「控除」という言葉は、年末調整の書類でも確定申告の画面でも目にします。ただ、どこがどう減るのかまでは意識しないまま過ごしがちです。
2026年8月5日に閣議決定された「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針は、税額控除と給付の組合せとすることについて、将来的に給付のみと決め打ちすることなく検討を継続するとしています。制度の名前に「税額控除」と「給付」の両方が入っているのは、この2つが別の仕組みだからです。
この記事では、所得控除・税額控除・給付の3つが何をどう減らすのかを、国税庁の資料にそって見ていきましょう。
なお、給付付き税額控除の仕組みについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 所得控除・税額控除・給付は、どこを減らすかが違う
3つとも手元に残るお金を増やす働きをしますが、税金の計算のどの段階で効くのかが違います。
1.1 所得控除は課税所得を減らす
国税庁の説明では、所得控除は所得税額を計算するうえで、社会政策上の要請によるもの、各納税者の個人的事情への考慮や最低生活費を保障するためのものなど、税負担面での調整を行う趣旨から設けられています。
各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引き、その残りの金額を基礎として所得税額が計算されます。
種類は、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除、基礎控除です。
1.2 税額控除は計算した所得税額から直接差し引く
一方の税額控除は、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。
所得控除が税率をかける前の金額を減らすのに対して、税額控除は税率をかけたあとの税額を減らします。この違いが、あとで見る金額の差につながります。
3つは税金の計算のどの段階で効くのかが違います1/2
出所:国税庁「所得控除のあらまし」「税額控除」を参考にLIMO編集部作成
2. 所得税の税率は5%から45%の7段階に区分されている
所得控除の効き方を見る前に、所得税の税率を確認しておきます。
2.1 速算表を使って税額を求める
所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5%から45%の7段階に区分されています。
課税される所得金額に対する所得税の額は、国税庁が示す速算表を使うと求められます。課税される所得金額は1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。
2.2 課税所得700万円なら所得税は97万4000円
たとえば課税される所得金額が700万円の場合、税率は23%、控除額は63万6000円です。
700万円に0.23を乗じて63万6000円を差し引くと、所得税の額は97万4000円になります。
課税される所得金額によって適用される税率が変わります2/2
出所:国税庁「所得税の税率」を参考にLIMO編集部作成
3. 同じ10万円でも、所得控除は税率によって効き方が変わる
速算表を見ると、所得控除と税額控除の差がはっきりします。
3.1 所得控除10万円の効果は税率5%で5000円、45%で4万5000円
所得控除は課税される所得金額そのものを減らします。減った分に税率がかかるので、軽くなる所得税は控除額に税率を乗じた金額です。
10万円の所得控除が増えた場合、税率5%の区分にいる人は5000円、20%の区分にいる人は2万円、45%の区分にいる人は4万5000円だけ所得税が軽くなります。ここでは所得税だけを見ており、復興特別所得税は考えていません。
3.2 税額控除10万円なら税率にかかわらず10万円
税額控除は、所得税額を計算した後、その税額から直接10万円を差し引く仕組みです。
税率が5%の人でも45%の人でも、控除できるだけの所得税額があれば、控除額は同じ10万円です。所得控除のように税率によって税負担の軽減額が変わらない点が、税額控除の特徴です。
ただし、所得税額が10万円に満たない場合は、実際に差し引けるのはその所得税額までです。たとえば所得税額が3万円なら、10万円の税額控除があっても差し引けるのは3万円となります。
銀行の窓口では、控除の話になると「いくら戻るのか」に関心が集まりがちでした。
控除額そのものと、実際に軽くなる税額は別の数字です。所得控除なのか税額控除なのかを見分けるだけで、期待する金額のずれが小さくなります。

