10月1日から、地域別最低賃金の改定額が順次発効します。

厚生労働省によると、令和8年度の改定額の全国加重平均額は1177円です。ただし自分の賃金がこの額を満たしているかどうかは、給与明細の総額をそのまま時間で割って比べるわけではありません。

この記事では誰に適用されるのかと、計算に入らない賃金を確認したうえで、手取りのうちどれだけが手元に残っているのかを見ていきます。

1. 【最低賃金】満たしているかどうかを確かめる手順

最低賃金は時間額で定められています。まず令和8年度の改定額を押さえたうえで、比べ方に進みます。

1.1 令和8年度の改定額は全国加重平均1177円

出発点は改定額です。

厚生労働省が令和8年9月3日に公表した取りまとめによると、令和8年度の改定額の全国加重平均額は1177円でした。昨年度は1121円だったため、引上げ額は56円です。47都道府県での引上げ額は54円から65円に分かれ、最も多いのは56円の11道県でした。最高額は東京都の1280円、最低額は宮崎県の1085円です。

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、令和8年10月1日から令和8年12月2日までの間に順次発効される予定です。自分の都道府県の額と発効日は、厚生労働省の最低賃金早見表で新旧の両方を確認できます。

賞与と残業代は計算に入らない。月給は1か月平均所定労働時間で割って比べる1/2

最低賃金の適用対象と対象とならない賃金6つ、時間額への換算方法、令和8年度の改定額を示した図

出所:厚生労働省「ポイント!最低賃金 最低賃金のチェック方法は?」などをもとにLIMO編集部作成

1.2 パートやアルバイトも呼称に関係なく適用される

誰に適用されるのかは広く決まっています。

厚生労働省は、地域別最低賃金はパートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されるとしています。産業や職種も問いません。

各都道府県に1つずつ、全部で47件の地域別最低賃金が定められています。発効日を過ぎれば、その都道府県の事業場で働く人の時間額は改定後の額を下回ってはならないことになります。

1.3 派遣で働くなら、適用されるのは派遣先の最低賃金

働く場所で判定が変わる場合があります。

厚生労働省は、派遣労働者には派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されるとしています。派遣会社の使用者は、派遣労働者に対して派遣先の事業場に適用される最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

つまり住んでいる県でも、派遣会社がある県でもなく、実際に働きに行っている事業場の県の額が基準になります。都道府県によって時間額は違うため、この違いは金額に直結します。

1.4 特定(産業別)最低賃金は全国で224件

地域別とは別の最低賃金もあります。

厚生労働省によると、最低賃金には各都道府県に1つずつ定められた地域別最低賃金と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた特定(産業別)最低賃金の2種類があります。特定(産業別)最低賃金は地域別最低賃金よりも高い金額水準で定められており、全国で224件です(令和6年3月末現在)。

両方が同時に適用される労働者には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。ただし特定(産業別)最低賃金は、18歳未満または65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満の技能習得中の方、その他その産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されないとされています。

1.5 賞与や残業代は最低賃金の計算に入らない

比べる対象になる賃金は限られています。

厚生労働省は、最低賃金の対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金だとしています。実際に支払われる賃金から除外されるのは、臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)、所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)、午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)、そして精皆勤手当、通勤手当および家族手当の6つです。

残業代やボーナスは含まれません。総額が増えたように見えても、最低賃金を満たしているかどうかの判定にはこれらを入れないということです。

1.6 月給なら1か月平均所定労働時間で割って比べる

換算の式も示されています。

厚生労働省によると、時間給の場合はその額をそのまま最低賃金額(時間額)と比べます。日給の場合は日給を1日の所定労働時間で割った額、月給の場合は月給を1か月平均所定労働時間で割った額を使います。出来高払制その他の請負制の場合は、計算された賃金の総額をその期間に働いた総労働時間数で割った額で比べます。

同じ資料の例では、月給22万円のうち通勤手当5000円と時間外手当3万5000円を除いた18万円について、年間労働日数250日・1日8時間として時間額に換算すると1080円になります。総額のままだと判定を誤ることが分かります。

1.7 日給と月給が混ざっていたら換算して合計する

賃金の形が組み合わせのこともあります。

基本給が日給制で各手当が月給制といった場合は、それぞれを時間額に換算して合計した額と最低賃金額を比べます。厚生労働省の例では、日給6000円を1日8時間で割った750円と、月給の職務手当2万5000円を時間額に換算した150円を足して900円となり、時間額950円を下回るという計算が示されています。ここでも通勤手当5000円は対象外として除かれています。

形が混ざっているほど、総額の印象と換算後の額はずれやすくなります。計算方法の詳細は、最寄りの都道府県労働局労働基準部の「賃金課」または「賃金室」もしくは労働基準監督署に問い合わせるよう案内されています。

1.8 労働局長の許可があれば減額される特例もある

例外の枠も定められています。

厚生労働省は、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれがあるため、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額の特例が認められているとしています。

対象は、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方、試の使用期間中の方、基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方、軽易な業務に従事する方、断続的労働に従事する方の5つです。許可がない減額は認められません。

1.9 使用者には掲示などによる周知義務がある

知らせる側の義務もあります。

最低賃金法は、最低賃金の適用を受ける使用者に対し、当該最低賃金の概要を常時作業場の見やすい場所に掲示するか、その他の方法で労働者に周知させる措置をとるよう求めています。周知すべき事項は、適用を受ける労働者の範囲、最低賃金額、算入しない賃金、そして効力発生日です。

最低賃金は時間額で決まるため、実際に受け取る月の収入は働いた時間数しだいです。では、そこから税金や社会保険料を引いたあと、どれだけが手元に残っているのか。総務省の家計調査に実態値があります。

なお、可処分所得に対する黒字率の実態や年代別の差に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

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