2026年(令和8年)4月1日より、離婚をした際の「年金分割」の請求期限が、これまでの原則2年から「原則5年」へと大きく延長される法改正が施行されました。年金制度は仕組みが複雑ですが、人生の大きな転機において最新のルールを知っているかどうかが、将来の受け取り額に数百万円単位の差をもたらすことも珍しくありません。
とくに心に留めておきたいのが、離婚をしたときの年金の手続きです。FP(ファイナンシャルプランナー)として日々家計相談をお受けする中で、離婚後の生活設計に漠然とした不安を抱える方は少なくありません。当面の生活費や住まいの確保に気を取られ、将来の年金については制度を知らないまま決断してしまい、後になって「もっと早く知っていれば」と悔やまれるケースを数多く見てきました。
「離婚をしたら、将来もらえる年金額が変わる可能性がある」。この事実を知らないまま年月が過ぎてしまい、離婚後の新生活に向けて目の前のことで手一杯になり、将来の年金手続きまで気が回らないのはごく自然なことです。
本記事では、2026年4月の法改正という時事ニュースを交えながら、知っておくべき年金分割の仕組みと、年金事務所での具体的な手続きについて分かりやすく解説します。
1. 【離婚件数】月1万5000組以上が経験。日本の離婚の現状とデータ
まずは、私たちの身近な統計データから日本の離婚の現状を見ていきましょう。
厚生労働省が2026年9月8日に発表した「人口動態統計月報(概数)(令和8(2026)年4月分)」によると、4月単月の離婚件数は1万5224組でした。1月から4月までの累計を見ると6万507組となっており、年換算の離婚率(人口千人に対する割合)は1.55となっています。
月ごとの推移データをひも解くと、離婚は年間を通じて一定数起きていますが、とくに3月は1万8610組と突出して多くなっています。これは、子どもの進学や進級といったライフステージの区切りに合わせて、新しい生活をスタートさせる世帯が多いことが背景にあると考えられます。
日本の年間の離婚件数はおよそ17.9万組にものぼります。これらの数字から分かるのは、離婚は決してごく一部の特別な出来事ではなく、誰の人生にも起こりうる可能性があるということです。だからこそ、離婚後の生活を穏やかに守るための金融知識を、あらかじめ身につけておくことが重要になります。
1.1 「未成年の子どもがいる離婚」6割は母親が親権者、ひとり親家庭の「老後リスク」とは
親権を行う子(親が離婚した未成年の子)親権の種類2/3
出所:厚生労働省「人口動態統計月報(概数)(令和8(2026)年4月分)」離婚件数及び親権の種類別にみた親権を行う子(親が離婚した未成年の子)の数 をもとにLIMO編集部作成
離婚を考えるうえで、多くの方が最も悩み、そして直面するのが子どもの親権です。
同じく4月分の人口動態統計によると、未成年の子どもがいる離婚は7294組で、全体の約48パーセントを占めています。その親権者の内訳を見てみると、以下のようになっています。
- 母親が親権を持つ:67.3パーセント
- 父母双方が親権を持つ(子どもが複数おり分ける場合など):24.7パーセント
- 父親が親権を持つ:7.8パーセント
- 申立て中(未定):0.1パーセント
このデータから、未成年の子どもの約3人に2人は母親が引き取って育てていることが分かります。
ここで直面しやすいのが、ひとり親家庭の経済的な課題、とりわけ「老後の年金リスク」です。結婚期間中、出産や育児、または家族の介護のために会社を退職したり、パートタイムなど扶養(配偶者の経済的援助を受ける範囲)内で働いたりする選択をする方は多くいます。そうした場合、厚生年金(会社員や公務員が加入する年金)の加入期間が短くなったり、保険料の計算基礎となる報酬額が低くなったりするため、将来受け取れる年金額が少なくなってしまいます。
これは女性に限った話ではなく、育児をメインで担った専業主夫や、配偶者との収入差が大きかった方全員に当てはまるリスクです。離婚後の当面の生活費や教育費に目が行きがちですが、実は「自分の老後資金」が非常に脆弱になってしまう恐れがあるのです。