「介護費用シミュレーション」と検索すると、いくつものツールやページが表示されます。しかし、実際に自分の条件を入力して試算できる本格的なツールと、単に費用の事例を紹介しているだけのページが混在しており、見分けがつきにくいのが実情です。介護が必要になったとき、多くの人がまず知りたいのは「自分の場合、月にいくらかかるのか」という具体的な金額です。
この記事では、厚生労働省が公開する公式の「介護サービス情報公表システム」の概算料金試算機能の使い方を、編集部が操作手順に沿って整理します。
1. 「介護費用シミュレーション」の多くは、事例紹介にとどまる
介護費用のシミュレーションを探していると、施設や金融機関が公開しているページにたどり着くことがあります。しかし、その多くは「独身で賃貸」「要介護1の単身者」といった、あらかじめ用意されたパターン別の費用事例を紹介しているだけで、自分の条件を入力して試算できる仕組みにはなっていません。
「シミュレーション」という名前がついていても、実際には静的な事例紹介にとどまるページが多いという点は、あまり知られていません。本当に自分の要介護度やサービス内容を入力して試算したい場合は、厚生労働省や各自治体など、公的機関が提供するツールを使う必要があります。
2. 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」で試算する方法
厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」には、自分の要介護度やサービス内容を入力して、1か月の費用を試算できる公式の機能があります。誰でも無料で利用でき、会員登録なども必要ありません。
2.1 ステップ1〜2:分類と要介護度を選ぶ
まず「自宅に住む」か「施設に住む」かの分類を選びます。次に、要支援1・2、または要介護1〜5のうち、該当する要介護度を選択します。
2.2 【介護サービス情報公表システムの試算手順】
- ステップ1:「自宅に住む」または「施設に住む」を選択します
- ステップ2:要支援1・2または要介護1〜5を選択します
- ステップ3:利用可能なサービスの中から希望するものを選びます
- ステップ4:月の利用回数や利用日数を入力します
- ステップ5:1か月の費用試算額と自己負担額の目安が表示されます
このように、分類・要介護度・サービス内容・利用頻度という4つの項目を順番に選んでいくだけで、専門知識がなくても概算の費用を確認できる仕組みになっています。
3. 【編集者の視点】
公的機関が無料で提供している試算ツールがあることは、意外と知られていません。
民間の事例紹介ページだけを見て「うちの場合はどのくらいかかるのだろう」と悩む前に、まずこの公式ツールで自分の条件を入力してみることをおすすめします。
※本記事は、編集部が厚生労働省の公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
4. ステップ3〜5:サービス内容と利用頻度を入力し、結果を確認する
要介護度を選ぶと、その要介護度で利用できる介護サービスの一覧が表示されます。訪問介護、通所介護(デイサービス)など、希望するサービスを選び、それぞれのサービスに応じた単位(月の利用回数や利用日数など)で頻度を入力します。
すべての項目を入力すると、1か月にかかる介護サービス費用の試算額と、負担割合(1割・2割・3割)に応じた自己負担額の目安が自動で計算されます。複数のサービスを組み合わせた場合の合計額も、まとめて確認できます。
4.1 試算額はあくまで全国平均、地域差がある点に注意
厚生労働省の説明によると、この試算額は「全国の利用実績の平均値を用いた概算」です。実際の費用は、事業所の所在地による地域区分や、個別の契約条件によって変わるため、あくまで目安として捉える必要があります。
「試算額どおりの金額になるはず」と思い込んでいると、実際の請求額との差に戸惑うことがあります。正確な金額を知りたい場合は、試算結果を参考にしつつ、担当のケアマネジャーに確認することをおすすめします。
厚生労働省の資料によると、地域区分は1級地から7級地・その他の8区分に分かれており、地価や人件費が高い地域ほど1単位あたりの単価が高く設定されています。同じサービス内容・同じ利用回数でも、住んでいる地域によって実際の費用は変わってきます。
4.2 負担割合(1割・2割・3割)によって自己負担額は大きく変わる
