4. 老齢基礎年金の繰上げを決める前に確かめておきたいこと
繰上げは年金額が減ることばかりが語られますが、寡婦年金との関係も判断材料になります。
4.1 夫の第1号被保険者期間の長さを先に見る
寡婦年金は夫の第1号被保険者期間だけで計算されますので、その期間が短ければ額も小さくなります。自営業の期間がほとんどないご家庭では、繰上げとの比較で悩む場面自体が生じにくくなります。
逆に、夫が長く国民年金の第1号被保険者だったご家庭では、60歳から65歳までの5年間に受け取れる寡婦年金の総額がまとまった金額になります。まずは夫の加入記録を確認するところからです。
4.2 60歳から65歳までの家計をどう組むかで決まる
繰上げを検討するのは、多くの場合60歳から65歳までの収入をどう埋めるかを考えるときです。寡婦年金も同じ期間の給付ですので、この5年間の家計をどう組むかという同じ土俵で比べられます。
就労収入の見通し、預貯金の取り崩し方、そして寡婦年金の額。この3つを並べてから繰上げの可否を判断すると、あとで選び直せない決定を先にしてしまう事態を避けられます。
5. 死亡一時金の請求期限は死亡日の翌日から2年
選択の前提として、死亡一時金には期限がある点も押さえておきましょう。
5.1 2年を過ぎると請求できなくなる
日本年金機構は「死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です」としています。
寡婦年金は妻が60歳になってからの給付ですので、夫を亡くした時点で妻がまだ50歳代であれば、受け取り始めるまでに何年か空くことになります。その間に死亡一時金の2年が過ぎてしまうと、選べる選択肢が実質的に1つに絞られます。
5.2 遺族基礎年金を受けられるときは死亡一時金は出ない
もう1点、死亡一時金には「遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません」という条件があります。
18歳になった年度の3月31日までにある子がいるご家庭では、まず遺族基礎年金が支給されますので、死亡一時金の対象にはなりません。子の年齢によって、選択の場面そのものが変わってきます。
6. まとめ
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間などが10年以上ある夫が亡くなったとき、10年以上婚姻関係にあった妻に、60歳から65歳になるまで支給されます。額は夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3です。
ただし、妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けているときは支給されません。夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受けたことがあるときも同じです。
死亡一時金と両方を受け取れる場合は、どちらか一方を選ぶことになります。60歳からの家計をどう組むかとあわせて、年金事務所で自分のケースを確かめておくと判断しやすくなります。
参考資料
村岸 理美