3. 【元銀行員の視点】100歳までではなく、まず平均余命までで見積もる
ここまでは100歳までという前提で計算してきましたが、35年分という金額は誰にとっても現実的な目標になるとは限りません。
厚生労働省の令和7年簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。65歳に足すと、男性は約85歳、女性は約90歳が目安になります。
早見表で見ると、夫婦の85歳までが約7120万円、90歳までが約8900万円です。100歳までの約1億2470万円と比べると、見積もりの前提だけで3560万円から5340万円ほど変わります。
平均余命は年齢が上がるほど残りが延びていく数字でもあります。80歳の男性はさらに9.10年、80歳の女性はさらに11.95年が見込まれています。
100歳までの金額はいちばん厚い前提として置いておき、実際の目標は平均余命の年数を足したあたりに置く。そのうえで長生きした場合の上振れをどう手当てするかを別に考えると、数字に振り回されにくくなります。
4. 不足額は個人ではなく世帯単位で見る
早見表でいちばん差が出たのは、夫婦のうち何人が厚生年金を受け取るかという点でした。
夫が厚生年金・妻が国民年金という組み合わせでは約3660万円が不足する一方、ふたりとも厚生年金であれば計算上は賄えます。同じ夫婦世帯でも、内訳によって結論が変わります。
そのため、まず世帯として年金がいくらになるかを合算して出すことが出発点になります。ねんきん定期便やねんきんネットで、ふたり分の見込額を並べて確認しておくとよいでしょう。
そのうえで不足額が見えたら、働く期間を延ばす、繰下げ受給を検討する、iDeCoやNISAのつみたて投資枠で準備するといった手段を組み合わせます。
ただし、繰下げ受給は受け取り開始を遅らせるあいだの生活費を別に用意する必要があります。運用にも値下がりの可能性があり、どの手段にも引き換えになるものがあります。
5. 必要額から年金を引いた差額が、準備する金額になる
家計調査年報2025年をもとに計算すると、65歳から100歳まで年金に頼らず過ごす場合に必要な金額は、夫婦で約1億2470万円、おひとりさまで約6780万円でした。
一方、令和6年度の平均年金月額で35年分を計算すると、厚生年金で約6310万円、国民年金で約2490万円が準備できます。
必要額の全額を貯めるのではなく、必要額から年金を引いた差額を準備すると考えれば、目標はぐっと現実的になります。
まずは世帯として年金がいくらになるかを確かめるところから始めてみてください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年簡易生命表の概況」
和田 直子