1. 8月中旬の高い水準から2割強を吐き出した1カ月
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出所:各種資料をもとに筆者作成
直近1カ月の終値を並べると、株価の重心が段階的に下がってきたことがはっきりする。
8月13日の終値は29,500円。8月17日には31,590円まで上がり、これが終値ベースで直近1カ月の最も高い水準だった。
そこから8月19日には27,505円まで下げ、8月下旬は28,000円台から29,000円台のレンジで推移した。
9月に入ると足取りが変わる。9月1日の28,825円から9月2日には26,340円へ、9月8日には24,905円まで下押しした。9月9日はいったん26,200円へ戻したが、9月10日の終値は24,705円で、直近1カ月では最も低い水準となった。
前日比では5%を超える下げであり、8月17日の水準からは2割強を吐き出した計算になる。
ここで注意したいのは、この下げを同社の個別材料だけで説明しようとしないことだ。1Qの決算内容は、この1カ月の値動きが始まる前にすでに市場へ出ている。9月に入ってからの下げをその決算に紐づけるのは無理がある。
相場全体の地合いや、8月中旬までに切り上がった水準の調整が意識された可能性のほうが高いだろう。株価の理由は、決算資料のどこにも書かれていない。
9月10日時点のPER(株価収益率)は17.67倍、PBR(株価純資産倍率)は3.35倍。非鉄金属というくくりで眺めれば、どちらも低い水準ではない。
2. 1Qの営業利益+84.1%を作ったのは、銅箔と在庫要因だった
2027年3月期1Qの売上高は2,015億円で、前年同期比+19.3%。金額では325億円の増収だ。
営業利益は210億円で、前年同期から96億円増えて+84.1%。会社の説明によると、銅箔の販売量が増加したことに加え、円安の進行や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因が好転したことが、この増益の中身になっている。
経常利益はさらに伸びが大きく234億円、前年同期比+134.3%。営業利益の96億円増に、持分法による投資利益20億円と為替差損益18億円の増加が重なった。特別損益には投資有価証券売却益10億円を計上している。
親会社株主に帰属する四半期純利益は168億円。前年同期は59億円の赤字だったため、227億円の改善である。
ここで増益の質を分けて考えたい。銅箔の販売量が増えたという話は数量の話であり、在庫要因の好転と円安は価格と通貨の位置が変わった話だ。前者は積み上がるが、後者は反転もする。
だからこそ、会社が2027年3月期の通期予想に営業利益940億円、前期比▲28.2%を置いていることが読み解きの鍵になる。売上高は8,500億円で+12.1%、経常利益は1,000億円で▲26.9%、純利益は800億円で▲12.3%。はっきりとした増収減益の予想だ。
1Qの営業利益210億円は、この通期予想に対する進捗率で22.4%にあたる。会社は1Qの追い風が通期では続かないという前提を、自分で数字に織り込んでいるとみるのが自然だろう。
3. 非鉄金属のイメージから外れていく利益率とROE
直近の通期実績も押さえておきたい。2026年3月期は売上高7,585億円で前期比+6.5%、営業利益1,309億円で+75.1%、経常利益1,367億円で+78.9%、純利益912億円で+41.1%だった。
売上高に対する営業利益の比率は17.3%。非鉄金属27社の業種中央値は6.5%であり、2倍を大きく超える水準にある。ROE(自己資本利益率)は24.5%で、こちらも中央値の9.0%を大きく上回る。
この期の環境について、会社は鉛の平均価格が前年同期に比べ下落した一方、亜鉛、インジウム、パラジウム、ロジウムの平均価格は上昇したとしている。半導体市場が堅調で半導体関連製品の販売量が増加し、二輪向け排ガス浄化触媒もインドと中国向け需要が堅調で販売量が増えた。
非鉄金属と聞くと、相場に振られる装置産業というイメージが先に立つ。実際、売上の4割強を占める機能材料は3,195億円で前期比+34.3%、金属は2,902億円で+15.7%と、相場と需要の波を正面から受ける事業構成である。
それでも利益率とROEは、業種の真ん中から遠く離れた場所にある。相場に振られる会社であることと、相場だけでは説明できない収益源を抱えていることは、同時に成立しているのだ。
非鉄金属というラベルを貼った時点で思考を止めないよう気をつけたい。ラベルは業種分類の都合であって、この会社の稼ぎ方の説明ではない。
4. 筆者コメント
なぜ好決算の直後に、株価は水準を切り下げるのか。
答えの半分は、会社が自分の通期計画に置いた前提にあるだろう。1Qの伸びを作った要素のうち、相場と通貨に由来する部分は、次の四半期に同じ方向へ働くとは限らない。会社はその不確かさを織り込んだ数字を通期に置いた。
市場が値付けしているのは、1Qの実績そのものではない。会社の置いた前提が慎重すぎるのか、それとも妥当なのか、という一点だ。ここは決算資料を何度読んでも答えが出ない領域で、だからこそ株価は上下に振れる。
もうひとつ意識したいのは、9月に入ってからの下げが同社だけの事情ではない可能性だ。個別の材料で説明できない値動きを個別の材料に無理に結び付けると、読み筋そのものが歪む。ボラティリティの高い時期には、この歪みが特に起きやすい。
決算の中身と、その日の株価。似た顔をしているが、この2つは別の物差しで測るものだ。私はそう考えている。