最初の5年に手当てが要る

高年齢求職者給付金が意味を持つのは、まさにこの時期です。65歳で離職したあと、求職の申込みと失業の認定を経て一時金が入る計算になります。

ただし基本手当の日額の50日分ですから、赤字を埋め続けられる金額ではありません。つなぎの位置づけです。

4. 年金と一緒に受け取れるのか

65歳未満で年金を受けながら失業給付を受けようとすると、年金が止まる話が出てきます。この調整がどこまで及ぶのかを条文で確認します。

厚生年金保険法附則第7条の4(繰上げ支給の老齢厚生年金)や附則第11条の3(特別支給の老齢厚生年金)では、対象を雇用保険法に規定する65歳未満の受給資格者とし、ハローワークで求職の申し込みをした場合に支給停止となるのは「老齢厚生年金」(基本手当が優先支給される)と定めています。

一方、65歳以上で受給できる「高年齢求職者給付金」は基本手当(失業給付)とは異なる一時金であり、条文上の併給調整の対象にはなっていません。そのため、65歳以降の老齢年金とあわせて受け取ることができます。ただし、個別の受給要件や手続きについては、ハローワークと年金事務所の両方で確認しておくと安心です。

5. 「ゆとり」に公的な基準はない

そもそも、ゆとりある老後という言葉に国が定めた基準はありません。総務省の家計調査が示すのは、実際の世帯が1か月に何にいくら使ったかという実支出です。

よく見る月38万円といった金額は、民間団体の意識調査で回答された希望額がもとになっています。実支出とは別のものです。

希望額を目標に据えると、達成できない金額を追いかけることになります。まずは実際の赤字がいくらかを押さえ、そこに手当てできる制度を並べるほうが順序として確かです。

6. 給付の日数と、赤字の大きさを重ねて見る

雇用保険法第37条の2は65歳以上の被保険者を高年齢被保険者と定め、失業したときに高年齢求職者給付金を支給するとしています。受給資格は離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上です。

金額は基本手当の日額の50日分、算定基礎期間が1年未満なら30日分です。ただし離職の日の翌日から1年以内に求職の申込みと失業の認定を受ける必要があり、遅れて残り日数が足りなくなると、その分だけ減ります。

第37条の5により、週5時間以上20時間未満の事業所2か所を合計して週20時間以上になる人は、ハローワークに申し出て加入することもできます。雇用保険マルチジョブホルダー制度と呼ばれている仕組みです。

そして65歳以降の家計の赤字は、65歳から69歳が月5万1287円で最も大きく、75歳以上では月2万7225円まで縮みます。手当てが要るのは最初の5年ということになります。自分が受給資格を満たすかどうかは、お近くのハローワークにご確認ください。

参考資料

LIMO編集部貯蓄解説班