2. 借りる以外に、返さなくてよい形で負担を軽くする制度もある

生活福祉資金は貸付なので、いずれ返すことが前提です。一方、費用の種類によっては、返済を伴わない軽減や給付が用意されている場面があります。介護施設の費用がその一例です。

返済を伴わない軽減制度と給付の仕組みは、LIMOの記事「老人ホーム費用が払えないときはどうなる?「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」で利用料が4分の1に?自治体公式資料から編集部が整理」から要点を借りて確認します。

2.1 介護施設の費用には利用者負担を軽減する制度がある

まず制度の並びからです。

同記事によると、費用負担を軽くする公的な仕組みとしては、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度と生活保護の介護扶助の2つがあると整理されています。前者は住民税非課税世帯などを対象にした割引制度、後者は生活保護そのものに切り替わった場合の仕組みだという説明です。

同記事によると、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度は、住民税非課税世帯などを対象に、介護サービスの利用者負担や食費・居住費を軽減する制度です。軽減の対象になるのは介護サービスの利用者負担額と食費・居住費だとされています。

生活福祉資金のように借りて返す形ではなく、請求される額そのものが下がる仕組みです。同記事は、この制度の対象と認められた人には軽減確認証が交付され、利用している施設や事業所に提示することで軽減された金額で請求されるようになると書いています。

資産を持ったまま使えるのは真ん中の層で、下の層は資産の活用が前提になる2/2

生活福祉資金の貸付と社会福祉法人等の軽減制度と生活保護の介護扶助について、負担の下がり方・資産の扱い・相談先を並べて比べた表

出所:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」大阪市「社会福祉法人等による利用者負担額軽減制度」などをもとにLIMO編集部作成

2.2 軽減の割合は国の原則があり、実際の率は市町村が決める

4分の1という数字の位置づけを確かめます。

厚生労働省の事業実施要綱では、軽減の程度は利用者負担の4分の1、老齢福祉年金受給者は2分の1を原則とし、免除は行わないとされています。そのうえで、申請者の収入や世帯の状況などを総合的に勘案して市町村が個別に決定し、確認証に記載すると定められています。

実際の率は自治体ごとに置かれます。大阪市の場合、軽減割合は利用者負担額の4分の1で、老齢福祉年金受給者を2分の1とする区分は設けられていません。生活保護受給中の人については、一部のサービスの個室の居住費が全額軽減されます。

2.3 対象になるかは収入と預貯金の基準で判定される

ただし、こちらにも要件があります。

大阪市の公式資料によると、対象になるのは世帯全員が市町村民税非課税で、次の要件をすべて満たす人(および生活保護受給中の人)です。世帯の年間収入が150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円を加算)、世帯の預貯金等の額が350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円を加算)です。

出所:LIMO「老人ホーム費用が払えないときはどうなる?「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」で利用料が4分の1に?自治体公式資料から編集部が整理」

大阪市はこれに加えて、日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと、負担能力のある親族等に扶養されていないこと、介護保険料を滞納していないこと、養護老人ホームに入所していないことも要件に挙げています。このうち最後の1つは国の事業実施要綱にはなく、大阪市が置いているものです。

収入や預貯金の基準額は自治体によって定められているため、示された金額は大阪市の例であり、実際の申請にあたってはお住まいの自治体の基準を確認する必要があるとされています。生活福祉資金の市町村民税非課税程度という目安と同じく、判定は自治体側で行われることになります。

2.4 対象になるサービスは限定列挙になっている

どの施設でも使えるわけではありません。

大阪市が対象に挙げているのは、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護福祉施設サービスなど13のサービスです。特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護は含まれていません。

介護付き有料老人ホームやグループホームの費用を思い浮かべて調べると、対象から外れることになります。加えて、軽減制度を実施している社会福祉法人等の事業所を利用している場合に限られます。

自分が利用している事業所が申し出をしているかどうかは、自治体が一覧を公表しています。施設を選ぶ段階で確かめておく項目になります。

2.5 生活保護に切り替わっても施設を出るとは限らない

軽減制度でも足りない場合の扱いも示されています。

同記事によると、介護保険の被保険者である生活保護受給者は、自己負担部分が生活保護からの給付である介護扶助の対象になります。介護保険で7割から9割がまかなわれたうえで、残りの自己負担分についても介護扶助が給付されるため、実質的な自己負担はなくなるという整理です。

