「睡眠の質」への関心が高まるなか、マットレス市場も活況を呈しています。近年は、寝心地や機能性を打ち出す新興の寝具ブランドも増え、硬さや素材、体圧分散性など、さまざまな軸で差別化された商品が登場しています。
一方、意外と選択肢が少ないのが「縦のサイズ」です。シングルやダブルなど横幅の選択肢は豊富でも、縦方向は「195cm」の商品が中心で、それ以上の長さのモデルは日本国内ではほとんど販売されていません。
そんななか、株式会社LIMNEが運営する寝具ブランド「Limne(リムネ)」は、2026年9月から長さ「210cm」の「リムネマットレス リッチコイル ロングモデル」の販売を開始。これまでになかった新たな選択肢を加えました。
1. 2019年創業。マットレスから始まった「Limne」
Limneは2019年に創業した寝具ブランドです。現在はマットレスを中心に、枕やボックスシーツ、ベッドフレームなどを展開しています。
ブランドの出発点となったのは、ウレタン素材を使ったマットレスでした。Limneが開発した高反発素材「スフエアー」は、「ふわふわなのに、しっかり反発する」という特徴を持っており、独自の三層構造と合わせて、高い圧力分散を実現しました。
一方で、柔らかい寝心地だけではなく、「しっかり身体を支えてほしい」というニーズにも応えるため、2025年にはコイルを使ったモデルも投入しています。
リッチコイルモデルの特徴は、2種類のコイルを上下2層に配置した「ツインリカバリー構造」です。Limneによると、100万円を超えるマットレスでも使われる二層構造を、独自の設計で採用しています。
現在の公式価格はシングルで7万9900円からとなっており、10万円を下回る価格帯で展開している戦略が人気の大きな要因となっています。
今回の「ロングモデル」は、このリッチコイルモデルをベースに長さを15cm伸ばした新商品です。
シングル、セミダブル、ダブルの3サイズを用意し、いずれも長さは210cm。シングルは97×210cm、セミダブルは120×210cm、ダブルは140×210cmとなっています。
2. 開発の背景にあったユーザーのニーズ。意外な悩みもヒントに
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出所:株式会社LIMNE
15cmと聞くと小さな差にも感じますが、睡眠中に身体を伸ばしたときには、意外と無視できない距離なのだといいます。
縦に長いマットレスのニーズとして、分かりやすいのは長身の人でしょう。身長が高ければ、一般的な長さのマットレスでは足元がギリギリになることがあります。人によっては、足がはみ出すというケースも少なくはないでしょう。
実際、Limneでアスリートの顧客などから相談を受ける機会があったといいます。
ただ、今回の開発背景はそれだけではありませんでした。意外なお悩みとして上がったのが「子どもと添い寝するときの快適さ」です。
子どもとの添い寝では、子どもが寝返りなどで動くことで、親がベッドの下方向へ追いやられることがあります。
「自分が角の方に追いやられて『く』の字になる」などの社員の実体験もあり、「横」だけでなく「縦」の余裕も快適な睡眠環境を作る上で必要ということが分かりました。
睡眠中に必要なスペースは、必ずしも「身長+α」だけで決まるわけではありません。枕の位置や寝返り、添い寝などによって、身体が実際に使う範囲は変わります。
Limneは製品開発において、「マットレスに身体を合わせるのではなく、自身の身体や睡眠環境にマットレスを合わせる」という考え方を持っており、そうした方針と合致したことも開発を後押ししたようです。
3. なぜこれまでなかった?マットレスならではの商品開発の難しさ
そもそも、なぜ210cmモデルのマットレスはこれまで日本の市場にあまり出ていないのでしょう。
そこには大型家具であるマットレスならではの商品開発の難しさがあります。日本では195cm前後がマットレスの標準サイズとして定着しており、製造・在庫管理・フレームなどの仕様・売り場の展開はすべて195cmモデルに最適化されています。
210cmモデルの製品開発自体は技術的に難しいわけではありませんが、大手メーカーが取り組むにはさまざまなハードルがあります。その点、LimneはEC販売が中心で市場規模の小さい企画を商品化するのに向いていました。
Limneは自身の開発体制について、「お客様の声や実際の睡眠環境からニーズを捉え、それを比較的スピーディーに商品設計へ反映できる開発体制が強み」と説明しており、ニッチでも明確な悩みのある領域を攻めることができたとのことです。