2026年9月8日、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査(2026年7月分)」によると、日本の労働者の平均的な給与(現金給与総額)は43万6401円となりました。実質賃金が数か月にわたりプラスで推移するなど、日本全体で賃上げの明るいニュースが聞かれる一方で、「自分の給与はニュースで見るほど上がっていない」と戸惑いを感じる方も少なくないはずです。

筆者はファイナンシャルプランナーとして、これまで家計相談に数多く携わってきましたが「世間の平均値と、わが家のリアルな家計状況には大きなズレがある」というお悩みを耳にすることがあります。実は、給与やボーナスといった収入の増え方には、勤めている業界や働き方によって極めて大きな個人差が存在しています。

この記事では、最新の調査データをもとに産業別や働き方による給与の違いを紐解きながら、現在の年収にかかわらず今日から始められる具体的な貯蓄の仕組みづくりについて、専門家の視点からわかりやすく解説します。

1. 業界で月給差は51万円超!産業別データでみる給与格差の実態

全体の平均給与が43万6401円といっても、その内訳を産業分野別に見ると大きな開きがあることがわかります。

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第1表 月間現金給与額(7月速報)

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果速報」

同調査による主な産業別の現金給与総額(月額)は以下の通りです。

  • 建設業:66万8639円
  • 電気・ガス業:64万4014円
  • 製造業:62万9587円
  • 学術研究等:60万7597円
  • 鉱業・採石業等:60万3323円
  • 卸売・小売業:42万1767円
  • 医療・福祉:36万2767円
  • 生活関連サービス等:27万6960円
  • 飲食サービス業等:15万8523円

社会の基盤となるインフラを支える産業や、大規模な生産に関わる業界が上位に位置する一方で、日々の暮らしに身近なサービス分野では全体平均を下回る数字となっています。上位の建設業と飲食サービス業等との間には、月額で51万円あまりの差が生じています。

ただし、これは業界の優劣を示すものではありません。深夜業や時間外労働の多さ、危険を伴う業務への手当、また短時間勤務のスタッフが多い業界かどうかなど、各産業特有の働き方や人員構造が平均値に色濃く反映されている点に注意が必要です。ご自身の給与を考える際は、世間の全体平均と比べるのではなく、同じ業界や近い働き方の中での水準を知ることが、健全な家計管理の第一歩となります。

1.1 一般労働者57.8万円・パート12.3万円 「ボーナス格差」が生む収入の差

給与の差は、産業間だけでなく「どのような雇用形態で働いているか」によっても顕著に表れます。全体を一般労働者(フルタイムなど)とパートタイム労働者に分けて月間の総収入を比較すると、以下のようになります。

  • 現金給与総額:一般労働者 57万8123円 / パートタイム労働者 12万3493円
  • きまって支給する給与(基本給など):一般労働者 38万5178円 / パートタイム労働者 11万7009円
  • 特別に支払われた給与(賞与など):一般労働者 19万2945円 / パートタイム労働者 6484円

ここで注目したいのは、パートタイム労働者の時間当たり所定内給与(時給ベースの賃金)は1460円と前年同月比で5.7%も上昇している点です。時給自体は着実に上がっているものの、月額の総収入で大きな差がつく背景には、労働時間の違いに加えて「特別に支払われた給与(夏のボーナスなど)」の有無が大きく影響しています。

賞与などのまとまった収入は、家電の買い替えや旅行、そして将来への貯蓄に回しやすい資金です。こうした収入構造の違いがあるからこそ、パートタイムや非正規で働く場合は、毎月の限られた収入のなかから少しずつでも「貯蓄に回す仕組み」を意識して作っていく工夫が求められます。

2. 実質賃金は7カ月連続プラス!物価高のなかで家計は改善しているのか

額面上の給与(名目賃金)が増えても、スーパーに並ぶ食料品や日用品の値段がそれ以上に上がってしまえば、私たちの生活は苦しくなります。そこで、物価の上昇分を差し引いて「私たちが実際に物を買う力(購買力)」を示した指標が「実質賃金」です。2026年7月の調査結果では、以下の明るい兆しが見えています。

毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果速報2/4

毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果速報

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年7月分結果速報」

  • 名目の現金給与総額:前年同月比4.7%増
  • 消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合):前年同月比2.2%上昇
    同指数で実質化した実質賃金:前年同月比2.4%増(7か月連続でプラス)

給与の伸びが物価の上昇ペースを上回っており、実質賃金は7か月連続でプラスとなりました。これは、マクロな視点で見れば家計の購買力が確かに回復してきていることを意味します。しかし、1章や2章で触れた通り、この恩恵がすべての業界や働き方に均等に行き渡っているわけではありません。物価と賃金のバランスが改善しつつある今だからこそ、浮いた資金を消費だけで終わらせず、しっかりと家計の土台づくりに活かす視点が必要です。