介護扶助の内容は、原則として介護保険と同じ範囲・同じ水準の介護サービスが給付され、給付は原則として現物給付の方法によるため、利用者が費用を立て替えて後から精算する手間もかからないと書かれています。介護扶助を受けようとする場合は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所への申請が必要です。

介護保険の被保険者に該当しない人の場合は、介護扶助が介護サービス費用の10割全額を給付するとも示されています。生活保護に切り替わったからといって直ちに施設を退去しなければならないわけではないという整理です。

2.6 軽減制度と生活保護は資産の扱いが違う

2つの制度は似て見えて、性格が分かれます。

同記事は、軽減制度と生活保護はどちらも住民税非課税水準の世帯を対象にしている点で似ているが、資産をどこまで維持できるかという点で性格が大きく異なると述べています。軽減制度は資産を保有したまま費用を抑えられる仕組みである一方、生活保護は資産の活用が前提になる制度だという整理です。

検討の順番についても、まずは資産を維持したまま利用できる軽減制度の対象になるかを確認し、それでも支払いが難しい場合に生活保護を検討するのが一般的だとしています。

生活福祉資金の側から見ると、借りて返す制度と、資産を維持したまま請求額を下げる制度と、資産の活用を前提に給付を受ける制度の3層があることになります。どの層にいるかで、動く順序が変わります。

2.7 資産を使い切る前に相談するという順序

同記事が繰り返しているのは、動き出す時期の話です。

軽減制度の要件である預貯金額の基準を大きく超えている間は、この制度の対象にはなりません。逆に言えば、資産を使い切ってから初めて動き出すのではなく、費用の支払いに不安を感じ始めた早い段階で、施設の生活相談員やケアマネジャー、自治体の窓口に相談しておくことで、軽減制度と生活保護のどちらが適しているかを、余裕を持って検討できます。

出所:LIMO「老人ホーム費用が払えないときはどうなる?「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」で利用料が4分の1に?自治体公式資料から編集部が整理」

預貯金額が軽減制度の基準に近づいてきた段階であれば、まだ生活保護に至る前の選択肢が残っていると同記事は述べています。基準を下回ってから慌てて申請するのではなく、基準に近づいた時点で相談を始めておくことが、結果的に無理のない選択につながるという整理です。

生活福祉資金の側でも、償還猶予や償還免除の相談先は同じく社会福祉協議会です。返せなくなってから連絡するのではなく、返済に不安を感じた時点で相談するという順序は共通しています。

いずれの制度も、対象になるかどうかの判定は世帯の収入・資産の状況によって細かく分かれると同記事は書いています。自己判断で決めつけず、まずは窓口に相談して確認することが、遠回りに見えて実は最も確実な進め方だという結びです。

3. 借りる制度と軽減する制度を分けて考える

ここまで、生活福祉資金貸付制度の枠組みと、返済を伴わない軽減の仕組みを見てきました。

返済の側は、緊急小口資金等の特例貸付について、住民税非課税による償還免除は申請手続きが必要で、その案内は緊急小口資金・総合支援資金の初回・延長・再貸付それぞれの償還開始前に社会福祉協議会から直接届くため、それまで待つ順序になっているという形でした。住民税非課税以外でも、生活保護を受給中、借受人の死亡や失踪宣告、精神障害者保健福祉手帳の1級または身体障害者手帳の1級もしくは2級の交付、自己破産等に当たる場合は免除の対象になり得ます。

免除に当たらない場合は、償還開始時期を遅らせる償還猶予の制度等が用意されています。転居等で貸付申請時と住所が異なる場合は、貸付申請の手続きをした社会福祉協議会に連絡する必要があります。本則の貸付では、実施主体が都道府県社会福祉協議会で、貸付の決定に当たっては貸付条件に加えて償還可能性の有無が考慮されます。

軽減の側は、介護施設の費用について社会福祉法人等による利用者負担軽減制度が国の原則で4分の1、生活保護の介護扶助が自己負担分を給付するという整理でした。実際の軽減割合と対象サービスは自治体ごとに置かれています。

どの制度に当たるかは世帯の収入と資産の状況で分かれます。貸付についてはお住まいの地域の市区町村社会福祉協議会または生活福祉資金貸付制度のコールセンター、介護費用の軽減や生活保護についてはお住まいの自治体の福祉の担当窓口にご確認ください。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班