4. キヤノンやニコンはミラーレスへ。PENTAXとの違いが際立つ
競合メーカーの動きを見ると、PENTAXの方向性がより明確になります。
キヤノン株式会社は、一眼レフの「EOS」シリーズで長年にわたり世界市場を牽引してきました。2026年2月の発表では、2003年から2025年まで23年連続でレンズ交換式デジタルカメラの世界シェア1位を達成したとしています。
現在の主要製品は「EOS Rシステム」を中心としており、2024年には同システム初のフラッグシップとなるフルサイズミラーレス「EOS R1」を発売しています。
株式会社ニコンも、2022年の中期経営計画で、映像事業について「高付加価値製品とミラーレスカメラに経営資源を集中する」と説明しています。Zマウントのレンズラインアップを拡充する方針も掲げています。
実際、2026年にはフルサイズ/FXフォーマットのミラーレスカメラに対応する「NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1」や「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S II」を発売しています。
キヤノン株式会社が「EOS R」、株式会社ニコンが「Z」、株式会社ソニーが「α」を主力とするなか、PENTAXはKマウントと一眼レフを軸に独自路線を取っています。
5. なぜPENTAXは一眼レフを続けるのか
では、ミラーレスが主流となった市場で、PENTAXはなぜ一眼レフを続けるのでしょうか。
一つの理由として考えられるのが、競合メーカーとは異なる価値を打ち出しやすいことです。
キヤノン株式会社や株式会社ニコン、株式会社ソニーと同じようにミラーレスの高性能化を追求すれば、AF性能や高速連写、動画性能、レンズラインアップなど、多くの項目で競争することになります。
一方、PENTAXは一眼レフの長い歴史やKマウントのレンズ資産を持ちます。
今回の発表でも、同社は「写真を撮ることの価値」を見つめ直し、「撮影という行為そのものを愉しんでいただける製品」の開発を進めていると説明しています。
一眼レフという方式そのものを残すことが、PENTAXらしい撮影体験を打ち出すための手段になっていると考えられます。
6. Kマウントを残すことにも意味がある
今回の発表でもう一つ注目したいのが、Kマウントのレンズ資産を新製品でも生かすことです。
Kマウントは、PENTAXが長年にわたって展開してきたレンズマウントです。
カメラではボディを買い替えても、レンズは長く使い続けるケースがあります。そのため、既存ユーザーが所有するKマウントレンズを新しいボディでも活用できることは、買い替えのハードルを下げる要素になります。
PENTAXにとっても、長年にわたって蓄積してきたレンズとユーザーを次の製品へつなげられる点は大きいでしょう。
新型一眼レフの詳細はまだ明らかになっていませんが、Kマウントを維持することは、既存ユーザーとの関係を次世代製品へ引き継ぐうえでも重要なポイントになりそうです。
7. フィルムカメラにも見える「撮る体験」重視
PENTAXの方向性を考えるうえでは、フィルムカメラへの取り組みも参考になります。
リコーイメージング株式会社は2022年に「PENTAXフィルムカメラプロジェクト」を開始。2024年には製品化に向けた開発段階へ移行したことを発表しています。
同社は、若年層を中心にフィルムカメラの人気が再燃していることを背景に、専用部材の調達や技術継承、フィルムや現像所などの状況を確認したうえで、現在の時代に合ったフィルムカメラを提供できると判断したと説明しています。
フィルムカメラと一眼レフは異なるカテゴリーですが、PENTAXが「撮る行為」そのものに価値を見いだしている点では共通しています。
スマートフォンが手軽に高画質な写真を撮れる時代だからこそ、専用カメラには画質や性能だけではない「使いたくなる理由」が求められます。
PENTAXは、そこに撮影プロセスの楽しさを見いだしていると考えられます。
8. 新型一眼レフで注目したいポイント
現時点では、新型一眼レフの具体的な仕様は明らかになっていません。
リコーイメージング株式会社は「全く新たなコンセプト」と説明していますが、発売時期や価格、センサー、AF、ファインダーなどの詳細は発表していません。
今後注目したいのは、次の3点です。
1つ目は、光学ファインダーをどう生かすのか。
ミラーレスでは電子ビューファインダーが進化するなか、PENTAXが光学ファインダーにどのような価値を持たせるのかは大きなポイントです。
2つ目は、Kマウントのレンズ資産をどう活用するのか。
既存レンズとの互換性だけでなく、新しいボディとの組み合わせによって、どのような撮影体験を提供するのかが焦点になります。
3つ目は、一眼レフを選ぶ理由をどう提示するのか。
ミラーレスより高性能であることを競うのではなく、異なる価値を示せるか。ここがPENTAXの新型一眼レフを評価するうえで重要になりそうです。
9. 家電ライターのひとこと
今回のPENTAXの発表は、一眼レフ市場が再び主流になることを示すものではありません。CIPAの2025年統計でも、レンズ交換式カメラの約9割をミラーレスが占め、一眼レフの出荷台数は減少しています。
その市場でPENTAXが一眼レフを続けるのは、最大手と同じ土俵で競うより、長年培ってきたブランドの個性を生かすほうが戦略上の意味を持つからだと考えられます。
スマートフォンで手軽に写真を撮れる現在、専用カメラには「きれいに撮れる」以外の魅力も求められます。PENTAXが重視する「撮る行為そのものを楽しむ」という考え方は、そうした市場環境とも相性があります。
現行Kシリーズの終了は、PENTAXが一眼レフを手放すための動きではありません。Kマウントのレンズ資産を引き継ぎながら、新しい一眼レフを開発することで、ブランドとしての立ち位置を改めて明確にする機会になりそうです。
新型の詳細はまだ分かりませんが、注目したいのは他社のミラーレスとスペックを比べることだけではありません。ミラーレスが主流の時代に、一眼レフを使うことで何が楽しくなるのか。PENTAXがその答えをどこまで製品に落とし込めるかが、今後の焦点になりそうです。
参考資料
- 「PENTAX」
- リコーイメージング株式会社
- リコーイメージング株式会社「PENTAXデジタル一眼レフカメラは新たなステージを目指します」
- リコーイメージング株式会社「PENTAX HISTORY」
- リコーイメージング株式会社「PENTAX HISTORY|COURSE OF HISTORY」
- リコーイメージング株式会社「PENTAX『フィルムカメラプロジェクト』製品化に向けた開発移行のお知らせ」
- 一般社団法人カメラ映像機器工業会「2026年デジタルカメラ出荷見通し」
- 一般社団法人カメラ映像機器工業会「デジタルカメラ統計」
- キヤノン株式会社「『EOS Rシステム』初のフラッグシップ機“EOS R1”を開発」
- キヤノン株式会社「キヤノンが22年連続でレンズ交換式デジタルカメラの世界シェアNo.1を達成」
- 株式会社ニコン「NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1を発売」
大蔵 大輔
