認知症などで判断能力が衰えたとき、本人の預金は動かせなくなることがあります。
最高裁判所事務総局家庭局によると、令和7年に成年後見制度の申立てをした動機で最も多かったのは預貯金等の管理・解約で、3万9871件(93.4%)でした。申立件数の合計は4万3159件です。
この記事では申立ての動機と件数の内訳、誰が後見人に選ばれているのかを確認したうえで、預金を作る側の年代の実態を見ていきます。
1. 【成年後見制度】判断能力が衰えると、預金が動かせなくなる
成年後見関係事件とは、後見開始、保佐開始、補助開始および任意後見監督人選任事件のことです。最高裁判所は毎年、全国の家庭裁判所での処理状況を取りまとめています。
法務省の説明によると、法定後見制度は本人の判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の3つに分かれます。判断能力が欠けているのが通常の状態であれば後見、著しく不十分であれば保佐、不十分であれば補助が用いられます。
1.1 申立ての動機は預貯金等の管理・解約が最多
まず、何のために申し立てられているのかを見ます。
最高裁判所事務総局家庭局は、主な申立ての動機として預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで身上保護となっているとしています。件数は預貯金等の管理・解約が3万9871件で、終局事件総数を母体とした割合は93.4%です。
1件の終局事件について主な申立ての動機が複数ある場合があるため、動機の総数は終局事件総数の4万2674件とは一致しません。それでも9割を超える事件で、預貯金を動かすことが動機に挙がっているということになります。
申立ての動機は預貯金等の管理・解約が93.4%で最多。後見人に選ばれるのは親族が16.4%1/2
出所:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」をもとにLIMO編集部作成
1.2 身上保護、介護保険契約、不動産の処分と続く
2番目以降の動機も公表されています。
身上保護が3万1655件(74.2%)、介護保険契約が1万9502件(45.7%)、不動産の処分が1万5502件(36.3%)、相続手続が1万909件(25.6%)、保険金受取が7578件(17.8%)と続きます。訴訟手続等は2613件(6.1%)、その他は3147件(7.4%)です。
上位に並ぶのは、いずれも本人に代わって契約や手続をしなければならない場面です。預貯金の管理と身上保護という2つが、制度が使われる主な理由になっています。
1.3 申立件数は4万3159件で3年連続の増加
件数は増え続けています。
令和7年の申立件数は合計で4万3159件で、前年の4万1841件から約3.2%の増加でした。過去5年の総数は、令和3年3万9809件、令和4年3万9719件、令和5年4万951件、令和6年4万1841件、令和7年4万3159件と推移しています。
令和4年に一度前年を下回りましたが、その後は3年続けて増えています。終局事件4万2674件のうち、認容で終局したものは約95.1%(前年は約95.0%)です。
1.4 内訳は後見開始が2万9233件
4つの類型ごとの数字も出ています。
後見開始の審判の申立件数は2万9233件(前年2万8785件)で約1.6%の増加、保佐開始は9743件(前年9156件)で約6.4%の増加、補助開始は3302件(前年3026件)で約9.1%の増加、任意後見監督人選任は881件(前年874件)で約0.8%の増加です。
件数では後見開始が全体の3分の2を超えます。一方、伸び率で見ると補助開始が約9.1%、保佐開始が約6.4%と、判断能力の低下が比較的軽い類型のほうが大きく伸びています。
1.5 開始原因の6割は認知症
なぜ制度が必要になるのかも集計されています。
開始原因としては認知症が最も多く全体の約61.3%を占め、次いで知的障害が約9.6%、統合失調症が約9.3%の順です。高次脳機能障害が4.4%、遷延性意識障害が0.5%、その他が14.9%となっています。
6割が認知症ということは、多くの場合、それまで自分で預金を管理してきた人が管理できなくなる場面を指しているということになります。
1.6 本人は80歳以上が多く、女性では63.1%
年齢の分布も偏っています。
本人の男女別割合は男性が約44.5%、女性が約55.5%です。男性では80歳以上が最も多く全体の約34.5%、次いで70歳代の約28.1%です。女性では80歳以上が約63.1%、次いで70歳代の約18.8%となっています。
本人が65歳以上の者は、男性では男性全体の約71.3%、女性では女性全体の約85.8%を占めます。女性のほうが高齢に偏っているのが特徴です。
1.7 後見人に選ばれるのは親族が16.4%
誰が選任されるのかは、意外な結果です。
成年後見人等と本人との関係をみると、配偶者、親、子、兄弟姉妹およびその他親族が選任されたものが全体の約16.4%(前年は約17.1%)、親族以外が選任されたものが約83.6%(前年は約82.9%)でした。関係別件数の合計4万2732件のうち、親族が7014件、親族以外が3万5718件です。
親族以外の主な内訳は、司法書士1万1966件、弁護士8903件、社会福祉士7280件、市民後見人390件です。なお、親族が成年後見人等の候補者として各開始申立書に記載されている事件の割合は約19.7%でした。候補者として挙げていても、選任されるとは限らないということになります。
1.8 鑑定を実施したのは3.4%、費用は10万円以下が8割超
手続にかかる負担も公表されています。
終局事件のうち鑑定を実施したものは全体の約3.4%(前年は約3.8%)でした。鑑定の期間は1か月以内のものが最も多く約52.6%、費用は5万円以下のものが約43.7%を占め、全体の約85.8%の事件で鑑定費用が10万円以下でした。
令和7年12月末日時点の利用者数は合計で25万9901人(前年は25万3941人)で、対前年比約2.3%の増加です。うち成年後見の利用者数は18万828人(前年は17万9373人)です。ご家族の預金の管理に不安がある場合は、家庭裁判所や市区町村の相談窓口にご相談ください。
なお、預金を作っている年代の家計に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

