4. 「家族葬だから安い」という思い込みが招くトラブル
国民生活センターが2026年6月に公表した「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル―『家族葬だから安い』と思っていませんか?―」によると、葬儀サービスの料金をめぐる相談件数は高止まりが続いており、2025年度は917件。そのうち「高価格・料金」に関する相談が52.6%と半数を超え、依然として根深い問題となっています。
具体的には、「チラシに『一日葬30万円』とあったのに、実際は内訳も異なる約80万円の契約になった」「『家族葬50万円』の表示を見て依頼したところ、見積明細のないまま総額200万円を超える契約をしてしまった」といった事例が報告されています。
相談件数と「高価格・料金」関連の割合の推移
()内は相談件数のうち「高価格・料金」に関するものの割合
- 2019年度:632件(33.2%)
- 2020年度:686件(43.1%)
- 2021年度:800件(50.0%)
- 2022年度:951件(50.9%)
- 2023年度:886件(50.3%)
- 2024年度:978件(49.4%)
- 2025年度:917件(52.6%)
国民生活センターは、こうしたトラブルの背景として「家族葬だから安い」という思い込みそのものに注意を促しており、金額の表示だけでなく内訳まで確認することの重要性を指摘しています。
5. 後悔しないための備え――公営斎場と本人の意向
株式会社NEXERが実施した調査(2026年3月)によると、葬儀費用について「まったく知らなかった」と答えた人は約20.0%にのぼる一方、公営斎場を利用することで費用を抑えられると知った場合に「利用したい」と答えた人は88.0%にのぼりました。
存在は知っていても、民営斎場との料金差までは理解していないというケースは意外と多いようです。
- 葬儀費用を「まったく知らなかった」:約20.0%
- 公営斎場と民営斎場の違いを「よく理解していた」:20.9%
- 費用を抑えられると知れば「利用したい」:88.0%
見積もりの内訳まで確認し、打ち合わせを一人で抱え込まないこと、そして「削ってよい部分」を本人の意向も含めて家族内で言語化しておくこと。この2つを意識するだけでも、いざというときの負担はかなり違ってきます。
式場のグレードや参列者の範囲、祭壇の規模など、優先順位を本人も交えて事前にすり合わせておけば、慌てて高額なプランを選んでしまうリスクを減らせます。説明された金額と実際の請求額が大きく異なるなど不安を感じた場合は、契約前でも国民生活センターの消費者ホットライン「188」に相談できます。
6. まとめにかえて|「話していない」を「話した」に変える、費用というきっかけ
葬儀費用の話は、切り出しにくいテーマの代表格かもしれません。
しかし、「親の貯蓄で賄ってほしい」と思いながら中身を知らないままでいると、いざというとき想定外の負担が自分たちに回ってくるかもしれません。
削ってよい部分・譲れない部分を、本人も交えて一度すり合わせておくこと。それが、金額の多寡以上に、後悔しないための一番の備えになりそうです。
7. 筆者からのコメント
地域によっては、斎場は確保できても火葬場の予約が取れず、思うようなスケジュールにならないことがあります。互助会の積立や事前の心づもりがあっても、「本番」を前にした判断は、驚くほど短い時間で迫られるものです。
筆者自身、両親を見送った際にそれを実感しました。父の命日は正月明けで、葬祭場はおさえられたものの、火葬場は標準価格の炉だと10日待ち、高額な炉であればすぐに空きがある状態でした。保管庫でこれ以上待たせるのも心苦しく、結局は高い炉を選びました。
母のときも、民間・公営を問わずどこも10日待ちでした。とっさに「ではこうしよう」というベストな判断を、家族を亡くしたばかりの状態で冷静に下すのは簡単ではありません。
費用の相場だけでなく、こうした地域の火葬場事情も知っておくだけで、心の準備は変わってくるはずです。
