2. 2028年4月から遺族厚生年金はどう変わる?
2028年4月から、遺族厚生年金は大幅な制度改正が予定されています。改正法は2025年6月13日にすでに成立しています。
現在、5年の有期給付となるのは、受給対象となる子どもがいない30歳未満の妻です。子どものいる妻でも、30歳になる前に遺族基礎年金を受けられなくなったときは、そこから5年で終了します。
改正後、女性で5年の有期給付の対象となるのは「18歳年度末までの子どもがおらず、2028年度末時点で40歳未満の人」です。
女性については、そこから5年ごとに対象年齢が5歳ずつ引き上げられ、20年かけて60歳未満まで拡大される予定です。
一方、男性は施行日から「55歳以上」という年齢要件がなくなり、18歳年度末までの子どもがおらず60歳未満であれば遺族厚生年金を受給できるようになります。ただし女性と同じく、給付されるのは原則5年です。
現在、夫が遺族厚生年金を受け取るには、妻が亡くなったときに55歳以上である必要があります。この年齢要件は、子どもの有無にかかわらず課されるものです。
支給が始まるのも原則60歳からで、60歳になる前に受け取れるのは遺族基礎年金をあわせて受けられる場合に限られます。改正後は年齢の壁がなくなるぶん、男性が受給できる場面は広がることになります。
加えて、5年間の有期給付には「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の約1.3倍の金額が支給される予定です。
5年が経過した後も、障害年金の受給権者である人や、収入が十分でない人は、増額された遺族厚生年金を引き続き受け取れます(継続給付)。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下であれば全額が支給され、収入が増えるにつれて年金額が調整される仕組みです。
なお、改正の影響を受けるのは「子どもがいない夫や妻」です。以下に該当する人は、今回の改正の影響はありません。
- すでに遺族厚生年金を受給している人
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
- 18歳年度末までの子どもを養育する間にある人の給付内容
- 2028年度に40歳以上になる女性
中高齢寡婦加算については、制度改正後2053年度まで25年かけて段階的に縮小されます。新たに受給権が発生した人の加算額を毎年26分の1ずつ減らしていく仕組みです。
基準になるのは、夫が亡くなった日です。2028年4月1日以前に夫が亡くなっていれば、加算が始まるのが40歳以降であっても、これまでどおりの金額が適用されます。
一方、2028年4月2日以降に亡くなった場合は、その年度に応じて縮小された中高齢寡婦加算を受け取ることになります。
5年の有期給付に上乗せされる有期給付加算とは、対象となる人も適用される時期も異なります。自分がどちらに当てはまるのかは、年齢と子どもの有無によって変わるため、個別に確かめておきたいところです。
次章では、35歳の妻を例に、実際にいくら年金を受け取れるのか試算します。
3. 【試算】35歳妻は5年でいくら年金を受け取れる?
2028年度に35歳の夫が厚生年金の被保険者中に亡くなったケースを例に、同年齢の妻が受け取る遺族厚生年金を試算してみましょう。有期給付の対象年齢は5年ごとに引き上げられるため、ここでは施行直後の年度に限定します。
試算条件は以下のとおりです。
- 遺族年金の対象となる子どもはいない
- 夫の平均標準報酬額:35万円
- 夫は厚生年金の被保険者中に死亡
- 被保険者期間を300月とみなして計算
- 2003年4月以降の加入期間のみと仮定
- 妻は5年経過後の継続給付の対象外
まずは、現行制度における遺族厚生年金の金額を確かめてみましょう。
- 35万円×5.481/1000×300月×4分の3
=年額約43万1600円
現行制度であれば、夫の死亡時に30歳以上だった妻は、この金額を終身で受け取れます。改正で変わるのは金額だけでなく、受け取れる期間そのものだという点を押さえておきたいところです。
一方、改正後の5年の有期給付は、現在の遺族厚生年金の約1.3倍となる予定です。「約1.3倍」は厚生労働省が示している目安であり、実際の加算額は法令で定められる計算式によります。ここでは、単純に上記の金額を1.3倍として計算してみましょう。
- 年額約43万1600円×1.3
=年額約56万1100円
月額では約4万6800円となり、5年間で受け取れる金額は約280万5500円となります。
今回の条件では、夫の死亡時に妻が40歳未満であり子どももいないため、中高齢寡婦加算の対象にはなりません。
中高齢寡婦加算の対象となるのは、夫の死亡時に40歳以上65歳未満で子どもがいない妻などに限られます。自分が対象になるかどうかは、夫が亡くなった時点の年齢と子どもの有無で決まる点に注意しましょう。
次章では、遺族厚生年金で確かめたいポイントを、元公務員・FPである筆者の見解を交えて紹介します。
4. 【元公務員・FPの見解】「何年もらえるか」を要チェック
公的制度は「いくら受け取れるか」だけでなく、年齢や家族構成、受給期間を確認することが大切です。
とくに気をつけたいのが「4分の3」の扱い方です。前述のとおり、遺族厚生年金の受給額は「報酬比例部分の4分の3」であり、亡くなった人の年金額の4分の3ではありません。
夫婦それぞれ、ねんきん定期便やねんきんネットで現在の年金加入記録を確かめ、報酬比例部分の金額がいくらなのかチェックしておきましょう。
前述の試算では、5年間で受け取れる金額は約280万5500円、月約4万6800円となりました。
このケースでは35歳から5年間の給付なので、40歳で給付が終わります。自分の老齢年金が始まる65歳までの25年間、同額の収入が必要だと仮定して、月約4万6800円をすべて貯蓄で補うなら、合計で約1400万円が必要です。
もちろん、1400万円をすぐに用意しなければならないというわけではありません。収入や預貯金、生命保険なども考慮して、実際にいくら足りないのかを確かめる必要があります。
障害の状態や収入の状況によっては、遺族厚生年金が6年目以降も継続給付される可能性もあるでしょう。
遺族厚生年金が5年間となる世帯では、給付終了後の家計収支まで試算したうえで、必要な保障額を考えてみるとよいでしょう。
5. まとめ
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金に含まれる報酬比例部分の4分の3が支給されます。所定の要件を満たす妻には、2026年度は年額63万5500円の中高齢寡婦加算も上乗せされます。
2028年4月の見直し後、一部の人は5年の有期給付となりますが、すでに受給している人や2028年度に40歳以上となる女性などは現行制度が継続して適用されます。
中高齢寡婦加算も2053年度まで25年かけて段階的に縮小されますが、2028年4月1日以前に夫が亡くなった場合は縮小の対象になりません。
遺族厚生年金の受給期間は自身の年齢や子どもの有無によって変わるため、金額と期間の両方を確認しておきましょう。判断に迷う場合は、年金事務所や街角の年金相談センターで自分のケースを確かめてみてください。
参考資料
石上 ユウキ