試算結果には、負担割合別の自己負担額もあわせて表示されます。介護保険の自己負担割合は原則1割ですが、65歳以上で一定以上の所得がある場合は2割・3割になります。自分がどの負担割合に該当するかは、市区町村から交付される「介護保険負担割合証」で確認できます。
4.3 【介護サービス費用試算・負担割合別の自己負担額の目安】
- 1割負担の場合、自己負担は1万円です
- 2割負担の場合、自己負担は2万円です
- 3割負担の場合、自己負担は3万円です
※実際の自己負担額には所得に応じた月額上限(高額介護サービス費制度)が適用されますが、本試算(10万円利用時)では上限を超えないため、負担割合どおりの計算となっています。
同じサービス内容・同じ利用回数でも、負担割合が変わるだけで自己負担額は2倍にも3倍にもなります。試算ツールを使う前に、自分の負担割合を「介護保険負担割合証」で確認しておくと、より正確な見通しを立てられます。
5. 【編集者の視点】
試算ツールは便利ですが、あくまで概算を知るための道具です。
実際の請求額は、事業所ごとの加算やサービスの組み合わせによっても細かく変わります。
試算結果を家族と共有し、早めに今後の方針を話し合っておくことをおすすめします。
6. 試算結果を家族と共有するときの伝え方
試算ツールで確認した金額は、そのまま数字だけを家族に伝えても、実感がわきにくいことがあります。「月額〇万円」という総額だけでなく、どのサービスをどのくらいの頻度で使う前提の試算なのかもあわせて共有すると、家族間での認識のズレを防ぎやすくなります。
特に、遠方に住む家族と費用負担を相談する場合は、試算画面のスクリーンショットを共有するなど、具体的な根拠を示しながら話し合うと、感情的な対立を避けやすくなります。「なんとなく高そう」という漠然とした印象だけで話を進めると、後から金額感のズレが表面化しやすいためです。費用負担の話し合いは先送りにしがちですが、早めに具体的な数字を共有しておくことが、後々のトラブルを防ぐことにつながります。
6.1 複数のケアマネジャーに相談する場合も、試算結果が共通の土台になる
施設探しや在宅介護の計画を立てる際、複数のケアマネジャーや居宅介護支援事業所に相談することもあります。その際、あらかじめ公式ツールで試算した金額を共通の土台として提示しておくと、各担当者からの提案を比較しやすくなります。
「相談先によって言うことが違う」と感じる場合、その背景には前提条件の違いがあることが少なくありません。試算ツールで確認した具体的な条件(要介護度・サービス内容・利用頻度)を毎回同じように伝えることで、比較の精度が上がります。
試算結果を印刷して持参したり、スクリーンショットを保存しておいたりすると、相談のたびに条件を口頭で説明し直す手間も省けます。特に、複数の家族が別々に相談に同席する場合は、共通の資料があることで話がかみ合いやすくなります。
7. 要介護度を変えて試算すると、将来の費用の見通しが立てやすい
このツールのもう一つの活用方法は、要介護度を変えて複数パターンを試算し、比較することです。現在の要介護度だけでなく、今後要介護度が上がった場合を想定して試算しておくと、将来の費用の見通しが立てやすくなります。
介護費用の総額をより幅広く把握したい場合は、介護費用は総額いくらかかるか、一時費用・月額・期間の試算を整理した別記事もあわせて確認してみてください。月々の費用だけでなく、施設への入居一時金なども含めた全体像をつかむ材料になります。
8. 試算前にケアプランの内容を大まかに把握しておくとスムーズ
試算ツールを使う前に、担当のケアマネジャーが作成したケアプラン(介護サービス計画書)の内容を大まかに把握しておくと、入力作業がスムーズに進みます。ケアプランには、利用予定のサービスの種類や、週・月あたりの利用回数の目安が記載されています。
ケアプランがまだ決まっていない段階でも、希望するサービスの種類と、おおよその利用頻度を仮に設定して試算することで、大まかな費用感をつかむことができます。実際にケアプランが確定した後、あらためて正確な条件で試算し直すとよいでしょう。仮の条件と確定後の条件を見比べることで、想定とのズレにも早めに気づけます。
9. 試算ツールで見えない費用も、あわせて確認しておく
この試算ツールは、あくまで介護保険サービスの利用にかかる費用を対象にしています。実際には、介護保険の対象外となる費用も家計に大きく影響します。試算結果を見るときは、この範囲外の費用があることも念頭に置いておく必要があります。
例えば、施設に入居する場合の食費・居住費、在宅介護で使う紙おむつなどの消耗品費、住宅改修費のうち補助対象を超えた自己負担分などは、この試算には含まれません。試算額だけを見て「思ったより安い」と安心してしまうと、実際の総支出との差に後から気づくことになります。
