3. 年収300万円未満と1200万円以上で金融資産は約9倍差!「貯蓄の二極化」が進む実態

ここまでの収入事情を踏まえ、実際の日本の家計はどれくらい貯蓄できているのでしょうか。最新のデータから、単身世帯および2人以上世帯の「種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」を見てみましょう。

全体の平均保有額は、以下の通りです。

  • 単身世帯:919万円
  • 2人以上世帯:1940万円

しかし、このデータは「金融資産を保有していない世帯(貯蓄ゼロの世帯)」も含んで計算されているため、一部の高額資産保有者が平均値を大きく引き上げているのが実情です。実際には貯蓄が全くない世帯も一定数存在しており、「ある世帯」と「ない世帯」の二極化が進んでいます。

この実態は、年収別のデータを見るとさらに鮮明になります。単身世帯の場合、年収300万円未満の世帯の金融資産保有額は平均677万円ですが、年収1200万円以上になると平均6122万円になります。このように、単身世帯では年収300万円未満の平均金融資産保有額677万円に対し、年収1200万円以上では6122万円となっており、その差は約9倍にのぼります。収入格差だけでなく、資産運用の有無や継続年数の違いが、金融資産の大きな差につながっていると考えられます。

単身世帯「種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」3/4

単身世帯「種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」

2人以上世帯でも同様に、年収300万円未満は平均858万円、1200万円以上は平均5635万円と大きな差があります。

2人以上世帯「種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)4/4

2人以上世帯「種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」

3.1 金融資産の内訳にみる格差の正体

さらに注目すべきは、「保有している金融資産の内訳」が年収によって大きく異なる点です。

例えば単身世帯のうち、年収300万円未満の世帯は保有資産677万円のうち約半分の305万円を「預貯金」で持っています。一方、年収1200万円以上の世帯は、保有資産6122万円のうち、株式や投資信託・債券などの「運用性のある資産」が72.9%(約4465万円)と圧倒的な割合を占めています。

つまり、資産が多い世帯ほど、銀行に預けるだけでなく「お金にお金を稼いでもらう仕組み」を積極的に活用しており、これがさらなる貯蓄格差を生む要因の一つとなっているのです。

4. 年収にかかわらず「貯蓄ゼロ」を抜け出す3つのポイント

今の収入水準にかかわらず、将来に向けた安心感を手に入れるためには、日々の生活のなかでお金が自然と貯まる仕組みを作ることが何より大切です。今日から始められる3つの実践ステップをご紹介します。

4.1 先取り貯蓄を自動化する

お給料が入って、余った分を貯金しようと思ってもなかなか上手くいきません。まずは収入の10%を目安に、給与が振り込まれた瞬間に別の口座へ自動で移し替える「自動積立定期預金」などを設定しましょう。最初から「なかったもの」として残りの金額で生活する習慣が、最も確実な貯蓄法です。

4.2 「使途不明金」と「固定費」を見直す

毎日何気なく買っているコンビニのコーヒーや、利用していないサブスクリプション(月額課金サービス)の料金など、小さな支出の積み重ねが家計を圧迫します。通信費を格安スマホプランへ変更する、不要な保険を解約するなど、一度手続きすれば毎月確実に支出が減る「固定費」の見直しから手をつけてみましょう。

4.3 少額からの非課税制度(NISA等)を活用する

手元に生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)が貯まってきたら、お金に働いてもらう仕組みづくりも検討しましょう。現在は新NISA制度などを利用すれば、月々数千円といった少額から非課税で積立投資を始めることができます。時間を味方につけることで、毎月のわずかな余裕資金が将来の大きな支えに育ちます。

5. まとめにかえて

今回は、最新の毎月勤労統計調査や貯蓄データをもとに、産業間や働き方による給与の差と、そこから見えてくる家計の実態について解説しました。

全体の平均賃金が上がり、実質賃金もプラスの傾向にあるものの、その実感や実際の貯蓄額には大きな個人差や二極化が生じています。周りの数字や平均値に振り回されて不安になる必要はありません。まずはご自身の現状の収入と支出を優しく受け止め、無理のない範囲で「先取り貯蓄」や「固定費の見直し」といった小さな一歩を踏み出すことが、豊かな未来を切り拓く一番の近道となります。

参考資料

村岸 理美