遺族厚生年金を受け取っている方のなかには、65歳を境に金額の内訳が変わることを知らずにいる方もいるのではないでしょうか。
40歳から65歳になるまでの間に上乗せされる中高齢寡婦加算は、65歳になると終わります。その代わりに、一定の生年月日に生まれた妻には経過的寡婦加算が支給されます。
この記事では、日本年金機構の令和8年度版の資料をもとに、遺族年金の基本の額をおさえたうえで、65歳の前後で上乗せがどう入れ替わるのかを確認していきましょう。
1. まず遺族年金の基本の額を確認する
加算の話に入る前に、土台になる遺族基礎年金と遺族厚生年金の額をおさえておきます。
1.1 遺族基礎年金は年84万7300円に子の加算がつく
遺族基礎年金の額は、令和8年度で年84万7300円(※)です。
ここに子の加算額が上乗せされ、1人目と2人目の子は各24万3800円、3人目以降の子は各8万1300円となります。
子が2人いる場合は、84万7300円に24万3800円を2人分足して年133万4900円です。
※昭和31年4月1日以前生まれの方は、年84万4900円
1.2 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算する
遺族厚生年金の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3にあたる額です。
平成15年3月以前の加入期間は1000分の7.125、平成15年4月以後の加入期間は1000分の5.481という給付乗率を使って計算します。
亡くなった方の給与の水準と加入期間によって金額が決まる仕組みです。
2. 40歳から65歳になるまでは中高齢寡婦加算が年63万5500円上乗せされる
遺族厚生年金を受け取る妻には、一定の条件を満たすと中高齢寡婦加算がつきます。
2.1 対象になるのは2つのケース
1つ目は、夫が死亡したときに妻が40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子がいない場合です。
2つ目は、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取っていた「子のある妻」が、子が18歳になった年度の3月31日に達したために遺族基礎年金を受け取れなくなった場合です。子が障害の状態にある場合は20歳に達したときになります。
ただし2つ目のケースは、40歳に達した当時に子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻に限られます。
2.2 加算額は年63万5500円
中高齢寡婦加算の額は、令和8年度で年63万5500円です。
40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に上乗せされます。
なお、亡くなった方が老齢厚生年金の受給権者だった場合などは、厚生年金保険の加入期間が20年以上ないと中高齢寡婦加算は加算されません。中高齢の期間短縮の特例などで20年未満の加入期間で受給資格期間を満たした方は、その期間が基準になります。
3. 65歳からは「経過的寡婦加算」に切り替わる
中高齢寡婦加算は65歳で終わります。ここからが本題です。
3.1 対象は昭和31年4月1日以前に生まれた妻
昭和31年4月1日以前に生まれた妻が、遺族厚生年金を受け取れるようになった当時に65歳以上だったとき、または中高齢寡婦加算を受け取っている方が65歳になったときは、中高齢寡婦加算が経過的な加算額に変わります。
この加算が経過的寡婦加算です。
昭和31年4月2日以後に生まれた妻には、この加算はありません。
3.2 額は生年月日に応じて減っていく
経過的寡婦加算の額は、生年月日が新しくなるほど少なくなります。
令和8年度の額でいうと、大正15年4月1日以前に生まれた方は年63万3700円です。
昭和21年4月2日から昭和22年4月1日までに生まれた方は年21万1250円、いちばん新しい昭和30年4月2日から昭和31年4月1日までに生まれた方は年2万1147円になります。
経過的寡婦加算の令和8年度の年額。大正15年4月1日以前生まれの63万3700円から、昭和30年4月1日生まれの2万1147円まで下がる1/2
出所:日本年金機構『年金給付の経過措置一覧表』を参考にLIMO編集部作成
4. 65歳の前後で受け取り方はどう変わるか
金額の内訳を並べると、65歳で何が入れ替わるのかが見えてきます。
4.1 上乗せが1つから2つに分かれる
65歳になるまでは、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算の年63万5500円が上乗せされる形です。
65歳からは、この上乗せが経過的寡婦加算と本人の老齢基礎年金の2つに分かれます。
経過的寡婦加算は、本人の老齢基礎年金と合わせたときに中高齢寡婦加算に見合う水準になるよう、生年月日ごとに設定されています。
65歳で名前が変わる加算は、通知の合計額だけを見ていると入れ替わりに気づきにくいところです。生年月日で額が決まる仕組みなので、あらかじめ表で見当をつけておくと戸惑わずにすみます。
