2. 受け取ったあと、確定申告は必要か

退職所得は他の所得と分離して計算されます。では自分で申告する必要があるのでしょうか。

受け取ったあとの手続きは、LIMOの記事「退職金に確定申告は必要?源泉徴収票の扱いと年末調整の基本ルール」から要点を借りて確認します。

2.1 1枚の書類を出していれば原則不要

結論から確かめます。

同記事によると、退職金の税金は、勤務先へ事前に1枚の書類を提出しておけば源泉徴収によって手続きが完了するため、原則として自分での確定申告は不要となります。

その1枚が退職所得の受給に関する申告書です。国税庁の説明でも、これを提出している人は支払者が税額を計算して支払の際に源泉徴収するため、原則として確定申告は必要ないとされています。

同記事は、退職金の受け取り方や税金ルールへの関心が高まっている背景として、政府が推進する労働市場の流動化や、税制調査会で継続的に議論されている退職所得控除の見直しを挙げています。

2.2 申告書を出していないと一律20.42パーセント

出し忘れた場合の扱いです。

前述の「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出しなかった場合、控除(税金を安くする仕組み)が一切適用されず、退職金の支給額に対して一律「20.42パーセント」の税金が源泉徴収されるというルールになっています。

この場合、本来納めるべき税額よりも多く引かれている可能性が極めて高いため、翌年の2月16日〜3月15日の間にご自身で確定申告を行うことで、正しい税額が再計算され、払いすぎた分が還付されます。

出所:LIMO「退職金に確定申告は必要?源泉徴収票の扱いと年末調整の基本ルール」

控除が一切適用されないという点が重要です。勤続年数がどれだけ長くても、退職所得控除の計算に入る前に支給額全体へ税率が掛かります。

2.3 令和9年以後は税目の内訳が変わる

この20.42パーセントの中身には、先の予定も示されています。

国税庁は、令和8年度税制改正により防衛特別所得税の創設と、復興特別所得税の税率の引下げおよび課税期間の延長が行われ、令和9年以後に適用されるとしています。令和9年以後は、支払者が所得税額、防衛特別所得税額および復興特別所得税額を計算する形になります。

ただし改正前と改正後とで、防衛特別所得税および復興特別所得税の合計税率に変更はなく、源泉徴収税額の計算方法にも変更は生じないと明記されています。引かれる額が変わるわけではなく、内訳が分かれるということです。

2.4 年内に再就職しなかった場合も還付の可能性がある

申告したほうが有利になる場面は他にもあります。

退職した年に再就職しなかった場合、その年の「年末調整」を受ける機会がありません。会社員時代に天引きされていた給与の所得税は、1年間の収入をベースに見込みで引かれているため、年の途中で収入が途絶えた場合は払いすぎになっている場合があります。

出所:LIMO「退職金に確定申告は必要?源泉徴収票の扱いと年末調整の基本ルール」

同記事は、この場合も確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があるとしています。退職金そのものではなく、退職した年の給与に対する精算が残っているためです。

2.5 医療費控除やふるさと納税があるときも申告する

3つ目のケースです。

同記事は、医療費控除や寄付金控除の適用を受ける場合を挙げています。国税庁の説明でも、医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があるとされています。

この場合は退職金の税額を直すためではなく、他の控除を受けるために申告します。そのときに退職所得の金額も書くという順序です。

2.6 源泉徴収票は転職先の年末調整には出さない

書類の扱いにも注意点があります。

同記事によると、退職金の源泉徴収票は、給与の源泉徴収票とは別のものです。給与の源泉徴収票は転職先に提出して年末調整で合算しますが、退職金の源泉徴収票は退職所得として分離して課税が完結しているため、転職先の年末調整では使いません。

使うのは自分で確定申告をするときです。同記事は、確定申告をしないのであれば手元で保管しておく書類だと整理しています。転職先に提出を求められるのは、あくまで前の会社での給与所得の源泉徴収票のみです。

どちらの源泉徴収票なのかを取り違えると、転職先に渡す書類を間違えることになります。表題を確かめて分けておく必要があります。

2.7 源泉徴収票は退職後1か月以内に届き、数年は保管する

いつ届くのかも書かれています。

同記事によると、退職してから1か月以内を目安に、勤務先から退職所得の源泉徴収票・特別徴収票という書類が交付されます。この源泉徴収票には、退職金の総額や天引きされた所得税・住民税の額が記載されています。

原則として確定申告が不要な人にとっては手元に残る控えという位置づけですが、確定申告を行う場合には申告書を作成するための正確な数字を確認する必須書類になります。同記事は、もう税金は引かれているからと破棄せず、少なくとも数年間は保管しておくことをすすめています。

紛失した場合は、前の勤務先に依頼することで再発行が可能だとも書かれています。ただし退職から時間が経つほど連絡が取りにくくなるため、届いた時点で保管場所を決めておくほうが確実です。

3. 金額の出し方と、申告が要るかどうかを分けて確かめる

ここまで、退職所得の計算の仕組みと、受け取ったあとの手続きを見てきました。

計算の側は、収入金額から退職所得控除額を引いて2分の1を掛けるのが原則です。控除額は勤続20年以下が40万円に年数を掛けた額で最低80万円、20年超が800万円に70万円に年数から20年を引いた数を掛けた額を足した額です。端数の月は1年に切り上げ、障害者になったことが原因の退職では100万円が加算されます。前年以前に退職金を受け取っているときや同一年中に2か所以上から受け取るときは、控除額の計算が異なることがあります。

例外は2つで、役員等勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等は2分の1の適用がなく、短期勤続年数が5年以下の短期退職手当等は控除後の額のうち300万円を超える部分に2分の1が適用されません。

手続きの側は、退職所得の受給に関する申告書を出していれば原則として確定申告は不要、出していなければ支給額の20.42パーセントが源泉徴収され、申告により精算します。令和9年以後は税目の内訳に防衛特別所得税が加わりますが、合計税率と計算方法は変わりません。年内に再就職しなかった場合や医療費控除・寄附金控除を受ける場合も申告することになります。自分の勤続年数の数え方や控除額の計算に迷う場合は、税務署の相談窓口にご確認ください。

参考資料

LIMO編集部家計解説班