9.1 試算額は「サービス利用料」、総費用はそれ以上になることを前提に考える
介護にかかる総費用を把握したい場合は、このツールで確認できる「介護サービス利用料」に、食費・居住費・消耗品費・住宅改修費などの介護保険対象外の費用を上乗せして考える必要があります。試算ツールの結果は、あくまで総費用の一部であるという前提を忘れないようにしましょう。
「公的なツールで試算したのだから、これが総費用のはず」と思い込んでしまうと、実際の家計への影響を過小評価してしまう可能性があります。試算結果はスタート地点として活用し、そこに含まれない費用も別途洗い出しておくことが、正確な見通しを立てる鍵になります。
介護保険対象外の費用は、施設や地域によって金額の幅が大きく、一律の目安を示しにくい部分でもあります。気になる施設がある場合は、見学時に食費・居住費の具体的な金額を直接確認しておくと、試算結果とあわせてより正確な総費用を把握できます。複数の施設を見学し、費用面での違いを比較しておくことも、後悔のない選択につながります。
10. まとめ
- 「介護費用シミュレーション」と名の付くページの多くは、あらかじめ用意された事例を紹介するだけで、自分の条件を入力して試算できる仕組みではありません
- 厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」には、無料で使える公式の試算機能があります
- 分類・要介護度・サービス内容・利用頻度を順番に選ぶだけで、専門知識がなくても概算費用を確認できます
- 試算額はあくまで全国平均であり、実際の費用は地域や契約条件によって異なる点に注意が必要です
介護費用の見通しを立てたいとき、事例紹介のページだけを見て漠然と不安を抱えるより、公式のツールで自分の条件を実際に入力してみる方が、具体的な目安をつかみやすくなります。要介護度や利用するサービスが変わるたびに、何度でも無料で試算し直せる点も、この公式ツールならではの強みです。
試算結果はあくまで目安として捉え、正確な金額は担当のケアマネジャーに確認する、という使い分けを意識しておくと安心です。介護保険対象外の費用もあわせて洗い出しておけば、家計への影響をより正確に見通せます。
11. よくある質問
11.1 Q. このシミュレーションツールは誰でも無料で使えますか。
A. はい。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」は、会員登録などをせず、誰でも無料で利用できます。
11.2 Q. 試算した金額はそのまま実際の請求額になりますか。
A. いいえ。試算額は全国の利用実績の平均値による概算です。実際の費用は地域区分や個別の契約条件によって異なります。
11.3 Q. 複数のサービスを組み合わせた場合も試算できますか。
A. はい。利用したいサービスを複数選んで頻度を入力すれば、合計の費用試算額を確認できます。
11.4 Q. 要介護度が変わった場合の試算もできますか。
A. はい。要介護度を変えて再度試算することで、将来要介護度が上がった場合の費用の見通しを立てることができます。
11.5 Q. 試算結果には食費や居住費も含まれますか。
A. 含まれません。このツールで試算できるのは介護保険サービスの利用料のみです。施設の食費・居住費や消耗品費などは別途かかります。
11.6 Q. 住宅改修費やおむつ代なども試算に含まれますか。
A. 含まれません。住宅改修費の自己負担分や紙おむつなどの消耗品費は、介護保険サービスの利用料とは別に、実費で確認しておく必要があります。
11.7 Q. ケアプランが決まっていなくても試算できますか。
A. はい。希望するサービスの種類と、おおよその利用頻度を仮に設定すれば試算できます。ケアプランが確定した後に、あらためて正確な条件で試算し直すことをおすすめします。
11.8 Q. 試算結果を印刷したり保存したりできますか。
A. 画面をスクリーンショットで保存したり、ブラウザの印刷機能を使って印刷したりすることで、試算結果を手元に残すことができます。家族やケアマネジャーとの相談時に活用しやすくなります。
11.9 Q. 施設入居と在宅介護、どちらで試算すればよいですか。
A. 検討している選択肢に応じて両方を試算し、比較することをおすすめします。分類の選択肢を切り替えるだけで、それぞれの費用感を確認できるため、迷っている段階でも気軽に試すことができます。
参考資料
齊藤 慧
